JASRACが音楽教室からも著作権使用料を徴収しようとする法的根拠は何か?
「音楽教室から著作権料徴収へ JASRAC方針、反発も」という記事を読みました。
ということだそうです。
人を集めた発表会での演奏ならまだしも、普段のレッスン時の演奏についてまで著作権使用料を徴収するのはおかしいのではないかというのが一般的感覚でしょう。著作権法的に検討してみます。
JASRACが管理する演奏権の著作権法上の定義は次のとおりです。
つまり、演奏権が関係するのは公衆に対する演奏だけです。別の言い方をすると「特定少数」に対して演奏する分には演奏権は効いてきません(JASRACは何も言えません)。
音楽教室での演奏は仮にグループレッスンだったとしても「特定少数」なのではないかと思えそうですが、誰でも申し込めば生徒になれ、生徒数は全体としてみれば多数である以上「不特定多数」である(ゆえに、演奏権の許諾が必要である)という解釈の元に、JASRACは行動を取ったものと思われます。
この解釈には前例があって、2004年に社交ダンス教室における演奏(CDプレイ)は「不特定多数」に向けてものであり、演奏権の許諾は必要(許諾がなければ損害賠償の責を負う)との判決が名古屋高裁で出されており、JASRACが勝訴しています(JASRACのプレスリリース、第一審の判決文(控訴審の判決文はウェブに上がってないようです))。ということで、仮に裁判で争っても音楽教室側はちょっと苦しいのではないかと思います(演奏曲には著作権切れのクラシックが多いこと等を根拠に使用料の料率について争うのであれば意味があると思いますが)。
なお、この記事はJASRACがこういう法的解釈の元に著作権使用料を徴収するのだろうという解説であって、これが正しい(あるべき姿である)と私が考えているというわけではありませんので、念のため。