突然の棄権で試合終了となったWBOフェザー級タイトルマッチ
第6ラウンドに入って、10秒が経過したところだった。自身のジャブをヒットした直後、挑戦者のロベイシー・ラミレスが、左手を上げ、踵を返す。試合を棄権したのだ。
4、5ラウンドは3名のジャッジ全員が、チャンピオンのラファエル・“エル・ディビーノ”・エスピノサ優勢としていた。が、トータルのポイントでは、ラミレスが若干リードしていた。
両者は1年前にも拳を交えており、倒し、倒されの激戦を演じた。初戦では第5ラウンド残り2秒でラミレスが右フックをヒットしてダウンを奪った。しかしその後、ジワジワと捲り上げたエスピノサが最終ラウンド2分35秒に連打を浴びせてラミレスを沈めた。結局、115-111、114-112、113-113で、エスピノサがラミレスからWBOフェザー級タイトルを奪った。
エスピノサのトレーナーは、今回のリターンマッチを次のように振り返った。
「前回、ラミレスはこちらを舐めており、油断があった。今回は、距離と立ち位置のアングルを意識して戦った。特に前半はディフェンス面を重視したんだ。
プラン通りに運んでいたので、ポイントを失っている感覚は無かったね(笑)。6ラウンド以降はいつでも倒す準備をしていたよ」
エスピノサは身長185センチ、リーチ188センチと、フェザー級とは思えないサイズを誇る。一方のキューバ人サウスポーのラミレスは、ロンドン、リオと五輪で連続Vを果たし、豊富なアマチュアキャリアを持つ。
エスピノサの長いリーチを潜って、左ストレートを見舞うなど、試合巧者ぶりも目に留まったが、本人曰く「4ラウンドに2度、肘打ちを喰らって視力に支障をきたしていた。2重に見えていた」。
五輪金メダリストとして颯爽とプロ入りしたラミレスだが、デビュー戦のファーストラウンドにダウンを喫しての黒星スタートだった。その後は、慎重に相手を選んでプロ生活を送ってきた。思いのほかメンタルは強くなかったか。
勝者は語った。
「俺は自分の仕事をしただけだ。ヤツを捕まえたのさ。実際、残りのラウンドは俺のプレッシャーで苦しんだ筈だ。つまり、ヤツは俺のパワーを感じていたんだよ。多分、耐えられないと悟ったんだろう。俺は勝った。
デビュー時から言ってきたが、俺は伝説になりたい。私はメキシコの誇りを目指している。誰とでも戦うよ。自分がここにいるのは素晴らしい試合を見せるためだ。それを、人々に知ってもらいたい」
明暗を分けたのは、ハートだったか。