統一教会問題まだある論点 教団の「反日思想」 原語資料にある"これだけの証拠"
日々、日本のメディア報道を眺めながら統一教会の韓国語の資料を原語で読み解いている。
最近では「ミヤネ屋」出演陣のこういったコメントが印象的だ。
◆鈴木エイト氏
「統一教会は当初から反日思想を隠して日本政府に接近していた」
◆霊感商法対策連絡会 阿部克臣弁護士
「統一教会は、表向きは保守的な教義を掲げて自民党に接近しているが、本質は反日的な教義、この点を日本の政治家は理解していない」
◆デーブ・スペクター氏
「70%が日本の献金など日本人が(韓国の)喰い物になり犠牲になっている。変なのは保守を売り物にしている自民党が(統一教会との関係を)平気でいられるとすれば矛盾してるし、政治家としてのスタンスを疑いたくなる」
反日的。
確かに教会の韓国語関連サイト、韓国語語公式資料を読み込んでいくと、新たにそういった言及を目にするようになってきた。もちろん、日本や自民党に関する幾多の言及のなかのほんの一部なのだが、確かに存在する。
※統一教会の本部のある韓国のメディアでは一般的に、1997年の教団名称変更後も「教義に変化なし」として「統一教」の名称が使われています。本稿はこれに倣い「統一教会」の表記を用います。
Webまんがで「日本は怨讐の国」
最もストレートなものは、教団の公式資料を電子書籍などで扱う「鮮鶴歴史変遷苑」で見つけられる。そこに掲載されるウェブマンガ「つながり」の第4話「真の御父母様の日本訪問2」にある。
1965年1月28日、文鮮明氏が教祖として初めて日本を訪れ宣教活動を行った。本人の留学時代以来21年ぶりだったという。その際に、日本の若い高校生が姉のすすめで信者になっていく、というストーリーだ。
主人公「(文鮮明先生は)本当に日本をイブの国として選ぶ考えなのか?」
韓国がアダムで、日本がイブ。
イブは禁断の果実をかじる、という罪を犯した。つまり1910年から45年までの植民地統治だ。Webマンガは文鮮明氏本人が「なぜが日本を訪問したのか」という説明へと続く。
文鮮明氏「日本は一神教を定着させられなかった」
「何より日本は…」
「韓国の怨讐となった国だ…」
そして高校生の前でこう宣言した。
「(しかし)心配しないでください。私が日本をイヴの国として育てます」
「日本を育てる」あるいは「自民党を育てる」。これは他の韓国語文献にも出てくる表現だ(詳細は文末に)。
日本は「教育するしかない」
続いては、2007年に教団の韓国信者を前に行われた話。
文鮮明先生みことば選集 568 - 5.
イブ国家日本の責任と使命
2007.07.13 (金) 韓国京畿道加平天正宮(教団本部施設)
冒頭で日本から韓国を訪れた、という信者が文氏に敬拝。その後「日本から来ました」「(教団が韓国で主催したサッカー国際大会「ピースカップ」を機に訪韓)」と報告する様子が記されている。それに対し文氏は「日本から来たのですか?」「何人来たんですか?」と。その後本文が始まる。
日本の伝統的思想の観点からは、歓迎しません。日本と韓国を中心として、歴史的な伝統から見た時、(ふたつの国は)合いません。すべてが恨みや、敵対関係になってしまいます。だとしたら、これをどうまとめていかなくてはならないのか。これが問題です。
伝統的思想、というのは「韓国と日本の敵対関係を生んだもの」。これは日本のかつての「軍国主義」か。
文氏による07年7月の話はこう続いていく。
それでは日本という国が、韓国という国で敵となっているなか、韓国に対する感情を解き、米国に対する感情を解くためには何をもって…何をもってこれを解くことができるかです。
それは教育しかありません、教育。どんな教育? 私たち(統一教会)の原則のみしかないということです。原理のみことばを中心に教育を急がなければならないのです。
日本を教育せねばならない。これは筆者がここまで紹介してきた自民党に対する姿勢にも出てきている。反共運動団体「勝共連合」は、共産主義に対抗することで「韓国と日本が手を合わせなくてはならない」という思想。日本が植民地支配という罪を犯したが、教団側はそれでも手を差し伸べてやり、共に反共運動を"教えてやる"という一面もあった。
自民党と統一教会 韓国からの証言① 教祖は言った「また選挙を助けてほしいと頼まれた」
自民党と統一教会 韓国からの証言② 「若い日本人信者が熾烈な手段で協力」「自民党には金を使うべき」
当時の話はさらにこう続いた。
これからの問題は何ですか? 国を建てなければなりません。韓国なら韓国の大統領選挙において私たちが旗手にならねばならず、日本の首相選挙(自民党総裁選)の旗手にならなければならず、米国大統領選挙の旗手にならなければならず、国連の事務総長選挙の旗手にならなくてはならないのです。それを誰がすべきか? 日本自体の皆さん(日本から来た信者)を中心として、日本の国を売っでてもこの仕事をしなければなりません。分かりましたか?
10日の会見で統一教会の日本側の田中富広会長は「政治に友好団体が強く姿勢を持って関わってきたことは事実です」といった。あくまで友好団体が、やったのだと。しかし韓国側のトップは教団側に「総裁選にまで影響を持ちなさい」と説いていたのだ。
「はい!」と返事をさせる 現場の日本人を"ターゲット"にする手法
日本人信者を前に出し、"ターゲットにする"という講演は、別の場所でも行われていた。
文氏が世界を巡回していた2000年5月9日、ブラジルのパンタナルアメリカーノホテルで話した内容が「文鮮明先生みことば選集 321 - 10. 祖国光復のためのイブの使命」として収録されている。
ここでは「カミヤマ」という日本人が登場する。これは日本の統一教会の2代目会長であり、名誉会長であった神山威氏(2016年没)と思われる。
(文鮮明氏)国がないんです。わかりますか?
(神山氏)「はい」
(文氏)「祖国(チョグク)!」 言ってみてください。
(神山氏)「祖国(チョグク)!」
(文氏)光復(植民地支配からの解放)なんです。
冒頭の文脈の後、文氏は突如日本語で話を始めたという。
これは日本の言葉でいうと、王政復古です。明治時代にそれがダメだったらからといって、いまさらイブ国家の責任がないと言えるでしょうか。明治維新の時から裕仁天皇の時代まで、120年間でしょう?。その120年間(日本が)サタンを完全に否定しなければならない立場(悪魔の存在に気づかないふりをしていた立場)にあったことを、先生が(1958年の日本支部設立から2000年までの)40年間で世界的な基準まで引き上げました。その最後の段階が、今行っている「母の40カ国巡回講演」です。
明治維新のはじまりは(諸説あるが)およそ1868年。そこから120年といえば、1989年1月7日の昭和天皇の崩御まで。その間の日本は統一教会の教義からいって「間違っていた」。だから救ってやったのだと。
ブラジルでのスピーチはこう続いた。
そのような風潮が日本で盛り上がってきたのですが、その間違った思想を「自分たちのためになるもの」として、(朝鮮半島で)盗みを働いていてきました。悪魔より悪いんです。その土地に足を踏み入れ(植民地統治)、その地の所有物を食い散らかして生きるというのは恥ずかしいことです。(然るべき)時が来たら、すべて燃えて消えなければなりません。わかりますか? どういう意味ですか?
(文氏)神山!
(神山氏)「はい!」
注:原書でも「はい」の音がハングル文字表記されている
(文氏)日本は行き場がないのだ。日本はどこに行く? これまでのように統一教会の文先生に反対してどこに行くというのか。国家のメシアが苦労した基準を中心に据え、再救援を望んでいるということを、神山が知らないとダメだ。
国家のメシアとは文鮮明氏自らのこと。苦労した基準とは、日本統治時代に受けた拷問を含め、これまで宗教団体を率いてきた苦労のことを指すのだろう。
日本による植民地統治は最初の罪。その後、文氏に反対するのがふたつめの罪。だから「再救援」が必要ということか。
- 1998年8月(本稿で紹介したものとは別の機会で)、ブラジルにて講演する文鮮明氏
ブラジルでの講演はこう続く。
(文氏)このように日本の人々を底まで押し込むのは、再び日本を祝福してあげるためだ。わかる?
(神山氏)「はい」
日本が(教団に対して)建国献金をした分も南米に送るんだ。それで未来の子孫のために準備しなければならないのだ。わかる?
「はい」
日本は韓国に対して歴史的間違いを犯した国。だからそこまで押し込み、救う。そういう話だ。ちなみに「建国献金」とは教団に向けた献金の一種。
「東亜日報」によれば、教団側は1999年12月1日に「新時代新1000年を迎える特別誠心」というタイトルでプレスリリースを発行。献金の種類をこう伝えたこともある。
▲總生祝献金
▲天主勝利祝賀献金
▲總蕩減献金
▲救国献金
▲定州平和公園造成基金※
▲建国基金
※定州(チョンジュ)=北朝鮮平安南道の文鮮明氏の故郷。
教団側は自民党に「言いたい放題」
連日報じられている自民党と統一教会の関係性。一義的な問題は「献金や霊感商法などの反社会的と接点があった」という点だ。
しかしいっぽうで、教団の資料を韓国語で読み解いていくうちに、また別の怒りのようなものが湧いてくる。
「日本がカモにされている」
本稿タイトルで「反日」と打ちながら矛盾しているが、韓国側の反日を責めようという話ではない。それこそ思想の自由。なくなることはないだろうし。同じく「宗教」や「保守」についてここであれこれいう考えもない。
問題は「自民党側が"反日"の背景を知らず」「関わってきた」こと。保守といわれ、政権に携わった政治家たちが、だ。
「祝電を送りました」
「2万円払いました」
「パーティーに行きました」
こういったここ数年での表面的な話もさることながら、歴史的にどう関わってきたのかという「深度」。この点も重要な論点。
韓国では一連の自民党と統一教会の関連性を「統一教会ゲート」という言葉で報じている。「ゲート」とはアメリカの1970年代の「ウォーターゲート事件」以来の接尾語で「政治事件全般」を言い表すものだ。
いっぽう、直近の韓国で「ゲート」といえば「チェ・スンシルゲート」。朴槿恵大統領が旧友に対し、政治決定を相談していたというスキャンダルだ。「国政壟断」という言葉も使われた。
自民党と統一教会、両者の関係全容解明とは「どれほど深く関わったか」という点を明らかにすることにある。「政策決定に関わるような深い関わりが歴史上あったのか」。そういったことがない、というのなら「ない」と証拠を示していかないと。
何せ統一教会側は言いたい放題なのだ。自民党を「教育している」「選挙協力を頼まれた」「次の総裁を選んでいる」「何人を当選させた」「日本の統一教会会長を自民党が車で迎えに来た」などなどだ。
日本の中心に影響を及ぼすために、日本の自民党幹部をすでにまとめています。教育するんです。毎週土曜日にセミナーを開いています(1980年)
今回も自民党から自分たちを推してほしいという要請が入ってきました。「私達の助けを得ようとするのなら4つの条件を受け入れるようにしろ」と(日本側の)久保木協会長に指示しました(1980年)
選挙後、自民党総裁が車を遣わせて(当時の日本支部代表)久保木修己会長を招待し、幹部全員の前で統一教会を紹介するということが行われた(1974年)
「今後の日本の今後の総理を誰にさせるのかという問題も、私が今議論しています」(1997年)
安倍さんが当時選挙をやった時、会派の議員数が13人しかいなかったんっですよ。それを88人まですべて教育して育ててやったんです(1993年)
(了)