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12戦無敗だったヘビー級を返り討ちにした196センチの34歳

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 2021年7月31日まで、マイケル・コフィーは12戦全勝9KOと負けを知らなかった。1986年6月17日生まれの35歳。決して若くはなく、世界タイトル挑戦が約束されるような選手ではなかった。とはいえ、戦績が示すようにFOXがメインイベンターに起用する存在ではあった。

 この日の対戦相手に選ばれたのは、同年代(1987年2月22日生まれ)で13勝(9KO)6敗1分けのジョニ―・ライズ。2連敗中であり、誰もがコフィーの勝利を予想した。

 しかし、ライズはゴング直後から積極的に手を出し、闘志でコフィーを上回る。時折放つ右ストレートがクリーンヒットすれば、大いに勝機はありそうだった。

 思いがけない展開に焦ったコフィーは、第2ラウンドにサウスポーにスイッチするが、ライズは柔軟に対応する。コツコツと右ストレートをヒットし、第5ラウンド2分32秒でストップ勝ちを収めた。

(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 FOXはもちろんボクシング界からも「ライズの勝利はフロックだ」という声が挙がり、両者はダイレクトリマッチにサインする。

 第1戦もそうだったが、コフィーはスロースターターで、相手を見ている時間が長い。リターンマッチの序盤も3ラウンドまではパンチの交換が非常に少なかった。

 ライズが試合を動かし始めたのは4回。自身の武器である右ストレートでペースを掴み、第6ラウンドにはコフィーの左目を腫れ上がらせて視界を奪う。

(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 そのままの流れを貫き、ライズは97-93、97-93、99-91で勝者となった。

 試合後、満面の笑みを浮かべた196センチの34歳は語った。

 「今夜の勝因は母親だ。『今夜はお前の忍耐力が試されているよ』とメールや電話で繰り返していた。その言葉は正しかったね。

 人生が変わったよ。ヘビー級の選手、全員の戦いぶりを見ている。誰とだって試合をするつもりだ」

(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 2連敗を喫したコフィーも次のようなコメントを出した。

 「彼の方がベターだった。最後の3ラウンドは左目が見えなかったな。言い訳はしないよ」

 愛嬌たっぷりのジョニ―・ライズは、人柄にも魅力を感じる。次は何を見せるだろうか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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