なぜネイマールは”嫌われ者”になるのか...バルサで「裏切り者」扱いされた男のパリでの野望
話題を振り撒く人物である。
ネイマールがパリ・サンジェルマンに移籍したのは、2017年夏のことだった。契約解除金2億2200万ユーロ(約286億円)が支払われ、バルセロナからパリSGに移籍。世紀の移籍が実現した瞬間だった。
だが、その後もネイマールとバルセロナの”関係”は続いた。移籍市場が開く度に、ネイマールのバルセロナ復帰の可能性が取りざたされる。
復帰に最も近づいたのは2019年夏だ。エリック・アビダル当時スポーツディレクターが「マーケットが閉まる10日前に(パリSGのスポーツディレクターである)レオナルドと接触した。その前に(アントワーヌ・)グリーズマンを獲得していなければ、ネイマールを再獲得できていた。100%だ」と振り返っている。
「会長はグリーズマンの獲得を決めていた。ネイマールの問題は、クラブと裁判で揉めていたことだ。それをストップさせなければいけなかった。簡単ではなかったよ。ただ、その一件は私の担当ではなかった。争いが起きた時、私はクラブにいなかったのだからね。私の見解では、ネイマールを再獲得できたと思う。だが、そうはならなかった」
リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの3トップはスペインと欧州を席巻した。2014シーズンから2017シーズンにかけて、バルセロナの「MSN」は圧倒的な攻撃力を見せつけていた。
■ブラジル時代のビッグクラブからのオファー
ネイマールに最初にビッグオファーが届いたのは2010年夏だった。当時サントスに所属していたネイマールに、チェルシーが触手を伸ばす。この時、ネイマールはブラジル残留を望み、サントスがチェルシーのオファーを断った。ただ、状況は少しずつ変化していった。
2010年にネイマールは60試合42得点を記録して、爆発のシーズンを迎えた。だがある試合でPKキッカーを外されたことでドリバル・ジュニオール監督との関係が悪くなり、最終的にはサントスが指揮官を解任するという事態に発展した。
クラブにとって、ネイマールの扱いは難しいものになっていった。それでも、2011年にはリベルタドーレス杯とコパ・ド・ブラジルで優勝を達成し、”王様”ペレが在籍していた1963年以来の2冠をサントスにもたらした。
ネイマールがバルセロナを離れたのは、メッシの2番手に甘んじていたくなかったからだといわれている。
当然、彼の視線の先にはバロンドールがあった。だが過去3年の受賞者を見れば、メッシ(2019年)、ルカ・モドリッチ(2018年)、クリスティアーノ・ロナウド(2017年)とネイマールの野望が叶っていないのは明らかである。
また、メッシと別れたネイマールだが、パリSGにはキリアン・ムバッペがいた。1億8000万ユーロ(約234億円)という高額な移籍金で、ネイマールと同時期に加入したムバッペは、2018年のロシア・ワールドカップで優勝に貢献するなど、ネイマール以上の成績を残してきた。この2人の関係性は悪くないが、ネイマールが完全なエースになるという計画は水泡に帰している。
■契約延長と再会の望み
イギリスのジャーナリストであるトーマス・スワン氏は「嫌われているフットボーラー」のランキングを作成して、その1位にネイマールを選んでいる。
ネイマールは先日、パリSGと2025年までの契約延長で合意した。その際、スペイン『スポルト』には「ネイマール、永遠にさようなら」という記事が掲載された。カタルーニャのメディアやバルセロナのファンには、ネイマールに”裏切り者”や”金の亡者”というイメージが付き纏っている。
一方で、ネイマールの実力に疑いの余地はない。「技術に関しては、ネイマールを上回る選手はいない。私はメッシのファンだが、彼でさえネイマール以上ではない」と語るのは元ブラジル代表DFのカフーである。「ブラジルのフットボールに歴史を刻む存在だ。ネイマールはその責任を受け入れるべき。ただ、彼はリーダーではない。その役割は他の選手が担う必要がある」
「ネイマールはブラジルにタイトルをもたらしてくれる選手だ。次のワールドカップを含めてね。彼を好きであろうと、嫌いであろうと、ピッチ上では相手の8選手の注意を引き付けてくれる。前線で起点になり、スペースを生み出して、スーパーゴールを決める」
サンバを踊るようなドリブルで、相手を翻弄する。エレガントなタッチで、対峙する選手の逆を突く。そのリズムは独特だ。メッシとも、ムバッペとも、特徴が異なる。
好きであろうと、なかろうとーー。ネイマールのプレーから目が離せないのは、確かだ。