「巨大コンマ型雲」接近で大荒れのアメリカ西部
コンマ型の雲を伴う発達した低気圧がアメリカ西海岸に接近しています。これによりワシントン州からカリフォルニア州にかけてのアメリカ西部で、大雨、強風、高波、大雪への警戒が呼びかけられています。
冬に雨の多いアメリカ西部
アメリカ西海岸のシアトルは、スターバックスやタリーズコーヒーといった有名コーヒー店の本拠地であり、コーヒーの大消費地帯です。一説にその理由は天候が関係しているといわれています。冬場この地域はほぼ毎日雨に降られるため、気分も落ち込みがちになることから、人々がカフェイン豊富な温かい飲み物を欲したのです。
このように冬季アメリカ西部には、太平洋から次々と低気圧がやってきます。その中には、はるばる日本やハワイを通過してきた低気圧もあるのです。
大荒れの天気
現在接近している低気圧は太平洋上で発達したもので、8日(火)の中心気圧は972hPaでした。
低気圧から伸びる前線が9日(水)にはワシントン州からカリフォルニア州のアメリカ西部を通過する見込みです。気象局は大雨、強風、高波や大雪に警戒するよう注意を呼びかけています。
なおカリフォルニア州では、別の低気圧により週末にも大雨が降り、昨年、州史上最悪の山火事が起きた地域などで土砂崩れが発生しました。また主要道路のパシフィック・コースト・ハイウェイが閉鎖されたり、停電も起きたようです。
ワシントン州の気候と日本の気候
ところで、アメリカ西部と日本には気候の面で共通点があります。日本で見られる特異な現象がアメリカでも見られるのです。ここではワシントン州に目を向けてみたいと思います。
【収束帯】
下の写真はある冬の日の日本付近の衛星画像ですが、日本海上に発生している無数の筋状の雲の中に、一際はっきりした一筋の雲の帯が見られます。
これは「日本海寒帯気団収束帯 (JPCZ)」といって、大陸からの冷たく乾いた風が北朝鮮と中国の国境にある白頭山にぶつかって二つに分かれ、その後再び日本海でぶつかることによって発生します。この雲帯が入り込んでくる地域では雪や雨が強まります。
一方シアトル周辺にも同じような収束帯が流れ込んでくることが知られています。
太平洋から吹く西風が、オリンピック半島の山地にぶつかって二つに分かれ、それが再びシアトル周辺で収束するのです。このため、シアトル付近で雨や雪が強まることがあります。
この収束帯は、影響する湾の名前から「プジェット湾収束帯 (PSCZ)」と呼ばれています。
【東西の降水差】
さらにもう一つの共通点は、西と東で全く天候が異なることです。日本では冬季、日本海側で雨や雪が多いのに対し、脊梁山脈を挟んだ太平洋側では乾燥します。
同じようにワシントン州の内陸部にもカスケード山脈という山地があり、それらが雲をせき止めるために東部は乾燥するのです。例えば、州西部のシアトルの年間降水日数は150日もありますが、東部のオマックでは年間300日も晴れるほどなのです。