なぜグアルディオラは“名将”と呼ばれるのか?ハーランドのシティ加入と示される解答。
名将と呼ばれるには、何かしらの所以がある。
近年、欧州で安定的な強さを見せているのはマンチェスター・シティだろう。彼らは過去5年でプレミアリーグ優勝4回、チャンピオンズリーグではベスト4に2度進出している。
そのシティを率いるのが、ペップ・グアルディオラ監督だ。
グアルディオラ監督はバルセロナで指導者キャリアをスタートさせた。現役時代、バルセロナでプレーしていた縁(ゆかり)があった。それだけではなく、元々、そこのカンテラ(下部組織)出身の選手だった。
グアルディオラ監督はバルセロナで栄光の日々を過ごした。指揮した4年間で、合計14個のタイトルを獲得。リオネル・メッシ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタを中心にしたチームはビッグイヤーを2度獲得し、世界中で「ペップ・バルサ最強説」が囁かれた。
■クライフの影響
グアルディオラ監督はバルセロナの創造主であるヨハン・クライフの影響を強く受けている。これはグアルディオラ監督自身が認めるところだ。
一方、クライフの影響を受けるがゆえに、グアルディオラ監督にはフットボールを難しく捉え過ぎる傾向がある。欧州のメディアでは「イノベーター」と形容されるとともに、「傲慢」「ルーザー」といった批判も浴びてきた。
チャンピオンズリーグでは、2021−22シーズン(準決勝/レアル・マドリー戦)、2020ー21シーズン(決勝/チェルシー戦)と不可解な采配を見せてきた。遡れば、バイエルン時代にも、2013−14シーズン(準決勝/マドリー戦)でサプライズ起用をして大敗している。
ユルゲン・クロップ監督、トーマス・トゥヘル監督、アントニオ・コンテ監督、ミケル・アルテタ監督、ディエゴ・シメオネ監督、ジョゼ・モウリーニョ監督...。国内外で多くの監督がペップと対峙してきた。その競争性が、刺激となり、成長を促してきた。
「対戦相手を悩ませ、なおかつ観衆を魅了するのはプレーの内容だ」と語るのはグアルディオラ監督だ。いかなる指揮官と対峙しようとも、自身の哲学を曲げてはこなかった。
■スペイン国外での挑戦とビッグイヤー
2012年夏にバルセロナを去った際、大衆の関心は引きつけられた。グアルディオラは、バルセロナ以外でも成功できるのか。そのような疑問が頭を擡(もた)げたからだ。
結論からいえば、その答えは「イエス」だった。バイエルン(獲得タイトル7個)、シティ(11個)とグアルディオラ監督は幾度となくトロフィーを掲げた。マンチェスター・ユナイテッドで長期政権を築き、監督キャリア通算で49個のタイトルを獲得したサー・アレックス・ファーガソンに迫る勢いでタイトルを獲り続けている。
無論、課題はある。もはや、言うまでもないだろう。チャンピオンズリーグのタイトルだ。
バルセロナ(2009年・2011年)でビッグイヤーを獲得して以降、グアルディオラ監督はこのトロフィーを手中に収められずにいる。また、それはそのまま「メッシのいないチームで勝てない」ことを意味している。
過去2年、シティはファルソ・ヌエベ(ゼロトップ/偽背番号9)の戦術の練度を上げて戦ってきた。しかしながらCLの舞台では、準優勝、準決勝敗退という結果に終わった。
そして、この夏、アーリング・ハーランドが加わった。稀代のストライカーが、シティの攻撃を牽引している。
メッシのファルソ・ヌエベで始まったグアルディオラ監督の指導者キャリアは佳境を迎えている。その真逆に振り切るように、ハーランドの獲得と彼の爆発が起こった。
グアルディオラの敵は、他ならぬグアルディオラ自身である。その解答が示される時が、近づいている。