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梶浦宏孝六段(5組優勝)竜王戦本戦開幕戦で勝利 高野智史五段(6組優勝)は敗退で師弟戦実現ならず

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月6日。東京・将棋会館において第33期竜王戦決勝トーナメント▲梶浦宏孝六段(25歳)-△高野智史五段(26歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は21時39分に終局。結果は115手で梶浦六段の勝ちとなりました。

 5組優勝の梶浦六段は次戦、4組優勝の石井健太郎六段と対戦します。

 6組優勝の高野五段は残念ながら敗退。師匠・木村一基王位(1組5位)との師弟戦は残念ながら今期竜王戦では実現しませんでした。

梶浦六段、相矢倉の戦いを制する

 5組優勝者と6組優勝者の対戦を見ると、いよいよ「竜王戦ドリーム」の時節が始まったと感じます。竜王戦決勝トーナメント(本戦)は、直近の5年は6月下旬に開幕していました。今年は7月上旬の開始となります。

 昨年6組優勝の梶浦六段は2期連続でのランキング戦優勝となります。3期以上連続で優勝した棋士は過去に3人です。

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 藤井聡太七段(17歳)の4期連続優勝は空前の大記録。直近でその記録を更新できる可能性があるのは、梶浦六段です。(もちろんその前に、一気に竜王位にまで駆け上がる可能性もあります)

 高野五段の師匠は木村王位(47歳)。梶浦六段の師匠は鈴木大介九段(45歳)。

 木村王位、鈴木九段はともに竜王挑戦の経験があります。ほぼ同年代の両者は、過去に25回の対戦があります。

 梶浦六段と高野五段もまたほぼ同年代。両者は過去に4回対戦し、高野五段3勝、梶浦六段1勝の戦績が残されています。

 振り駒の結果、先手は梶浦六段。戦型は相矢倉となりました。現代の矢倉は序盤早々で戦いになることが多く、本局も展開次第ではその可能性があったのかもしれませんが、進んでみると両者ともに金矢倉に囲い合うことになりました。

 互いに手待ちで飛車を上下させるなどして模様を取り合った後、51手目、梶浦六段は中央から歩を突っかけて仕掛けます。以下は梶浦六段の攻め、高野五段の受ける中、高野五段は梶浦陣に何度も手裏剣の歩を飛ばし、熱い攻防が続きました。

 中盤から終盤に入ろうというところ、高野五段は角を切って梶浦玉を守る銀を取り、梶浦陣に攻め込みます。梶浦玉は危険な形となりましたが、まだ大丈夫。一手の余裕をいかして、梶浦六段は反撃に転じます。

 最後はきわどい形となりましたが、梶浦六段が高野陣一段目に成りこんだのが攻防に利く決め手。高野五段は次の手を指さず、潔く投了しました。

 梶浦六段は「竜王戦ドリーム」実現に向け、まずは階段を一歩駆け上がりました。

 一方の高野五段は2回勝てば師匠の木村王位と対戦できるところでした。残念ながら、今期竜王戦での師弟戦実現は、叶わなくなりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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