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トランプ大統領の行動に影響を与え続けるtwitter社のAIアルゴリズム

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
(写真:ロイター/アフロ)

KNNポール神田です。

□ トランプ米大統領は(2019年6月)30日午後、韓国と北朝鮮を隔てる軍事境界線上にある板門店を訪れ、出迎えた金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と握手した。米朝首脳会談は2018年6月のシンガポール、今年2月のハノイに続いて3回目となる。韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領もトランプ氏に同行し、正恩氏は文氏とも握手した。

出典:トランプ氏と金氏、板門店で握手 現職で北朝鮮入境は初

2019年6月30日、トランプ大統領と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が、軍事境界線上にある板門店(パンムンジョム)に訪れ、兵士たちの激励をしながら時間をつぶしている…。しかし、まったく金正恩(キムジョンウン)委員長はあらわれる気配がない…。テレビカメラも右往左往していた…。しかし、その歴史的瞬間はまもなく現れた。金正恩委員長が現れ、トランプ大統領と共に軍事境界線を超えたのだ。これはある意味、大きな一歩といえるだろう。

■まるで『トランプ・ニュース・ネットワーク』のニュース映像がアップされる

トランプ最前線の広報チームは常にニュース映像をドナルド・トランプアカウントでも報道し続ける…。ドナルド・トランプのツイッターアカウントのフォロワー数は 6156万人のメディア力だからだ。ちなみに、ホワイトハウスのツイッターは1870万フォロワーだから影響力が違う。本人がみずからニュースを配信する時代だからソーシャルメディア時代はプレスを集めてカンファレンスをしながら、メディア抜きで国民、いや海外にまでリリースすることができる。メディアはそのうち報道というよりも、解説や批判という仕事しかなくなりつつあることを象徴する。

■このたった一通のツイートが、歴史を変える瞬間を生み出した

「ここにいる間、もし、これが北朝鮮のキム委員長の目にふれるならば、私は非武装地域のDMZまで出向き、握手を交わし挨拶をしたい

(筆者訳)」というツイートが流れてから、騒然となり、最終的には面会が実現し、世界を驚愕させた。G20の成果よりもこちらの方に世界の耳目が集められた。

■47 VS 6000万人のいびつなトランプのツイッターの世界

47人のフォローと6000万人のフォロワー 出典:twitter
47人のフォローと6000万人のフォロワー 出典:twitter

トランプ大統領のツイッターは、基本的にフォローしている人たちのツイートとリツイートしか基本的には見えない。

つまり、トランプ大統領の見ているツイッターの世界は簡単に再現できる…。

これが、トランプ大統領が見ているツイッターの景色だ。

トランプ大統領になったつもりで眺めてみていただきたい。

https://twitter.com/knnkanda/lists/trumps-twitter-world

トランプ大統領のフォローをリスト化してみた。

トランプ大統領がフォローしているたった47人のいびつに狭いtwitterの世界を垣間見てどう感じただろうか?自分にとっての悪口は一切見えないという、まるで『お花畑の世界』が広がっていて驚くばかりだ…。

■各国の首脳は誰もなしというフォローする価値観

何よりも、トランプ大統領のフォローの偏りに注意したい…。メラニア夫人から、前妻、前々妻、前々々妻との子供から、閣僚の一部、そして、自分の経営するホテルやゴルフ場、そしてお気に入りのジャーナリストのみのフォローである。あれ、盟友である各国の首脳、そして安倍総理などもフォローされていない。これがトランプ大統領の興味のある事のすべてなのだ。

家族と自分の経営する会社とお気に入りの閣僚だけにしか興味がないのだ。他のニュースはまったく必要がない。

■AIアルゴリズムで整理されたメンションを大量に読むルーティーンによる意思決定

誰をフォローするのは個人の自由だから、まだ良いとしても、一番、怖いのがトランプ自身のツイートに対するメンションの多さだ。

多い時には、そのメンションやリツイートは数十万通にも及ぶ…。47人のフォローしていることよりも、大半は自分のツイートについての賛同のポジティブなメンションやリツイートを読む時間に執務時間が当てられているはずだろう…。それも相当の時間に及ぶ。そこで政策などを思いつくこともある。いわば、自分の意見に対してのボトムアップ型の意見集約法ともいえる。ただ、そこには『AIアルゴリズム』が存在していることも考えねばならない。

twitterは、すべてのメンションやリツイートを、時系列でシンプルに表示はしない。『AIアルゴリズム』によって区別して表示しているのだ。自分がツイートした瞬間にあっという間に世界中から意見が寄せらるが、それはすべてTwitter Inc.社のアルゴリズムで適度にガス抜きされた心地よいポジティブなフィードバックがメインとなっている。そう、facebookが独自のアルゴリズムによって友だちのタイムラインを関係性から心地よく整理することによって『リテンション(既存顧客維持)』効果をもたらしように、twitterもそれに習い、タイムラインをやメンションを時系列で表示するのをやめ、独自のアルゴリズムで、楽しくなりリテンションを高める施策を打っているのだ。

『SNS』というソーシャルメディアだからこその関係性は友だちや関心のある事に関する相互の『グルーミング』と『承認欲求』のメディアだからそれはリテンションを高めるグロースハックとして最適解を生み出す。

しかし、超巨大国の一大統領が、『もしも韓国までいっているんだったら、キム委員長にあえばよいのに…』みたいなメンションを見て、閃いたアイデアだとしたらどうだろうか…。今朝、思いついたとまで公言し、キム委員長もツイートを見て驚いたという…。

現在のトランプ大統領の行動、ツイートに関してアドバイスを求められれば助言できる側近はいるけれども、トランプ大統領のツイートを実質管理コントロールできる人材は世界のどこにもいない…。

毎日、トランプ大統領がスマートフォンでツイートしながら、自分のツイートのメンションに完全に酔っていたとしてもそれはちっともおかしくない。しかし、Twitter社のツイッター中毒にさせたいアルゴリズムで、世界の歴史が良い方向に塗り替えられるのはよいが、それが逆に動いた場合を考えると、大統領には、アルゴリズムの効かない素のままのコメントを見せるべきではないかと思う…。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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