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悪者不在の偽装問題。ダマす側は怠惰、ダマされる側はアホ

大宮冬洋フリーライター

●今朝の100円ニュース:ベビーカー大手に措置命令(読売新聞)

食品の偽装問題が続いている。今朝の読売新聞によると、スーパー「アピタ」「ピアゴ」などを展開するユニーが産地不正表示の豚肉を2年以上にわたり販売していた。「鹿児島県産」と表示した豚肉に愛知県や宮城県産の豚肉を混入していたらしい。

我が家もたまにアピタを利用するので、問題の豚肉を食べていた可能性がある。もちろん、「これは鹿児島県産じゃないぞ」と気づく奇跡の味覚は発揮できなかった。豚キムチにでもしておいしく食べたと思う。ユニーは返金に応じるらしいけれど、包装は捨ててしまったのでどうしようもない。

偽装は食品だけではない。同じく読売新聞で、通気性を売りにするベビーカーの通気性がゼロだったという記事が載っていた。「自社従来品に比べて約11倍」などと表示していたという。従来品の通気性もゼロだったら嘘ではないけれど……。

このベビーカーは半年間で6万台も販売したという。産地ミックスの豚肉を喜んで食べていた僕と同じように、「通気性がいいからこの子もご機嫌ね~!」と信じ込んでいた親たちが多かったのだろう。ムレに敏感な赤ちゃんが泣きまくって偽装が発覚したのだろうか?

ダマす側に悪意があったとは思えない。鹿児島県産の豚肉に他県産のものを混ぜたのは、コストダウン目的ではなく安定供給のためだったと思う。ただし、混入を知りながら表示の付け替えをしなかったのはちょっと腹黒い。

ベビーカーのほうは、シート内部のクッション材に通気性に優れた特殊素材を使っている。しかし、肌触りのためにポリエステル製のカバーで覆ったために通気性がなくなったらしい。凡ミスである。

偽装問題に全体として感じるのは、悪意ではなく怠惰だ。原料の確保、品質管理、表示の付け替えなどを怠ったことで、信用を大きく傷つけてしまった。プロの仕事における怠惰は、悪意と同じぐらいマイナス要素なのだ。

一方、ダマされる僕たちもアホである。自分の五感で商品を見極め味わい評価することをせず、陳列法やブランド名、値段だけで判断して購入している。僕の場合は、「新食感の牛肉!」と表示された豚肉を買ってしまいかねない。

アホが賢くなるためには、良質な経験と慎重な手続きの2つを自分に課すしかないと思う。良質な経験とは、例えば産地に足を運んで本物を食べてみることだ。そういえば、鹿児島県で豚肉を食べたことは一度もないぞ……。

加えて、自分の頭で「見極め」「味わい」「評価する」というプロセスを踏む習慣をつける。手続きが3段階もあれば、「鹿児島産にしては味が薄いぞ」などと気づけるかもしれない。

悪者をやっつけるのが正義の味方だとしたら、怠け者に対抗するには労を惜しまぬ賢者になるしかない。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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