藤井聡太名人、2連覇&八冠堅持か? 豊島将之九段、復位か? 4月10日、名人戦七番勝負開幕
4月10日・11日。東京都文京区・ホテル椿山荘東京において、第82期名人戦七番勝負第1局、藤井聡太名人(21歳)-豊島将之九段(33歳)戦がおこなわれます。
史上最年少名人 VS. 元名人
将棋盤のます目の数は9×9=81であることから、将棋界では81は吉数とされます。1935年に実力制名人戦が発足して以来、記念すべき「盤寿」を迎えた2023年の第81期では、史上最年少20歳の藤井聡太名人が誕生しました。
藤井名人はタイトルをすべて防衛しながら、2023年10月、王座も獲得。史上初の八冠独占を達成し、名実ともに現代将棋界の頂点に立っています。
豊島現九段は2019年、第77期名人戦で佐藤天彦名人(当時)に挑戦。4勝0敗(1千日手)で初の名人位に就いています。
翌20年、第78期名人戦では渡辺明現九段の挑戦を受け、2勝4敗で失冠しました。
そして2023年度のA級順位戦。豊島九段は7勝2敗でトップの成績を収め、名人挑戦権を獲得しています。
藤井名人、豊島九段ともに名人獲得はこれまで1期。本シリーズを制した側が、20世名人の座に一歩、近づくことになります。
過去の対戦成績は藤井リード
両者は過去に33回対戦し、藤井22勝、豊島11勝という成績が残されています。
両者の関係はよく知られているように、はじめは豊島九段が6連勝で圧倒していました。しかし藤井名人が次第に盛り返し、現在では9連勝中です。
直近では王座戦の挑戦者決定戦で藤井名人が勝ちました。
そして藤井名人は史上初の八冠独占を果たしています。
藤井名人と豊島九段がタイトル戦番勝負で当たるのは、これで5回目となります。
過去4回はいずれも藤井名人が制しています。
両者の2023年度成績
藤井名人の2023年度成績は、46勝8敗1持将棋(勝率0.852)です。
藤井名人の勝率は歴代2位。7年連続で8割を超え、6度目の年間1位となりました。
豊島九段の2023年度成績は24勝20敗(勝率0.545)でした。
1月から2月にかけては、A級順位戦での2敗を含め、5連敗を喫していました。しかしA級最終戦では菅井竜也八段に勝って名人挑戦権獲得。3月6日の王位戦リーグでは斎藤慎太郎八段に勝って、2連勝で年度を終えています。
両者の新境地が見られるか?
SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦では両者は西軍の常連です。2023年のファン投票では、藤井名人が1位、豊島九段が2位でした。
豊島九段は東軍の永瀬拓矢九段と対戦。これまでの豊島九段とは一味違った作戦を採用しています。「村田システム」で名高い村田顕弘六段によれば、以後の指し回しは「豊島流村田システム」。結果は豊島九段の勝ちとなりました。
藤井名人もこうした指し回しを参考にして、3月17日の棋王戦第4局で採用しています。
これまでの藤井-豊島戦では角換わりなど、現代のメジャー戦法を主軸に戦われてきました。今期名人戦では、両者の新しい作戦が見られるのかもしれません。
藤井棋王は棋王戦第4局をもって、2023年度の対局を終了。明けて2024年度の叡王戦第1局(4月7日)、名人戦第1局(4月10日・11日)までは少し間が空きます。その点について、棋王戦閉幕のあと、次のように語っていました。
藤井「今年度の中でもおそらくそれ以上、対局の期間が空いたときもあったかなと思いますし。対局がある程度空くことが、それほど、直接的なデメリットではないのかなとは思っています。ただやっぱり公式戦以外で実戦の機会を確保したり、感覚がにぶらないように調整していく必要はあるのかなと思っています」「4月から名人戦が開幕することになるので。そちらに向けてもしっかり準備をしていきたいと思います。豊島九段とは5回目のタイトル戦になるんですけれど。豊島九段はけっこう最近、いろいろな戦型を指されている印象があるので。これまでともまた違ったシリーズになるのかなというふうにも思っています」
花咲いて 名人戦は またはじまる
俳句が趣味だった寒紅先生こと建部和歌夫八段(1909-74)は、そんなシンプルな句を残しています。
将棋界の歳時記では冬が終わる頃、一年をかけた長く厳しい順位戦もまた、終わりを迎えます。そして桜の花が美しく咲く春。名人戦は、また始まります。