8割の小学生が「いい大学を卒業すると幸せになれる」という結果は喜ばしいことなのか
1月28日にベネッセ教育総合研究所が発表した調査結果によると、「いい大学を卒業すると幸せになれる」と考える小学生が9年前より17ポイント増えて78%にも達したという。かなり怖い結果だ、とおもう。
いい大学を卒業しただけで幸せになれるのなら、東京大学や京都大学を卒業した人たちの大部分は幸せになっていなくてはならないが、そうなっていない現実は多くの大人たちが承知しているはずだ。にもかかわらず多くの小学生が「いい大学を卒業すると幸せになれる」と考えているのは、現実を教えない大人たちの怠慢だ。
それ以上に引っかかるのは、「いい大学を卒業すると幸せになれる」と考える小学生たちの「幸せ」とはどんなものなのだろうか、ということである。いい大学を卒業すれば野球選手になれる、いい大学を卒業すればサッカー選手になれる、いい大学を卒業すればパイロットになれる、いい大学を卒業すれば売れるタレントになれる、いい大学を卒業すれば美男美女になれる、と考えているのだろうか。
そんわけはないだろう。いくら小学生でも、大学と野球選手やタレントが直結していないことはわかっているはずだ。
では、なぜ「幸せになれる」と考えるのだろうか。たぶん、「いい大学」の次には「いい会社」が続く発想なのだろう。いい大学を卒業したら、いい会社にはいれて、経済的に安定し、そうすれば安定した家庭も築ける、と考えているようにおもえる。
そんな人生を歩んできた大人はごまんといる。そういう大人たちに聞いてみたい。あなたは幸せですか、と。「幸せだ」と答える人が多ければ、8割近い小学生が「いい大学を卒業すると幸せになれる」と考えていることは喜ばしいことである。「いい大学」を目指して、ひたすら学力競争に打ち込む子どもたちの姿勢もまちがってはいないといえる。
逆に、学歴と幸せはイコールではない、と考える大人たちが多いとするならば、現在の子どもたちの認識は誤っていることになる。それなら、学歴よりも幸せになれるものを、子どもたちに教える必要もあるだろう。
ただ、それを教えられない大人が、どれくらいいるだろうか。かなり少数なのではないのだろうか。幸せを明確に説明できる大人が少ないのでは、こどもたちが幸せを理解できるはずがない。夢も語れない子どもたちが多くなる原因も、ここにある。
8割近くの小学生が「いい大学を卒業すれば幸せになれる」と考えている現実は、社会としては貧困である。いい大学を幸せへの門と考える小学生が増えることは受験業界的には喜ばしいことなのだろうが、社会の豊かさという意味では、かなり怖いことでしかない。