音楽教室の著作権処理:米国はどうなっているか
JASRACの音楽教室に対する使用料請求問題、音楽教室側は争う方針のようです(参考ニュース)。この機会に、米国での音楽教室の著作権処理がどうなっているかを調べてみました(さくっと調べただけなので、もっと米国の現場に詳しい方がいればご教示いただければ幸いです)。米国のやり方が絶対に正しいかというとそんなことはないですが、あくまで参考です。
まず、米国著作権法110条の権利制限規定の関連しそうなところを見てみましょう。
対面授業での演奏には著作権は効かないとされていますが「非営利」の縛りがあるので実質的には日本と同じですね。つまり、今回日本でJASRACが問題にしているヤマハやカワイの音楽教室的なものは対象外と思われます。
一方、米国の著作権管理団体のひとつであるASCAPのサイトには"music school"との契約書フォームがアップされています。米国の音楽教室はASCAPと契約しているということが伺えます。
これによると料金は固定制で一拠点あたり年間236ドル、有料リサイタル1回あたり20ドルです。なお、これとは別にNational Association for Music Educationという音楽教室の業界団体がメンバーの学校向けにASCAP(およびBMI)と一括ライセンスを結んでいるようですが条件は不明です(ただ、少なくとも何らかの金銭が支払われているのは確かでしょう)。
米国では、音楽教室だからといって著作権料が免除されることはないが、料金は安めに設定されており、かつ、手続も楽(売上げとか生徒数を気にしなくてよい)ですね。
米国の場合、事実上、ASCAP以外にBMIとSESACとも契約しなければならない(BMIとSESACはウェブ上で契約書が見つかりませんでした)ので仮に料金3倍とすると一拠点あたり月額約7,000円です。
JASRACが現時点で提案しているレッスン料の2.5%という料率で、仮に月謝10,000円の生徒が100人いる(実際はもっと多い?)とすると月額25,000円ですから、米国と比べると大部高いように思えます(BMIとSESACの契約条件がわからないので確実ではないですが)。
前々回の記事では、現時点の法律と法解釈の動向を考えると、裁判になった場合に音楽教室側はちょっと苦しいのではないかと書いたのですが、JASRAC側が提示した使用料率が妥当なのかという点では十分争えるのではないかと思います。