アトピー性皮膚炎と腸内環境:最新研究が明かす意外な関連性
【アトピー性皮膚炎と腸内細菌の意外な関係】
最近の研究で、アトピー性皮膚炎と腸内細菌の間に深い関係があることがわかってきました。
アトピー性皮膚炎は、乾燥肌やかゆみを伴う慢性的な炎症性皮膚疾患です。日本では大人の10%、子どもの20%が症状に悩まされています。従来は遺伝的要因や環境要因が主な原因と考えられてきましたが、最新の研究では腸内細菌の役割が注目されています。
腸内には数兆個もの細菌が住んでおり、これらは私たちの健康に大きな影響を与えています。特に、腸内細菌は免疫系の調節や皮膚バリア機能の強化に関与していることがわかってきました。
【腸と皮膚をつなぐ「腸-皮膚軸」の仕組み】
腸と皮膚の間には「腸-皮膚軸」と呼ばれる密接な関係があります。この仕組みを通じて、腸内細菌は皮膚の健康に影響を与えています。
具体的には、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸という物質が重要な役割を果たしています。短鎖脂肪酸は腸の壁を丈夫にし、有害物質が体内に入るのを防ぐ働きがあります。さらに、免疫系のバランスを整えたり、皮膚の炎症を抑えたりする効果もあるのです。
アトピー性皮膚炎の患者さんでは、この短鎖脂肪酸を作る善玉菌が減少していることがわかっています。代わりに、悪玉菌の一種である大腸菌やクロストリジウム・ディフィシルが増えているのです。
腸内細菌のバランスが崩れることで、アトピー性皮膚炎の症状が悪化する可能性があります。そのため、腸内環境を整えることが新たな治療アプローチとして期待されています。
【プロバイオティクスによるアトピー性皮膚炎の新しい治療法】
このような研究結果を受けて、プロバイオティクスを用いたアトピー性皮膚炎の新しい治療法が注目されています。プロバイオティクスとは、私たちの健康に良い影響を与える生きた細菌のことです。
例えば、ラクトバチルス・パラカゼイという細菌を摂取すると、アトピー性皮膚炎の症状が改善されたという研究結果があります。この細菌は、皮膚の炎症を抑える働きがある免疫細胞を増やし、腸内細菌のバランスを整える効果があるのです。
また、ビフィドバクテリウムという細菌も注目されています。妊婦さんや赤ちゃんにこの細菌を与えることで、アトピー性皮膚炎の発症リスクが低下したという報告もあります。
ただし、プロバイオティクスの効果はまだ研究段階であり、個人差も大きいのが現状です。どのような細菌をどれくらい摂取すれば良いのか、さらなる研究が必要とされています。
アトピー性皮膚炎の治療には、保湿剤やステロイド外用薬など従来の方法も重要です。プロバイオティクスはあくまでも補助的な治療法として考えるべきでしょう。
最後に、腸内環境を整えるためには、バランスの良い食事や適度な運動、ストレス管理なども大切です。腸内細菌に良い影響を与える食物繊維を多く含む野菜や果物、発酵食品なども積極的に取り入れましょう。
アトピー性皮膚炎でお悩みの方は、まずは皮膚科専門医に相談することをおすすめします。腸内環境の改善を含めた総合的なアプローチで、症状の改善を目指しましょう。
参考文献:
1. Wrze´sniewska, M.; Wołoszczak, J.; ´Swirkosz, G.; Szyller, H.; Gomułka, K. The Role of the Microbiota in the Pathogenesis and Treatment of Atopic Dermatitis—A Literature Review. Int. J. Mol. Sci. 2024, 25, 6539. https://doi.org/10.3390/ijms25126539