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ずっと求めたラグビー人気に田中史朗は「寂しい気持ちもある」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
身長166センチと小柄も、気迫と好判断で存在感を示す。(写真:ロイター/アフロ)

4年に1度おこなわれるラグビーワールドカップのイングランド大会で、日本代表史上初の予選プール3勝を挙げた田中史朗は、11月6日、所属先であるパナソニックの練習試合に帰国後初めて出場した。群馬県太田市の本拠地にサニックスを迎え、前半のみプレー。39-19で勝利した。堀江翔太キャプテンを含め日本代表勢5人がそろい踏みしていた。

自身初出場だった2011年のワールドカップニュージーランド大会を未勝利で終え、「日本のファンの皆さんに申し訳ないことをした」と贖罪の思いを抱いてきた。南半球最高峰であるスーパーラグビーに日本人で初めて挑戦する一方、Facebook上で「ラグビーファミリー」なるグループを立ち上げるなど、競技の人気拡大や普及のため身を粉にしてきた。

空前のラグビーブームにあって、チームの3連覇に専心する。

以下、共同取材時の一問一答。

――合流後、全体練習参加は4回ほど。この日の実戦を迎えました。

「はい。でも、個人練習はしていたので。普通の、フィットネスですね」

――(当方質問)今日のゲームは。

「楽しかったですね。ただ、自分自身、まだまだ足りないと感じます。ディフェンス、パスの判断、速さ…全ての面ですね」

――チームは変わっていましたか。

「そんなには。少しコール(チーム内でのプレーの共通言語)が変わっていたくらいで、イメージは一緒です」

――(当方質問)10月13日に帰国後、テレビ出演も重なりました。いかがお過ごしでしたか。

「しんどかったです。ただ、ありがたい。メディアにも出していただいて。ここからは気持ちをしっかり切り替えて、ラグビーに集中したいと思いますね」

――ジャパンのエディー・ジョーンズヘッドコーチは、冗談交じりに「皆、テレビに出すぎ」と話しています。

「ふふふふ。でも、これは今しかできないので。しっかり、ラグビーを観るということを伝えていって、今シーズンしっかり観てもらうことでさらに人気は上がると思います」

――環境は変わりましたか。

「ただ歩いているだけで『感動したよ』と声をかけていただけるので嬉しいですね。昔だったら歩いていても全然何もなかったんですけど、いまは『ありがとう』と言われる」

――(当方質問)ずっと求めていた状況が訪れました。

「結果を出して(急に認知度が)変わったのは嬉しい反面、寂しさもありますね。それまでの4年間、色々とやってきたのは何だったんだろう、と。無駄ではなかったんですけど。子どもたちからメールが来たりするのは、小さなこと(普及活動など)を色々とやっていった結果ではあるので」

――ところで、日本代表がパナソニックの守備を採り入れていたという話があります。 

「いや、全然。パナソニックは別物ですね」

――(当方質問)堀江選手が主導でシステムを整備したようですが。

「堀江、リーチ(マイケルキャプテン)、トンプソン ルーク、小野晃征などのリーダー陣が引っ張っていた」

――(当方質問)相手との間合いの詰め方など、似ている部分もあったような。

「それはシステムというより、個人の判断ですね」

――(当方質問)今季はどう戦いますか。

「先を見てしまうと足元をすくわれる。1試合全力を出して戦いたいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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