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まだまだ安心できないメイウェザー 実現に6年かかった試合も

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
メイウェザーと榊原委員長(写真:ロイター/アフロ)

 大晦日に開催される格闘技イベント『RIZIN』にメイウェザーと32戦無敗の天才キックボクサー・那須川天心(20)の対戦がいったん11月5日に発表された。しかし、その3日後にメイウェザーが更新したインスタグラムでメイウェザーは公式対戦には一度も同意していないと主張した。試合の開催が危ぶまれたがその後、RIZINの榊原実行委員長がメイウェザーと共に収まる写真をSNSにアップし「フロイド・メイウェザー選手とのミスアンダースタンディング(誤解)は解決しました。彼は12月31日大晦日にRIZIN.14のリングで那須川天心選手と対決します。詳細は日本に戻った時に記者会見で話させて頂きます」とツイッター上でつぶやいた。

日本でも大々的に報道されたこの騒動の行方はいったいどうなってしまうのか。二転三転するお騒がせなメイウェザーは日本での試合に来るのだろうか。

公式試合とエキシビションの違い

 事の発端となったのはメイウェザーが下記のように書いたことから始まった。「3分3回のエキシビションマッチで、純粋にエンターテインメントで公式戦ではなく、世界への中継もないと聞いていた」と載せている。メイウェザーは一度リングに上がると1試合で何百億も稼ぐ。そんな彼を公式のリングに上げるのは簡単な事ではないのだ。巨額のマネーが動くビッグファイト以外には、なかなか試合に出ない。今回のエキシビションマッチとは、公式記録としない公開演技や模範試合を意味する。そのためエキシビジョンマッチと公式試合は全然捉えられ方が違う。要はスパーリングをして大金を稼げるならとメイウェザーも承諾したのだろう。細かいルールは未定だが、公式試合として記録されずに練習試合のようなスパーリングでうん十億も稼げるなら誰だってやりたいだろう。しかし、それが公式試合となると話が全く変わる。50戦無敗のレコードからあるように、メイウェザーは負けない事で価値を保っている。勝ちにこだわり続けて勝利を積み上げてきた。相手がキックボクサーだろうと何であろうと無敗記録を守り抜きたいのだ。そこにメイウェザーの価値がある。例えどんな状況でも万が一負ける事でもあったら商品価値が大きく変わってくるだろう。しかも相手が世界的に無名な選手とあればなおさらだ。そのためメイウェザーはあくまでエキシビションマッチにこだわり今回の発言に繋がったのだろう。メイウェザーとの交渉は一筋縄ではいかないのは、過去の事例からも大いに察知される。

世紀の一戦も実現まで6年かかる

 ボクシングの世紀の一戦と言われるメイウェザー対パッキャオの試合も実現まで多くの時間を要した。この一戦は2009年から交渉がスタートした。しかし、両者の条件面や「薬物検査の方法」「ファイトマネー等の収益分配方法」「パッキャオのプロモーターであるトップランク社CEOボブ・アラムとメイウェザーの長年の確執」「試合を中継するアメリカのテレビ局HBOとショウタイムの放映権問題」などの5つが最大の要因となり、なかなか実現に至らなかった。ようやく試合が決まったのは6年後の2015年だ。パッキャオの連勝が止まったのもあり、お互いがピークの時に観たかったとの声が多く聞かれたがメイウェザーが一切交渉で妥協せず、なかなか実現に至らなかったのだ。これまでも日にちが決まり報道されるが、その度に幾度となる障害に阻まれ試合が決裂していったケースが多くある。

今後のメイウェザービジネスの布石なのか

 今回の件からもわかるようにメイウェザーは常に自分がキングでいたいのだ。試合も交渉も興行でも自分がトップ。そうでないと試合をやらない。少しでも気に入らないことがあるとプイとそっぽを向いてしまう。ある意味感情的で子供みたいな一面もある。いい意味で自分を貫き悪い意味ではわがままなのも事実だ。非常に手の掛かる選手だが、その分莫大な金額を動かすのは事実だ。メイウェザーパッキャオ戦は実現まで5年近く。前回のメイウェザーとマクレガーの復帰戦も経緯を考えると2年ほどかかっている。その2試合だけでPPV販売数を900万件近く売上げておりファイトマネーも500億円以上を稼いだとも言われている。そんなメイウェザーがこの短期間での交渉で日本のリングに上がるには色々と今後の布石もあるのだろう。巨額のマネーを生み出してきたが、アメリカでの総合格闘家との試合か、それともその先にあるビジネスなのか、真意はわからないが何らかの意図があるのだろう。確かに今回の件でメイウェザーが日本のリングに上がることで大きな注目を集めるだろう。しかし、格闘技やボクシングの醍醐味は真剣勝負だ。選手同士が真剣に戦いどちらが勝つかわからない試合を観たいし、そのために公平なルールのもとに白熱した試合が見たい。もちろんアメリカ的なショーの要素も大事ではあるが話題性ばかり追いかけるのではなく、人の感情を動かすような熱いファイトが観たいものだ。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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