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伝説の音楽バラエティ番組『ステージ101』の貴重音源で感じる、日本のポップミュージックの“青春期”

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックダイレクト

50年前、若者を熱狂させた10代~20代を中心にした約40人のコーラスグループ・ヤング101

1970年1月~1974年3月までNHKで放送されていた、伝説の音楽バラエティ番組『ステージ101』。10代~20代を中心にした約40人のコーラスグループ・ヤング101が歌い踊る姿に若い視聴者は夢中になり、その人気は社会現象になった。NHKの若者向け音楽番組はここから始まった。のちに『レッツゴーヤング』(1974~1986年)、『ヤングスタジオ101』(1986~1988年)、 『ジャストポップアップ』(1988~1991年)、『ポップジャム』(1993~2007年)、『ミュージックジャンプ』(1997~1999年・BS2)、そして、『MUSIC JAPAN』(2007年放送開始)などへとつながっていった。

『ステージ101 GO!』(ソニー・ミュージックダイレクト/¥11,000(税込)/5月20日発売)
『ステージ101 GO!』(ソニー・ミュージックダイレクト/¥11,000(税込)/5月20日発売)

番組は中村八大、東海林修、宮川泰ら錚々たる顔ぶれの音楽監督の手による、当時流行していた洋楽テイストをいち早く取り入れたアレンジが受け、洋邦のカバー曲だけでなく「涙をこえて」や「怪獣のバラード」といった番組から生まれたのオリジナルソングも大人気となった。番組放送開始から50周年を迎えた今年、「ステージ101」で披露された楽曲が収録されたCD-BOXセット『ステージ101 GO!』が5月20日に発売され、好調だ。

レコード音源(70曲)、メンバーのソロによるレコード音源(16曲)、そして今回初出しとなるお宝の放送音源(43曲)を選曲し、5枚のディスクに全135トラック(129曲+6ナレーション)を収録している。この作品のディレクター加納糾氏(ソニー・ミュージックダイレクト制作グループ)も同番組に夢中になった一人だ。加納氏にこの番組の魅力と、『ステージ101 GO!』についてインタビューした。

「番組終了からかなり時間が経っているのに、根強いファンが多い」

「2003年に『GOLDEN ☆BEST ステージ101 ヤング青春の日々』という2枚組CDを企画して、現在までに1万枚を超える売上げになっています。この年の10月に行われた『ステージ101』の復活コンサート『ステージ101~明日に架ける橋』(渋谷・シアターコクーン)も3公演チケットがソールドアウトしました。番組終了からかなり時間が経っているのに根強いファンが多いことがわかりました。2013年にはCBS・ソニー時代のアルバム5作にシングルなどの音源を追加してCD-BOX『ヤング101 ギフトボックス』を企画しましたが、これは収録曲に関して少し不完全燃焼の部分がありました。今回は東芝(当時)など他のレーベルや、NHKアーカイブスが収集した放送の音源も収録することができて、納得のいく仕上がりになっています」(加納氏)。

『ステージ101』は近年その上映会が行われ、全国からファンが駆け付けるほど今もその人気は絶大だ。「“伝説の番組”だからみんなもう一度観たいんです」(加納氏)。当時の視聴者に大きな影響を与えた。1965年、当時NHKのディレクターだった末盛憲彦氏が渡米した際に観た『アップ・ウィズ・ピープル・ショー』などのテレビ番組や、歌って踊れる大学生を中心とした集団・ヤング・アメリカンズのステージを観て、この日本版を作ろうと思ったところからストーリーは始まる。

「ヤング101の魅力は、多彩な洋邦のカバー曲のコーラスアレンジとダンス」

「当時NHKが内幸町から渋谷に移転して、東洋一の広さというふれ込みの101スタジオが完成して、そこを生かす番組をということで、末盛さんが温めていた企画の『ステージ101』がスタートしたのだと思います。そこに登場するヤング101はいわばセミプロで、若い人たちがはつらつと歌い、踊る姿を観て憧れました。当時民放の音楽番組はヒットチャートの上位の歌謡曲を取り上げる構成なのに対して、この番組は流行り始めたフォークソングや、これからヒットしそうな洋楽を、日本語でカバーして紹介していたところが斬新でした。オリジナル曲も、既成の歌謡曲にはない独自のポップスでした。プロの歌手は当然歌が上手い人がたくさんいましたが、ヤング101の魅力はなんといっても洋邦のカバーのコーラスアレンジとダンスで、ソフトロックってコーラスがとても大事なので、今回選曲にあたっても、コーラスがフィーチャーされているものを中心にピックアップしました。個人的には1972年から音楽監督が中村八大さんから東海林修さんに変わったことで、サウンドがガラッと変わってロック、ポップス寄りなった時の歌が好みでした」(加納氏)。

当時ヤング101のLPレコードは20作リリースされ、太田裕美、谷山浩子、田中星児ら、“次”の音楽シーンを担う才能を送り出す

当時の最新の技術と機材を駆使した番組作りは、すぐに話題となり若い人を中心にその人気は広がっていった。大学のサークルのような親しみやすい雰囲気に、全国からヤング101に加入したいという問い合わせが殺到し、大規模なオーディションも行われたほどだ。当時ヤング101のLPレコードは20作リリースされ、太田裕美、谷山浩子、田中星児、そして作曲家の芹澤廣明ら、“次”の音楽シーンを担う才能を送り出していることでも知られる。毎回登場する豪華なゲストも話題になった。

「当時強力な裏番組にぶつけ、ゴールデンタイムに放送したNHKの本気度が伝わってくる」

「当初は、ヤング101がまだ知名度がないセミプロなので、そこをカバーするために、美空ひばりさんや植木等さん、三波春夫さんといった大物がゲストで出演していました。なんといってもゴールデンタイムにやっていたことが大きかったし、裏番組では「コント55号の世界は笑う」や「8時だョ!全員集合」をやっていたので、NHKの本気度が伝わってきます。当時は地方に行くとテレビのチャンネルが民放一局とNHKというところがたくさんありました。なので番組の影響力は大きくて、メンバーが地方に行くと、自分では無名だと思っているのにすごく歓迎されたという話も聞きました。そのうちにヤング101のオーディションも始まりました。80年代におニャン子クラブが登場したときに、それに近い感じのものが出てきたと感じました。全員でも歌うしユニットやソロの活動もあって、テレビ局がバックアップしているところが似ていると思いました」(加納氏)。

制作者であり番組の熱狂的なファンでもある加納氏に『ステージ101 GO!』のDISC1~5の中でそれぞれ“推し曲”を教えてもらった。

「オリジナルソングを集めたDISC1と2は、1ではやっぱりこの番組を代表する一曲の『涙をこえて』(シング・アウト/1969年)。DISC2は『若い旅』(塩見大治郎、ヤング101/1972年)と『人生素晴らしきドラマ』(ヤング101/1972年)。洋楽の日本語カバーで構成したDISC3と4は、3では『気になる女の子』(ザ・チャープス/1972年)、DISC4は『花のサンフランシスコ』(西玲子、中山エミ、ヤング101)。邦楽のカバーを集めたDISC5は谷山浩子さんのデビュー曲でもある『銀河系はやっぱりまわってる』(広美和子、工藤たけし、ヤング101)が個人的には好きな曲です。DISC5には『ウララカ』と『はいからかはくち』という大滝詠一さんの曲が2曲収録されていますが、大滝さんの曲が初めてNHKで流れたのも、この番組だったのではないかと思います」(加納氏)。

50年前に放送されていた番組で歌われていた楽曲を通して、当時の若い表現者たちの音楽に対する情熱と、新しいものが生まれてくるエネルギーを感じることができる。リアルタイムで観ていた人は当時を思い出し、現在の音楽へと脈々と受け継がれている、ポップスの源流ともいえる1970年代の音楽に興味がある人も楽しむことができる、貴重な音源集だ。

otonano『ステージj101 GO!』特設ページ

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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