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台湾ウインターリーグから帰国した阪神の3選手 「この経験が生きる来シーズンに」

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
鳴尾浜に戻ってきた竹安投手。台湾で評判のお店でカットしてもらった髪だそうです。

 11月25日から台湾で開催されていた『2017アジア・ウインター・ベースボール・リーグ(亞洲冬季棒球聯盟)』が、12月17日の優勝決定戦をもって全日程終了。阪神タイガースから参加の守屋功輝投手(24)、竹安大知投手(23)、長坂拳弥捕手(23)の3人も18日夕方、元気に帰国しました。

 その話をご紹介する前に、もともと今回のウインターリーグに派遣予定だった望月惇志投手(20)について。腰痛でウインターリーグ参加を断念した望月投手は、このたび和歌山市内の病院で『腰部ヘルニア』の手術を行い、きょう19日に退院したそうです。「腰の不安を取り除くために手術しました。チームに迷惑をかけてしまいましたが、一日でも早く自分の投球ができるようにリハビリやトレーニングを頑張っていきます」と球団を通じてコメントした望月投手。痛みも不安もなく、ただ投げることだけに集中できる日が早く来るといいですね。

これまでの台湾ウインターリーグ

 さて、アジア・ウインター・ベースボール・リーグはアジア初のウインターリーグとして2012年に始まり、2014年は休止でしたが2015年に再開、ことしで5回目です。各年度の参加国と成績(プレーオフも含む)、日本の参加チーム、阪神から派遣された選手などを振り返ってみると、このようになります。

2012年  日本、台湾(中華紅)、台湾(中華白)、ドミニカ

 日本は阪神、中日、巨人、ヤクルト、DeNA、ソフトバンクの6チーム。

  1位・日本 19勝2敗 ※優勝

  2位・中華白 12勝10敗

  3位・中華紅 8勝11敗

  4位・ドミニカ 2勝18敗 

 阪神からは伊藤和、島本、中谷、一二三の4選手が参加。伊藤和投手は終盤に完封勝利を挙げ、その試合のMVPを獲得。また島本投手も中継ぎでMVPに選ばれるなど、9試合(14回2/3)を投げて防御率0.61、奪三振23など素晴らしい内容でした。

2013年  日本、台湾、ドミニカ、韓国

 日本は前年と同じ6チーム。

  1位・日本 16勝5敗1分

  2位・韓国 13勝8敗1分 ※優勝

  3位・台湾 8勝13敗

  4位・ドミニカ 5勝16敗

  ※決定戦の結果、初参加の韓国が優勝

 阪神からは二神、歳内、一二三、緒方の4選手。二神投手は7試合にリリーフ登板して防御率0.82.歳内投手は4試合に先発して3勝1敗。緒方選手も11盗塁を決め、打率.369という結果です。

2015年  日本、台湾、台湾アマ、韓国、欧州選抜

 日本は同じ6チーム。

  1位・台湾アマ 11勝5敗2分 ※優勝

  2位・日本 11勝6敗2分

  3位・韓国 8勝5敗5分

  4位・台湾 5勝4敗9分

  5位・欧州選抜 1勝11敗3分

 この年も日本は、レギュラーシーズンを台湾アマと同じ勝率で1位通過したあと、ともに2つずつ勝って臨んだ優勝決定戦でした。しかしここで敗れたため、最終結果では2位となっています。

 阪神からは岩貞、田面、陽川、横田の4選手が参加。岩貞投手は5試合(うち先発3試合)に登板して防御率0.53。勝った2試合ともMVPに選ばれています。陽川選手は打率.339で、2本塁打など長打率が.597。横田選手も2本塁打で打率.304、盗塁がリーグ3位タイの7個でした。

2016年  日本(ウエスタン)、日本(イースタン)、台湾、台湾アマ、韓国、欧州選抜

 日本はウエスタンが阪神、中日、ソフトバンクに加え、オリックスの初参加で4チームに。イースタンは巨人、ヤクルト、DeNAに楽天とロッテが加わり5チームでの編成となっています。

  1位・日本(ウ) 16勝2敗 ※優勝

  2位・日本(イ) 9勝6敗3分

  3位・韓国 9勝7敗2分

  4位・台湾アマ 6勝8敗4分

  5位・欧州選抜 4勝12敗1分

  6位・台湾 3勝12敗2分

 阪神からは横山、石崎、青柳、坂本、横田の5選手。青柳投手が3勝1セーブ、防御率1.45の成績で、2度のゲームMVPに加え、リーグの最優秀投手賞も受賞。石崎投手はリーグトップの5セーブと、12試合(12回1/3)で防御率0.00、しかも20奪三振と見事な内容です。横田選手もほとんどの試合でヒットを打ち.379という打率。盗塁も前年を上回る10個を成功させ、リーグトップで終えています。

初めてプレーオフ進出ならず…

 そして2017年は、前年と同じく日本はウエスタン選抜とイースタン選抜の2チーム、台湾、台湾アマ、韓国も参加。そこに日本のアマチュア(社会人選抜)と、アメリカとヨーロッパの混成チームが新たに加わって、6チームで戦いました。日本はウエスタンが、前年の4チームに西武を入れた5チーム(阪神からは守屋、竹安、長坂の3選手)。イースタンは前年と同じ5チームでの編成です。

 まず11月25日から12月14日までレギュラーシーズンとして各チーム17試合を行います。ここで初出場の日本・社会人選抜チームが1位に!一方、前年ぶっちぎりの優勝を飾りながら、まさかの5位通過で早々にプレーオフ進出資格を失ってしまったウエスタン選抜。過去はすべてレギュラーシーズンを1位で終え、最終的にもNPBとウエスタン選抜の両方で優勝を経験した阪神のメンバーですから、残り2日間に試合がないなんて…何ともさびしい結末でしたね。

 ことしの、プレーオフも含む最終成績は以下の通りです。

  1位・日本アマ 12勝5敗2分

  2位・台湾 11勝7敗1分

  3位・韓国 9勝8敗2分

  4位・日本(イ) 10勝9敗 ※優勝

  5位・日本(ウ) 6勝11敗1分

  6位・欧米選抜 4勝12敗

 プレーオフは12月15日に5位と6位の対戦があり、ウエスタン選抜が勝利。16日には準決勝として3位と2位、3位と1位がそれぞれ戦い、勝者が17日の優勝決定戦へ進出。そこで、レギュラーシーズン4位のイースタン選抜が、同じく3位の韓国を破って優勝しました。優勝決定戦の前に行われた3位決定戦では日本の社会人選抜が、台湾を下しています。よって上記の順位とはまったく違った並びになり、優勝が日本のイースタン選抜、準優勝は韓国、3位・日本の社会人選抜、4位・台湾、5位と6位はそのままです。

 では関西国際空港から鳴尾浜へ戻ってきて、建物の中へ運んだ荷物をまだ開く前の3選手に話を聞いています。順にご紹介しましょう。

台湾で試せた“サイドスロー”

 【守屋功輝投手】

 5試合(うち先発が3試合) 0勝3敗

 17回 失点15(自責5) 防御率2.65

 安打17 三振16 四球6、死球2

 

これは、ことし5月の守屋投手です。もう少し腕が下がっているんでしょうか。確認は来年になりますね。
これは、ことし5月の守屋投手です。もう少し腕が下がっているんでしょうか。確認は来年になりますね。

 リーグ開幕の11月25日に24歳となった守屋投手ですが、台湾でお祝いをしてもらったかと聞いたら「誕生日だったことは忘れていました。竹安に『おめでとうございます』って言ってもらっただけです(笑)」という返事。そうなんですね。まあ奥さんからメッセージはあったでしょうけど。

 ではウインターリーグを振り返ってください。「(サイドスローに挑戦するということで)台湾に行かせてもらって、成績はあんまり残せなかったんですけど課題はしっかりわかったので、いい機会だったと思います」。課題とは?「ちょっと腕を下げたことで、フォークなどタテの変化がまだ“まばら”というか。ちゃんと落ちる時が少ないボールは、棒球になって長打される。そういうのが目立ったので、そのへんが一番の課題だなと思いました」

 腕を下げたのは、どういうことから?「もともと下半身の使い方が横(回転)だったので、上半身も横にすればスムーズになるかなと。(ファーム監督の)矢野さんとも話をしていて、いい機会だから台湾でやってみたらどうや?という感じです」。それを実戦で試せたのは大きいですね。しかも、ことしのうちに。「はい!」

 変えたフォームの手応えを聞かれ「ちょっと力んでしまうと上から投げたりしちゃうんですけど、ランナーなしとか、そんなに力まない状態で軽く投げてもファウルを取れたり。まあバッターのレベルもあると思いますが、指にかかる感じは悪くなかったので、そこは継続していけたら」と答えています。

大量の荷物を一度に運び込もうと奮闘する守屋投手。顔を上げた写真が撮れなくて…すみません。
大量の荷物を一度に運び込もうと奮闘する守屋投手。顔を上げた写真が撮れなくて…すみません。

 ところで、横投げにしてみて右バッターの反応はどうですか?「今まで通り、嫌がっている感じはあります」。逆に左バッターは?「左はずっと課題で、サイドにしてもっと課題になると思うんですけど、フォークボールの精度が上がったりとか、変化球と真っすぐのコントロールがしっかりできれば。コントロールはしやすくなったと思うので、こっちの方がいいかなと」

 上半身と下半身の使い方を合わせたことで、真っすぐの威力は上がった?「竹安とキャッチボールしていて、上から投げる方がまだ球質はいいけど、(横からの方は)怖さがあるって言っていましたね。いいボールだとしてもバッターは打つので、怖さがある方がいいかなと思いますね」

 オフの間も投げ込む意向?「そうですね。ビデオなどで毎日確認して、自分のイメージと実際のフォームが一致していれば自分のものになっていくと思うので、そういう機会にしたいです」。年末年始は「クリスマスくらいから鈴鹿で、年明けは岡山で」自主トレをする予定だと話していました。

「やっぱり打てないといけない」

 【長坂拳弥選手】

 13試合 打率.194

 (スタメン10試合、うち捕手では6試合)

 31打数6安打2打点 二塁打1

 三振7 四球4、死球2 犠打1

今年の夏、とある野球教室で笑顔を見せる長坂選手です。
今年の夏、とある野球教室で笑顔を見せる長坂選手です。

 初めてのウインターリーグ、振り返ってどうですか?「普通なら試合ができない時期に、1ヶ月間も試合ができたので、それは非常にいい経験になりました」。収穫はあった?「この時期まで実戦ができたので、(こっちに)残って練習しているメンバーよりも実戦感覚という部分は長くできた。これを来年2月のキャンプにしっかり生かしたいと思います」

 他チームのピッチャーと組んで、何か気づいたことは?「うちのピッチャーよりもいいところや、逆にうちのピッチャーの方がここはいいなって思うところとか色々あったので、これからそういうところをピッチャーと話しながらコミュニケーションをしっかり取っていきたいと思いましたね」

 年下ではありますが、オリックスの若月選手やソフトバンクの九鬼選手が出ている試合を見て、何か思ったことはある?「ほとんど試合を見てないんですよね、(出ていない時は)ブルペンにいたから。でも若月は体も強いしバッティングもいいし、九鬼もバッティングがいいので、やっぱり打てないといけないなって感じました」

これまた下を向いた写真ですみません。鳴尾浜に帰ってきて荷物を運ぶ長坂選手です。
これまた下を向いた写真ですみません。鳴尾浜に帰ってきて荷物を運ぶ長坂選手です。

 そのバッティングについて、初めてのピッチャーにどう対処していった?「初対戦のピッチャーばかりだったので、まずはストレートをしっかり打つ。タイミングを取ってストレートを打つことを意識していました」。手応えは?「そんなに打っていないので、というか全然打っていないので…手応えは特にないです」

 年末年始は地元で?と自主トレの予定を聞こうと思ったのですが「はい。地元に帰って、ゆっくりします」という返事が。この日の長坂選手は、とても疲れているように見えました。それで思わず「ゆっくり」という言葉が出てしまったんでしょうね。もう復活してトレーニングしているはずです!

来季への手応えと自信をお土産に

 【竹安大知投手】

 3試合(うち先発が2試合) 0勝2敗

 15回 失点3(自責2) 防御率1.20

 安打11 三振8 四球8

 最初に、髪の毛が伸びた?と聞かれ「いや、切ったんですよ。台湾で」と竹安投手。えっ、台湾で?「はい。台湾のシャンプーが最高でした!」。これには一同爆笑です。最高ってのはシャンプー液が?それとも腕が?「腕です」。なるほど、そんなに上手なシャンプーだったんですね。へえ~と感心していたら、寮長にも本人にも突っ込まれました。野球の話をしましょうと(笑)

 1か月弱のウインターリーグで得たものは?「ボールがだいぶ違って、ツーシームはいつもシュートになるんですけどカットしたりとか、フォークが全然落ちなかったりと苦労した部分もありましたが、そういう中でも他の真っすぐやスライダー、カーブなどでしっかりカウントを整えられたり、ある程度の結果が出たので、そこは新しい引き出しができたかなと思います」

これは10月のみやざきフェニックスリーグ、最終戦での竹安投手です。
これは10月のみやざきフェニックスリーグ、最終戦での竹安投手です。

 始まる前にテーマは持っていた?「ツーシームのあとの真っすぐと、フォークの精度を意識してやったんですけど…。まあなんせ、その2つがボールによってカットしてしまい、投げる機会がなかったから」。とはいえ、その話しぶりから手応えがあったというのはうかがえますね。「バッターのレベルが、まあ2軍とかそういう感じなので何とも言えないけど。みんな当たったら飛ぶバッターや、振る力がすごいバッターだったので、外国人対策じゃないですが、そういうのは大事だなと思いました」

 日本の統一球と比べて、どう違った?「ちょっと小さめで、柔らかくて、山の高さがあまりなかったり。1球1球、ボールによって差があるような感じ」。山が低いとツーシームのコントロールは難しかったでしょう?「そうですね。もう曲がり方が違っていたので、違う球種になった部分はありましたけど、後半ちょっとずつ使えました。徐々に修正しながら」

日本はいい国だと学びました

 それでも防御率1.20と、まずまずの数字だったと振られ「ほんとにストライク取りたいところで取れなかったり、苦しかったんですけどね。その中で踏ん張れたっていうのがよかったかな」と振り返る竹安投手。違うチームの選手と会話も?「キャッチャーだったら、(オリックスの)若月がやっぱり1軍を経験しているので、自分に何が足りないかとか、1軍と2軍のピッチャーの違いとか、そういう話はしました」

 監督やコーチ陣と話しての収穫はあった?「そうですね。台湾ではけっこう四球が多くなっているんですけど、タイプとして四死球を出しちゃいけないと思って簡単にストライクを取りにいくというか…フォアボールを出したくない思いがあったんです。でもソフトバンクのコーチの田之上(慶三郎)さんに『フォアボールを出してもゼロに抑えればいいから』と言ってもらいました。自分の中でその感覚がなかったので、それはよかったなと思います」

7月21日、甲子園でのウエスタン・ソフトバンク戦で、まず“プロ初勝利”を挙げた時の竹安投手。もう既に懐かしい?
7月21日、甲子園でのウエスタン・ソフトバンク戦で、まず“プロ初勝利”を挙げた時の竹安投手。もう既に懐かしい?

 1軍首脳陣からの期待が大きくなる来年、そこに向けてオフはどのように過ごしますか?「この期間も投げさせてもらったので、そのあとも休まずに投げていって、キャンプはどっちになるかわかりませんが、しっかりアピールするのと、体作りっていうところですかね。全部において、もうひと回り、ふた回り強くなるように頑張ります」

 本当にすごく自信に満ちた表情と話し方だと言われ「日本に帰ってきたのが嬉しいからですよ」と返して、また一同爆笑。そして「一番学んだのは、日本がいい国だったということです!」とキッパリ。なるほど、食事も含めていろいろと大変だったんでしょう。といいながら散髪はしたのね。安かった?「台湾で有名な、いいお店らしくて結構高いと言われて行ったんですけど、それでも3000円くらい」。最初と最後は髪の毛の話でした。仕上がりはなかなかいい感じですよ。冒頭の写真でご覧ください。

<掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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