アマゾン、ネット通販平常化で多額の出費覚悟、対策に4300億円
新型コロナウイルス感染拡大の影響で混乱が生じていた米アマゾン・ドット・コムの電子商取引(EC)サービスは、徐々に平常に戻りつつあるようだ。
入荷制限を解除
同社の物流施設では3月中旬から一時的な入荷制限措置をとっていた。自宅待機の広がりでEC需要が急増し、同社の物流業務は逼迫していた。
その対策として、商品の保管と配送などの業務を代行する出品者向けのサービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」で、需要が高い生活必需品などを優先して入荷する措置をとった。
対象は、食料品や医療用品、ベビー用品、健康・美容用品、家庭用品、ペット用品など。これら以外の多くの商品を「不要不急」とみなし、入荷制限した。
こうした措置が、数多くの小規模小売業者を窮地に追い込んだ。衣料品や家電、旅行用品、玩具などを販売している業者は倉庫への入荷ができなくなり、預けた在庫がなくなった時点で、アマゾンでの商売がストップした。
これにより、多くの業者は人件費などの削減を余儀なくされ、従業員の一時帰休を実施したり、一時解雇に踏み込んだりする業者も現れたと伝えられた。
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しかし、米CNBCによると、アマゾンは5月9日から出品者に対し、入荷制限の解除を通知し始めた。これまでFBAで「Limited Restock(補充制限)」に指定した商品も指定を解除。数量制限も撤廃し、出品者は自社商品を好きなだけアマゾンの倉庫に預けられるようになったという。
顧客に購入削減促す異例の措置
また、アマゾンは、顧客に購入量を減らすように促す異例の措置をとった。米ウォールストリート・ジャーナルによると、同社は3月から大半の商品を対象に類似商品の推奨表示を中止した。
今年は母の日や父の日の販売促進キャンペーンを見合わせ、毎年7月に開催している会員向け大型セール「プライムデー」の無期限延期も決めたと同紙は報じた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で注文が殺到する中、物流負担の軽減を図っているという。
ECサイトの各サービスも再開
しかし、CNBCによると、こうした対策も徐々に緩和されつつある。アマゾンの米国サイトでは、これまで一時中止していた特売コーナーや割引きクーポン、類似商品の推奨表示などが再開した。食品や日用品のまとめ買いサービス「パントリー」は3月に一時停止したが、こちらも通常に戻ったという。
アマゾンは、プライム会員向けの生鮮食料品配達サービス「Amazon Fresh」の新規登録をしばらく制限していた。今は8割の顧客が、順番を待つことなく利用できるようになった。また、これまであった配送遅延も、完全ではないものの、徐々に解消しつつあると、CNBCは伝えている。
アマゾンは、こうしたECサービスの平常化に、多額の資金を投じる計画だ。ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は先の決算発表の電話会見で、4〜6月期は新型コロナウイルス対策に40億ドル(約4300億円)を使うと述べていた。
従業員の賃金増加分や、マスクの購入費用、施設の消毒・洗浄費用、新型コロナの検査設備・運用費用などに充てるという。
また、物流施設では物理的距離を確保するソーシャル・ディスタンシングを励行しており、業務効率が低下している。これにかかる費用もこの経費で賄うとしている。
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- (このコラムは「JBpress」2020年5月15日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)