N.Y.は摩天楼が重すぎて地盤沈下 高まる洪水のリスク
ビルが重すぎて、ニューヨークが沈んでいるー。
今月、奇想天外な論文が発表されました。アメリカ地質研究所の調査によれば、ニューヨーク市の地盤が、毎年平均で1~2ミリ、一部ではその倍のスピードで沈んでいることが分かりました。そしてその一因が、計100万棟にも及ぶ、高層ビル群の重さだというのです。
ちなみに、同都市を象徴するエンパイアステートビルだけでも、37万トンもの重さがあるようです。
1~2ミリの沈下は、さほど大きな数字に聞こえないかもしれません。しかし、海面が上昇し、ハリケーンなどの脅威が高まっている今にあって、人々を危険にさらすことになると研究者は警鐘を鳴らしています。
実際、ニューヨーク市の海面水位は、1950年代から24センチ上昇しているというデータがあります。
また、2012年にハリケーン・サンディーによって、海水がどっと流れ込んできたり、2021年にはハリケーン・アイダで洪水が起きて排水設備が損傷するなど被害に遭いました。
ニューヨーク市は、海抜1~2メートルという低い土地に、840万人もの人たちが暮らす大都市です。海水が流れ込みやすいうえ、人口過密ですから、もともと脆弱な環境といえます。そのうえに、摩天楼の代償がリスクをさらに高めていることが分かったのです。
では、その巨大ビル群は必要であったか否かですが、皮肉なことに、今年、同市のオフィスの空室率は過去最高の22.7%に達しています。
カリフォルニアの地盤沈下
一方、ロサンゼルスなどカリフォルニア州の土地は、別の原因で沈んでいることが知られています。
地下水のくみ上げすぎです。もともと砂漠に作られた人工のオアシスに、人口が急増したものですから、地下水のくみ上げが盛んに行われ、年間30センチも下がっている地域すらあります。
ぐらつく足元
人がやらかしてしまった地盤沈下は、これだけではありません。いま、温暖化によって起きている地盤沈下が問題になっています。
ロシアのヤクーツクは永久凍土の上に建つ、世界最大の“氷上の都市”ですが、急激な温度上昇で永久凍土が溶け、多くの建物や道路が損傷を受けているといいます。
人の影響は陸海空に及び、自らの足場をも危うくさせているようなのです。