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チャップマンは新天地でクローザーに返り咲くことができるのか。1年375万ドルでロイヤルズ入団

宇根夏樹ベースボール・ライター
アロルディス・チャップマン Aug 19, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、ニューヨーク・ヤンキースからFAになったアロルディス・チャップマンは、カンザスシティ・ロイヤルズに入団するようだ。MLB.comのマーク・フェインサンドが、1年375万ドルで合意と報じている。この契約には、最高400万ドルのパフォーマンス・ボーナス(出来高)がつくという。

 2012~21年の10シーズンに、チャップマンが記録した305セーブは、ケンリー・ジャンセン(現ボストン・レッドソックス)の341セーブとクレイグ・キンブレル(現フィラデルフィア・フィリーズ)の325セーブに次ぐ。このスパンに250セーブ以上は、彼らの他にいない。ちなみに、ジャンセンとキンブレルも、今オフにFAになり、それぞれ、2年3200万ドルと1年1000万ドルの契約を手にした。

 3人とも、年齢はほとんど変わらない。2023年のシーズン年齢(6月30日時点)は、いずれも35歳だ。ただ、ジャンセンとキンブレルとは違い、昨年、チャップマンは20セーブに届かなかった。それどころか、二桁にも達しなかった。5月下旬に故障者リストへ入り、7月上旬に復帰後は中継ぎとして投げた。

 チャップマンがクローザーに戻れなかった最大の要因は、クレイ・ホームズの台頭ではない。チャップマンがかつての投球をしていれば、不在の間にホームズが好投しても、クローザーの交代は起きなかったに違いない。

 離脱する直前の5登板とも、チャップマンは点を取られた。球速は上がらず、奪三振率も低下していた。

 昨年、チャップマンは、奪三振率のキャリア・ワーストを大幅に更新した。それまで、12.30を下回ったシーズンは一度もなかったが、10.65にとどまった。スタットキャストによると、4シームの平均97.5マイルは、13シーズンのなかで最も遅い。また、与四球率6.94はキャリアで2番目に高く、2011年の7.38と2021年の6.07の間に位置した。2シーズン続けて6.00以上ということだ。

 順当にいけば、チャップマンは、クローザーのスコット・バーローにつなぐセットアッパーとして、開幕を迎えるだろう。30歳のバーローは、ここ2シーズンとも防御率2.50未満を記録している。2021年は16セーブと14ホールド、2022年は24セーブと6ホールドだ。

 とはいえ、バーローは、全盛期のチャップマンのような、不動のクローザーではない。昨年のシーズン序盤は、バーローとジョシュ・スターモントの「2人体制」のような形だった。

 バーローが調子を落とした場合、代わってクローザーを務める候補には、26歳のディラン・コールマンや29歳のスターモントもいるが、その筆頭はチャップマンではないだろうか。ちなみに、判断材料とはならないが、通算セーブは、バーローが43、コールマンが0、スターモントが8、チャップマンは315だ。

 フェインサンドによると、マイアミ・マーリンズとサンディエゴ・パドレスも、チャップマンに興味を示していたという。チャップマンがロイヤルズでクローザーとして投げるチャンスは、マーリンズと比べると微妙な気もするが、少なくともパドレスよりは上だろう。パドレスには、ジョシュ・ヘイダーロベルト・スアレスがいる。

 チャップマンがクローザーに返り咲けば、夏場以降は違うチームで投げている可能性も高い。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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