女性仮面ライダーに変身した意外な女優たち
『仮面ライダーリバイス』で主人公の仮面ライダーリバイ=五十嵐一輝の妹・さくらが、仮面ライダージャンヌに変身した。『仮面ライダー』シリーズは昨年が50周年。女性ライダーは20年前の2002年に初登場し、近年では毎作品に出ている。どんな女優が演じてきたのかピックアップする。
最初の女性ライダーを20年前に演じた美人女優
シリーズ史上、初めての女性ライダーは『仮面ライダー龍騎』(2002年)の劇場版『EPISODE FINAL』に登場した仮面ライダーファム。変身したのは加藤夏希だった。
小5でゲームメーカーのイメージガールとなったのをきっかけに芸能界入り。大人びた美貌で注目を浴びて、1999年に『仮面ライダー』と同じ東映作品のリメイク『燃えろ!!ロボコン』のヒロイン・ロビーナ役で女優デビュー。2001年には人気ホラーマンガが原作の映画『エコエコアザラク』で主人公の黒井ミサを演じた。
『龍騎』は13人の仮面ライダーが自分の望みを叶えるために争い合う異色のストーリー。劇場版で登場したファムは、加藤が演じた霧島美穂が変身した。姉を殺した麻倉威=仮面ライダー王蛇への復讐と姉を蘇らせるために争いに参戦し、王蛇は倒したものの、その後の戦いで命を落とし、願いは叶えられなかった。
加藤は以後、『ヤンキー母校に帰る』での市原隼人らと並ぶメイン生徒や、『花より男子2』での道明寺司(松本潤)の婚約者の財閥令嬢・大河原滋役などを演じている。2014年に結婚。2020年にツイッターで、『鬼滅の刃』にハマった4歳の長女に「ママ仮面ライダーなんだよ」と自慢したところ、「ねづこがすきー」などとスルーされた話を綴っていた。
今やベテラン実力派の『あな番』女優も変身
『仮面ライダー剣』(2004年)の劇場版『MISSING ACE』でも、三津谷葉子が仮面ライダーラルクに変身した。TVシリーズでは、『仮面ライダー555』(2003年)で人類の進化種族・オルフェノクは変身資格を持つ設定のもと、3人の女優が1話ずつ変身。和香が仮面ライダーカイザ、河西りえと斉藤麻衣が仮面ライダーデルタになっている。
そして、修行により“鬼”となった人間が魔化魍(まかもう)と呼ばれる妖怪と戦う『仮面ライダー響鬼』(2005年)では、今やベテラン女優の片岡礼子が変身した。
1993年にデビューし、『KAMIKAZE TAXI』、『鬼火』、そして『ハッシュ!』などで映画賞を受賞している実力派。近年では、『あなたの番です』の殺されて右脚がゴルフバックで夫に送られた主婦や、『ナイト・ドクター』の波瑠が演じた主人公の母親などを演じている。
『響鬼』に出演したのは33歳のときで、演じたシュキはかつて何人もの弟子を育てた鬼という役どころ。30代に見える外見は呪術によるもので、実年齢はおばあさんの域とのことだった。
両親の命を奪った魔化魍・ノツゴとの戦いで暴走し、鬼の組織を追放されていたが、再びノツゴが現れて仮面ライダー朱鬼に変身。弟子だった斬鬼と共にノツゴを倒すが、自らも息を引き取った。
モデルから女優デビューしてヒロインに
『仮面ライダーキバ』(2008年)では、高橋メアリージュンの妹・高橋ユウが変身している。176cmの長身で『Cawaii!』の専属モデルを務め、『キバ』が女優デビュー作だった。
現代編と過去編が交錯する展開の中で、演じたのは過去編のヒロイン・麻生ゆり。魔族のファンガイアと戦うハンターだった。後半で母親の開発したシステムを使い、仮面ライダーイクサへの変身に成功した。
平成仮面ライダーシリーズ10周年記念作品『仮面ライダーディケイド』(2009年)でヒロインの光夏海を演じたのは森カンナ。高橋と同じくモデル活動をしていて、この作品が本格的な女優業のスタートとなった。
ディケイドに変身する門矢士と共に、他の仮面ライダーが存在する9つの並行世界を旅する役回り。やさしい性格で誰にでも敬語で接するキャラクターだった。
変身したのは劇場版の『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』。世界の破壊者となったディケイドを止めようと仮面ライダーキバーラとなり、サーベルを使って戦って倒す。その後、復活したディケイドや他のライダーたちと共に敵に立ち向かった。
森はのちに『ショムニ2013』や『いつかティファニーで朝食を』でメインキャストを務めるなど、女優として地歩を固める。昨年は『プロミス・シンデレラ』に、二階堂ふみが演じる主人公にキツく当たる旅館の仲居役で出演していた。
ハロプロの人気アイドルだった真野恵里菜も
福士蒼汰が初主演した『仮面ライダーフォーゼ』(2011)では、劇場版『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』にて、人気アイドルだった真野恵里菜が変身して話題を呼んだ。
2009年にモーニング娘。らが属するハロー!プロジェクトから7年ぶりにソロでデビューした真野は、女優活動も並行。『SPEC』の人の心を読むサトリ役が評判に。『フォーゼ&オーズ』で演じた美咲撫子は、空から降ってきて主人公の如月弦太朗に抱き止められ、派手に登場。実は宇宙生命が女子高生の姿をトレースした存在だった。
最初は感情や意志が見られなかったが、弦太朗らと行動を共にするうちに、人間らしさを身に付けていく。仮面ライダーなでしこに変身して戦うと、フォーゼに匹敵する強さを見せつつ、遊んではしゃいでいるようでもあって、動きに女の子らしさも見せた。
昨年動画で公開された『フォーゼ』の10周年記念インタビューで、真野は「変身シーンが一番緊張しました」と話している。「ノールックでベルトのボタンを押さないといけなくて、うまくいかなくて焦りました。でも、ポーズを構えると『私、キマってる』みたいな」とのこと。
アフレコでは「えいえいえい!」「おりゃー!」「なでしこキーック」といった声を入れ、「戦っていても無邪気で明るいことを大事にしました」という。演技も含めアイドルらしさを存分に活かしていた。
真野は2013年にハロプロを卒業し、女優業に重点をシフト。『逃げるは恥だが役に立つ』での元ヤンのシングルマザー・やっさん役などで活躍した。2018年にはサッカー日本代表の柴崎岳(ヘタフェCF)と結婚。以来、スペインで生活している。
平成後半にはTVシリーズでも続々と
劇場版を彩ることが多かった女性ライダーだが、平成の後半にはTVシリーズでも『仮面ライダーウィザード』(2012年)の中山絵梨奈が変身した仮面ライダーメイジ、『仮面ライダー鎧武』(2013年)の佃井皆美が変身した仮面ライダーマリカなど、登場が増えていく。
『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)では松田るかが演じたポッピーピポパポが、26話で仮面ライダーポッピーに変身。ポッピーピポパポはバグスターと呼ばれるゲームウイルスの完全体で、普段は人間の姿で看護師として働いていた。洗脳されてエグゼイドらと敵対するホッピーに変身するが、リプログラミングされて再び共に戦う仲間となった。
地元・沖縄でのタレント活動を経て上京した松田は、『エグゼイド』で全国的な注目を浴びる。ドラマから映画と展開した『賭ケグルイ』シリーズや朝ドラ『スカーレット』などに出演とステップアップ。3月には主演映画『あしやのきゅうしょく』が公開される。
『おしゃれクリップ』井桁弘恵は初めてスタートから
平成最後の作品となった『仮面ライダージオウ』(2018年)では、大幡しえりが演じた未来人・ツクヨミが、終盤に仮面ライダーツクヨミに変身。そして、令和最初の作品『仮面ライダーゼロワン』(2019年)でも、井桁弘恵が演じたヒロインの刃唯阿が仮面ライダーバルキリーに変身している。スタートからレギュラーで登場する女性ライダーは史上初だった。
井桁は2018年に広瀬すず、新木優子、吉岡里帆らに続く『ゼクシィ』の11代目CMガールを務めていたが、ドラマでは初の大役。オーディションでは「変身するとは全然聞いてなかった」そうだ。
刃唯阿は特務機関の技術顧問で、頭脳も戦闘能力も優れているキャラクター。身長170cmで早稲田大学出身の井桁に似つかわしかったが、自身は物腰が柔らかいタイプ。厳格な女性役に、当時「声のトーン、ビシッとした姿勢、目が笑ってないことを意識してます」と語っていた。
変身シーンは「(アイテムの)プログライズキーをスムーズに回して、ボタンを押すときに上下反転しないように止めるのが難しい」と、家でも現場でも練習を繰り返したという。
『ゼロワン』以後は、ドラマ『お耳に合いましたら。』にメインキャストで出演したりと活動を広げ、現在は『おしゃれクリップ』で山崎育三郎と共にMCも務めている。
国民的美少女もアクションに取り組み戦う
令和では続く『仮面ライダーセイバー』(2020年)でも、計13人登場したライダーの1人、仮面ライダーサーベラに変身する神代玲花をドラマ初出演のアンジェラ芽衣が演じた。そして、放送中の『仮面ライダーリバイス』では井本彩花が仮面ライダージャンヌに変身と、3作とも女性ライダーが登場している。
井本が演じる五十嵐さくらは、空手が得意な女子高生。当初から生身で敵の戦闘員的なギフジュニアと渡り合っていたが、12話で兄2人に続いて変身を果たした。
現在18歳の井本は、米倉涼子、上戸彩、武井咲らを輩出した『全日本国民的美少女コンテスト』の第15回(2017年)グランプリ。清楚なイメージで、運動は得意でないそうだが、『リバイス』でアクションに取り組むうちに「感情を込めると怒りも発散できて楽しくなったきました」と語っていた。
変身については「『仮面ライダー』の歴史に名前を刻めて感無量です」という。14話では学校に怪人が現れ、やむなくクラスメイトの前で変身し、「女子高生をなめんなよ!」とタンカを切るシーンもあった。
今後の時代の流れで、メインの仮面ライダーが女性という作品もできるかもしれない。
広瀬アリスも女性戦士だった
ところで、“仮面ライダー”の範ちゅうには入らないが、初の女性戦士ということなら、昭和に遡り『仮面ライダーストロンガー』(1975年)の電波人間タックルがいる。岡田京子という女優が演じた岬ユリ子が変身。ストロンガーと共に戦ったが、戦闘能力は低かった。30話でウルトラサイクロンという技で敵と相討ちになり命を絶っている。
この電波人間タックルが四半世紀を経て、『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』に登場した。変身する岬ユリコを演じたのは、当時14歳の広瀬アリスだった。居場所を探して門矢士と行動を共にしていたが、実はすでに命を失っていて、魂が実体化した存在だった。オリジナルのタックル同様、仇敵との戦いでウルトラサイクロンを使って光夏海を守り、笑顔で消滅した。
広瀬は公開前年の2009年に『Seventeen』の専属モデルになったばかりで、演技経験は少なかった。ちなみに、4歳下の妹の広瀬すずはデビュー前。
その後、すずの後塵を拝する時期もあったが、幅広い演技力で着実に台頭。朝ドラ『わろてんか』で旅芸人から女優になる役を演じ、映画『氷菓』や『巫女っちゃけん。』などでヒロイン。近年もドラマ『ラジエーションハウス』や『知ってるワイフ』などで印象を残しているほか、『ジョージア』ほかCMにも多数出演している。
その中で特撮ものへの出演は以後なく、タックルを演じたこともあまり知られていない。それだけに『W&ディケイド』はお宝でもある。