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大天才・藤井聡太挑戦者(19)王将戦七番勝負一気3連勝! 史上最年少王将&五冠まであと1勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月29日・30日。栃木県大田原市・ホテル花月において第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局▲藤井聡太挑戦者(19歳)-△渡辺明王将(37歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 29日9時に始まった対局は30日19時15分に終局。結果は135手で藤井挑戦者の勝ちとなりました。

 藤井挑戦者はこれで3連勝。史上最年少での王将位獲得、および将棋史上4人目、史上最年少での五冠同時保持まであと1勝と迫りました。

 第4局は2月11日・12日、東京都立川市「SORANO HOTEL」でおこなわれます。立会人を務めるのは史上最年少王将・中村修現九段です。

 渡辺王将と藤井挑戦者の対戦成績はこれで渡辺2勝、藤井11勝となりました。

 藤井挑戦者の今年度成績は49勝12敗(勝率0.803)となりました。

藤井挑戦者、地下鉄飛車を取らせて制勝

 1日目。藤井挑戦者の作戦選択は相掛かり。形は違えど第1局に続いて相手の飛車先、8筋の歩を突く新時代感覚の構想を見せました。

 藤井挑戦者は地下鉄飛車の形を作ります。

 いまにも走り出しそうだった藤井挑戦者の地下鉄飛車。しかし2日目午前になっても動きません。藤井挑戦者はじっと間合いをはかりながら時機を待ちます。藤井挑戦者はときおりぐったりしたような仕草も見せ、自信がなさそうにも映りました。

 午後の戦いに入り、渡辺王将は中央にかまえる藤井玉の上部から攻めていきます。対して藤井挑戦者は一足早く渡辺玉に王手。白熱の終盤戦が始まりました。

 95手目。藤井挑戦者は中段に桂を跳ねて渡辺玉にプレッシャーをかけます。持ち時間8時間のうち残りは藤井33分、渡辺1時間20分でした。

 きわどいながらも渡辺王将がわずかにリードしていると思われた局面で、桂を打って攻め合うか、それとも攻防に角を打つか。渡辺王将は19分考えて、後者を選びました。しかし結果から見れば、この順は自然に見えてどうだったか、ということになりそうです。

 藤井挑戦者は桂を成り捨て、銀3枚で渡辺玉にからみつく形を築いて攻めをつなげる形を作ります。形勢はここで逆転したようです。

 最終盤の寄せ合い。藤井挑戦者は動かなかった地下鉄飛車を取らせる間に、渡辺玉を寄せにいきます。最後は新時代の構想で組まれた8筋の歩、金まではたらき、あまりにもぴったりの詰み。

 渡辺王将は最後、身をよじるような仕草を見せました。そして静かに投了。藤井挑戦者が3連勝を飾りました。

 強い・・・。それにしても強い。なんという強さか。この大天才にはいったい、どうやったら勝てるのでしょうか。

 藤井挑戦者の七番勝負(2日制タイトル戦)通算成績は15勝1敗(勝率0.938)となりました。

【追記】最終盤では互いに錯覚があったようです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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