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ソフトバンク『ドラえもん』CMでしずか役の15歳・小宮山莉渚。初映画『ヤクザと家族』で綾野剛の娘に

斉藤貴志芸能ライター/編集者
映画に初出演する小宮山莉渚(撮影/松下茜)

ソフトバンク5Gの『ドラえもん』実写化CMシリーズで、しずか役として注目された小宮山莉渚(りな)。1月29日より公開の映画『ヤクザと家族 The Family』に出演している。15歳でのスクリーンデビュー。綾野剛が演じるヤクザが主人公のヒューマンストーリーの中で、彼の“家族”となる重要な役柄だ。初の演技への取り組みと中学3年生としての素顔に迫る。

中学でお昼の校内放送をしています

――ソフトバンクのCMでしずかを演じていますが、オンエアされてから反響は大きいですか?

小宮山 結構ありました。先生からは「ブルース・ウィリスさんと会ったの?」と聞かれたりして、話題が広がります。友だちには「しずかちゃん」と呼ばれたり、『STAND BY ME ドラえもん2』の映画が公開になったときに「結婚おめでとう」と言われました(笑)。

――早稲田アカデミーのウェブCMにも出演していますが、成績は優秀ですか?

小宮山 普通です。平均からプラスでもマイナスでもない、中の……下くらい(笑)。

――その中で得意科目は?

小宮山 社会と家庭科です。社会は自分が生まれる前のことを知るのが面白くて。お父さんが歴史好きな影響で、「昔の人はどんな生き方をしていたか?」みたいな番組をよく観ていました。家庭科は、おばあちゃんの影響でお菓子作りも好きだし、編み物や縫い物も得意です。

――部活や委員会は何かやっていますか?

小宮山 放送委員会の委員長をやりました。お昼の校内放送で自分の好きな曲やリクエストの多い曲をかけたり、クイズやお話をしています。

――好評なんですか?

小宮山 好評なときと好評でないときがあります(笑)。他の子がクイズを出して私が答えていたとき、「helper dogを日本語にすると何?」という問題が出たんですね。「助ける犬?」とか言っていたら“介助犬”が正解で、「3年生なのにそんなのもわからないの?」と言われて、2年生のときに担任だった英語の先生に睨まれました(笑)。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

人前に出たがってダンスをやったりしました

――人前で何かやるのは好きだったんですか?

小宮山 はい。幼稚園の頃からお遊戯会で前に出たがったり、小6のときとか学芸会で友だちとダンスをやったりしました。TWICEさんの曲や昔流行った「恋ダンス」を踊りました。

――性格的にも明るいみたいですね。

小宮山 明るめだと思います。オン・オフが激しいんですけど、オンのときはすごくはしゃいで大きな声で笑ったりしています。

――学校で先生に「うるさい」とか怒られることも?

小宮山 言われるときもあります。小学生の頃は廊下を走ったりして男子と怒られてましたけど、4年生になって女の子の友だちが増えて、おしとやかになってきました(笑)。

――あと、囲碁が特技だそうですね。

小宮山 昔、山口に住んでいた頃、公民館で囲碁教室をやっていて、無料だったので通い始めました。ルールが簡単でなくて、ずっと考えてないといけないので頭が疲れますけど(笑)、楽しかったので宮城に引っ越してからも続けています。

――級とか持っているんですか?

小宮山 30級から始まって、大会で賞を獲るごとに1級ずつ上がって、今は12級です。事務所に入ってから、教室にあまり通えなくなっちゃったんですけど、中学生で2級まで行った子もいるので、機会があったら、また本気でやりたいと思っています。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

身長が1年で10cmずつ伸びて一番後ろに

――芸能界には昔から興味があったんですか?

小宮山 さっき言ったように人前に出るのが好きで、キラキラした世界に憧れていましたけど、なかなか勇気が出なくて。でも、中1の夏に、お姉ちゃんから雑誌モデルのオーディションを「受けてみたら?」と言われたんです。そのオーディションには受からなかったんですけど、今の事務所に声を掛けてもらいました。

――映画やドラマを観て、自分も女優になりたいと思ったわけではなくて?

小宮山 芸能界に入るまでは、あまり映画とかを観ていませんでした。小さい頃から好きだった『ドラえもん』とか『クレヨンしんちゃん』とかアニメ系を観てました(笑)。

――その頃から身長も高かったんですか?

小宮山 小5から急激に伸びました。毎年10cmくらいずつ伸びて、列で真ん中くらいだったのが、どんどん後ろに下がって、今は168cmで最後尾です。

――事務所に入ってから、演技レッスンを受けるように?

小宮山 毎月東京に来て、レッスンを受けています。いろいろな子の演技を間近で見たり、「台本はこう読めばいいよ」とか教えてもらって。雑誌のオーディションを受けたときは軽い気持ちでしたけど、この世界でいろいろな経験をすると本当に楽しくて、本気でやりたいと思うようになりました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

朝ドラで見ていたお2人と家族役で興奮しました

日本アカデミー賞6冠の『新聞記者』の藤井道人監督がメガホンを取った『ヤクザと家族 The Family』。19歳でヤクザとして生きる道を選んだ山本賢治(綾野剛)の人生を、三つの時代に渡り描いていく。小宮山が演じた工藤彩は、山本の恋人だった工藤由香(尾野真千子)の娘。組の若頭の罪をかぶり14年の刑期を終えて出所した山本は、由香と再会し、彩が自分の娘であることを知る。彩のほうは山本が父と知らぬまま、3人での暮らしが始まるが……。

――『ヤクザと家族』の工藤彩役はオーディションで決まったんですか?

小宮山 はい。車で山本さんと話すシーンと最後のシーンをやりました。緊張しすぎて、台詞で「お父さん」というところを「パパ」と言っちゃって、「ダメだ」と思ったんですけど、受かっていたからビックリしました。

――初めての映画の現場はどんな雰囲気でした?

小宮山 俳優部さんとか照明部さんとかに分かれていることに驚いて、映画は他の仕事と違うように感じました。あと、監督さんの“藤井組”ということで、今回は家族の映画ですけど、現場でも皆さんが家族のようでした。私は最初は緊張していて、どうしていればいいのかわからなかったんですけど、大人の方たちがやさしく接してくれて、楽しく撮影することができました。

――最初に撮ったのはどのシーンだったんですか?

小宮山 車に剛さんと真千子さんと乗って、お仕事や学校に行くシーンです。そのときもお2人が「どうやって芸能界に入ったの?」とか「何が好きなの?」とか、身近なことをいろいろ聴いてくださって、家族の雰囲気になれました。

――とはいえ、綾野さんも尾野さんもテレビで観ていた存在だったわけですよね?

小宮山 そうなんです。朝ドラの『カーネーション』で見ていたお2人が自分の家族なんて、すごく興奮しました。いざお会いしたら、すごく緊張もしましたけど、それ以上にご一緒して演じるのが楽しくて。勉強にもなりました。

――莉渚さんが物怖じしないというか、度胸もあったのでは?

小宮山 本当は心臓バクバクなんですけど、顔に出ないタイプです。

 (C)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
(C)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

陰はあるけど前向きなのが良いところだなと

――尾野さんと親子感を出すために、していたことはありますか?

小宮山 撮影の合間に、控室の畳部屋で2人で寝転がって、差し入れでいただいたメロンパンを食べたり、TikTokで料理の動画を観て「これ、おいしそう」とか言ったり、本当のお母さんと娘みたいな会話をしていました。

――彩は車で山本と2人になったとき、「ママのどこが好きになったの?」などといろいろ聞いていました。そんな彩をどんな子だと捉えていました?

小宮山 母子家庭で金銭面とかいろいろなことを我慢して、心を閉ざしていたり陰はあるんですけど、山本さんと初めて会っても居心地の悪さを感じず、明るく話せる前向きさは彩の良いところだなと思いました。山本さんを新しい家族として、抵抗なく迎え入れた心の強さもすごいですよね。

――お父さんがいないで育ったことも大きかったのでしょうね。

小宮山 山本さんに「前のお父さんに会ったことあるの?」と聞く台詞があって、心のどこかでは自分のお父さんがどういう人だったのか、ずっと気にしていたのかなと思いました。

(C)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
(C)2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

自然体で目を大事にして演じました

――藤井監督から演出的に指示されたことはありました?

小宮山 初めての演技だったので、いろいろ考えなきゃいけないと思っていたんです。でも、役作りって、どうしたらいいのかわからなくて。そしたら、監督さんに「難しく考えないで自然体でいてください」と言われました。それで自分らしさを忘れずに、彩を演じようと思いました。あと、監督さんから言われたのは、「目を大事にしてほしい」ということです。

――なかなか難しそうな課題ですね。

小宮山 (山本に憧れる)翼くんを見つめるシーンでの見つめ方が、特に難しかったです。「遠くを見るように」とか、ひとつひとつ詳しく教えてくださいました。最初は戸惑ったんですけど、演技指導をしていただいて理解できました。

――確かに、彩の表情から伝わるものがありました。

小宮山 彩は出番は少ないんですけど重要な役で、台詞が他の方と比べたら少ない分、表情の演技でどう伝えるかは、すごくハードルが高かったですね。

――一緒に暮らすようになった山本がヤクザだと学校で広まった場面は、彩がいたたまれない感じでした。

小宮山 撮影前は「怖さをどういうふうに表せばいいんだろう」と考えたんですけど、いざ現場に入ったら生徒役の方たちが私を怪しんで見ていて、重い空気ができていたので、演技はやりやすかったです。自然に怖くなって、私だったらあの場にいられなくて逃げちゃうと思うくらいで、彩は本当に心が強いと感じました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

暴力とのギャップで家族の大切さを感じます

――他に、1年くらい前の撮影で、今も特に覚えていることはありますか?

小宮山 オールアップのとき、剛さんが撮影がないのに来てくださって、花束を渡してもらったのは忘れられません。本当にあっという間の撮影だったと感じました。毎日が勉強で頭が追いつかないくらいでしたけど、剛さんと真千子さんのシーンをそっと見学させていただいたり、いろいろな方の演技を観られて、たくさん学ぶことができました。

――試写を観ると、どんなことを感じました?

小宮山 自分がこんなふうに映っていたんだと、ビックリしました(笑)。最後のシーンはちょっと大人っぽくしようと思ったんですけど、監督さんに言われた自分らしさが出ていたので良かったです。私が思ったような彩に見えて、安心しました。

――自分が出てないシーンはどうでした? 殺伐とした場面も多くて、あまり女子中学生向きではないかもしれませんが(笑)。

小宮山 オフショット写真を見ると、剛さんが血を浴びてニコッと笑っていたりして(笑)、素朴に「血ノリってどんな感じだろう?」と思いました。ヤクザの映画だから、「暴力のシーンはどういう練習をするんだろう? 本当に殴っているのかな?」とか、すごく興味を持ちました。

――女優さんらしい見方ですね。目を背けたくなる感じでもなかったですか?

小宮山 悲惨なところがあったからこそ、逆に家族の大切さを感じるギャップもあって、心が揺さぶられるような映画でした。

撮影/松下茜 衣装協力/ワンピース=MERCURYDUO ルミネエスト新宿店(03-5312-1550) 靴=CAMILLE BIS RANDA(06-6451-1248)
撮影/松下茜 衣装協力/ワンピース=MERCURYDUO ルミネエスト新宿店(03-5312-1550) 靴=CAMILLE BIS RANDA(06-6451-1248)

大人っぽく見られますけど中身は子どもです(笑)

――今は自分でも普段から、映画を観ているんですか?

小宮山 事務所に入って、いろいろ観るようになりました。去年すごく面白かったのは、配信で観た『小さな恋のうた』です。

――沖縄の高校生たちがバンドをやる物語ですね。

小宮山 佐野勇斗さんが好きで観たんですけど、バンドって面白いなと思いました。ギターがカッコ良くて、剛さんにも「ギターはいいよ」と言われたので、ステイホーム中にアコギを買って、ちょっと練習しました。そういうふうに映画から何かに興味を持てるのも、すごくいいですよね。あとは、アニメもスマホで観ています。

――流行りの『鬼滅の刃』とか?

小宮山 『鬼滅』とか『ハイキュー!!』とか『呪術廻戦』とか『Dr.STONE』とか『ヒロアカ(僕のヒーローアカデミア)』とか……。

――いっぱい出ましたが、全部『少年ジャンプ』系じゃないですか(笑)。

小宮山 そうなんです(笑)。中1、中2は少女マンガ系が好きだったんですけど、最近はずっとジャンプ系ばかり観ています。だから、ジャンプショップに行くと「ワーッ!!」という感じになります(笑)。私は見た目は「大人っぽい」と言われますけど、そういうふうに中身は子どもなんですよね。

――女優さんで誰かをいいなと思ったりは?

小宮山 清原果耶さんが好きです。彩を演じる前に、監督さんから「観ておいてください」と言われた映画がいくつかあって、そのひとつの『デイアンドナイト』で清原さんがすごく自然な演技をされていて。自分もこんなふうに演じられたらいいなと憧れます。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

受験でピリピリしても人へのやさしさは保てて

長身で整った顔立ちと相まって、中学生には見えない佇まいの小宮山だが、和んで話すとあどけなさものぞく。一方、ネタバレになるので記事に入れられなかった部分も含め、役への洞察力には初演技らしからぬ深さも感じた。宮城から上京しての取材日、宣伝担当が「取材する人がみんなニコニコになる」とも話していた。

――莉渚さんは今、受験生ですよね。早稲田アカデミーのCMのように「受験は恐ろしい」と感じていますか?

小宮山 本当に恐ろしいです。周りの空気が変わって、イヤでも勉強しないといけない感じになりました。ピリピリしてしまって、お父さんやお母さんに迷惑をかけることもありますけど、『ヤクザと家族』で家族を大事にしなきゃいけないと学んだので、やさしく接するように自分を保てた気がします。

――あのCMの中で言っていた、「勉強を始めないのを何かのせいにする」とか「参考書にマーカーを引いただけで満足する」というのは、実際にありますか?

小宮山 あります。私もテストで「ダメだった。でも、まあいっか」と思っていたタイプで、CMの女の子には共感しかないですね(笑)。「マーカーを引いただけで」というのもその通りで、私も教科書にいっぱいマーカーを引いて「よし!」と思って、後から見たら「わっ、汚い! 何でこれ引いたの?」となっちゃいます(笑)。

――「ライバルが同志になる」とか「家族の温かさがわかってくる」というところも、共感しました?

小宮山 そうですね。家族や友だちの大切さをすごく感じる1年でした。友だちとピリピリしちゃうときがあっても、「頑張ってね」と支え合うこともありました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

すごく笑う女の子の役をやってみたいです

――高校生になったら、やりたいことはありますか?

小宮山 もともと田舎に住んでいたので、上京したら友だちと原宿に行ったり、“ザJK”みたいなことをしたいです(笑)。原宿はオーディションの帰りに1~2回行ったことがあって、チーズドッグを食べたり、タピオカを飲んだりしました。制服を着て、友だちと回ってみたいですね。

――仕事ではどんなことをしたいですか?

小宮山 あと1回は中学生役をやりたいのと、すごく笑う女の子の役をやってみたいです(笑)。私が本当によく笑うので、明るい子をいっぱい演じて、自分をもっと明るく前向きにしたいんです。

――普段はどんなことで笑っているんですか?

小宮山 本当に身近なことで笑っています。2年生のときの野外活動で農家の方の家に泊まって、ごはんがおいしいからいっぱい食べてしまって、お風呂に入って体重を量ったら太っちゃっていたんですね。でも、その夜は友だちと2~3時間、ずっとアハハハと笑って、いつの間にか寝ていて。次の朝にごはんを食べて、また体重計に乗ったら、1キロ減っていたんですよ! 腹筋が痛くなるくらい笑っていたから痩せたんだと思って、すごくビックリしました(笑)。

――何で笑っていたかは覚えてますか?

小宮山 覚えていません(笑)。ツボに入っちゃったんですけど、本当に何気ないことだったと思います。

――長い目で将来的にどうなりたいかも考えていますか?

小宮山 『ヤクザと家族』に出て、そういうことも考えるようになりました。存在感のある女優さんになりたいです。周りの方々に支えられている感謝の気持ちは忘れずに、恩返しができるようになりたいと思っています。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

Profile

小宮山莉渚(こみやま・りな)

2005年7月14日生まれ、宮城県出身、168cm。

ソフトバンク『5Gってドラえもん?』、三井不動産レジデンシャル『三井に住んでいます。いい日の糸』篇CM、早稲田アカデミーWEB動画『知らなかった自分が、そこにいた。』篇などに出演。

『ヤクザと家族 The Family』

1月29日全国公開

監督・脚本:藤井道人 配給:スターサンズ/KADOKAWA

公式HP https://yakuzatokazoku.com/

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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