Yahoo!ニュース

K-POP日本人メンバー MASHIRO(MADEIN)の横顔 「渋め韓国料理」「旧友はJYPで…」

筆者撮影

近頃、K-POPの現場を韓国で取材していると、実感として強く感じることがある。

「ホントに日本人メンバーがいるのは当たり前」

10月下旬からおよそ1カ月ほど、韓国で現地取材を続けた。カムバックのラッシュがあったからだ。

その間、3つのグループのショーケース(新曲発表の記者会見)に出席、すべて韓国語で質問をしてみた。KISS OF LIFE、tripleS VV、BABYMONSTERだ。

うち2つの会見で日本人メンバーと顔を合わせた。こちらの質問に対して韓国語で返事をしてくれる。隔世の感。どのメンバーも若いのに堂々と韓国語で答えるから、その姿に驚く。そしてそれが世界に発信される。韓国経由で日本人メンバーの活躍が世界に伝わる時代になっているのだ。

------------
という訳で、近頃個人的に取材をしていてインパクトが強いこの点を伝えていく不定期連載「取材で接したK-POP日本人メンバー」を始めます。かなり不定期になると思いますがお許しください。

------------

第一弾はMASHIRO。

筆者撮影
筆者撮影


7月までKep1er(ケプラー)のメンバーとして活動し、9月からMADEIN(メイディン)のメンバーとして2回目のデビューを果たした。
1999年生まれ、東京都出身で本名は坂本舞白。10代の早い時期から日本で芸能活動を始め、17歳になる年の2016年に韓国大手事務所JYPの練習生オーディションに合格。その後2018年に同社を退社し、日本に戻っていたが、やはり韓国での活動を諦められず2021年に再度渡韓。

そんな彼女を取材する機会を得た。
都内・日比谷で行われたニッポン放送『NTT DOCOMO Studio & Live presents MASHIROのRISE UP RADIO』の収録現場にて。彼女が初めてスタートさせた冠ラジオ番組なのだという。

第一印象は「小さくて白くて細くて可憐」といったところだった。「大型」がもてはやされがちな韓国では、彼女のようなキャラクターが個性と捉えられるんだろうな、という点は想像に難くない。

いっぽう、しゃべり始めたらめちゃくちゃ力強かった。なにせ確固たる自分の世界を持っている。

日々、インスタを通じて「いい音楽をチェックしている」のだそう。画像・映像ではなくて、その背景に流れる流行りの音楽を楽しみにしていると。

「この曲とこのあの画像の雰囲気いいなって思ったら…自分もそうやってみようと。こういう写真撮った時に、この音楽使おうとか」

彼女はこれを「いい音楽を仕入れる」というオリジナルの表現で伝えていた。

筆者撮影
筆者撮影


一方、番組のなかではリスナーから「この番組にゲストで呼びたい人は?」と聞かれ、そのひとりに「Kep1erのヒカル」を挙げた。そのうえでこんな"心配事"も。

「もう日本語でしゃべる時にすごいきゃぴきゃぴしちゃって大丈夫かなっていう不安はある」

ということは韓国語で話す時の自分のキャラというのが少し違ったものだということ。その点、よく自分が認識できているんじゃないかと思わせたりもした。

自分の世界があり、かつ韓国にめちゃくちゃなじんでいる。そう感じさせたのが、「好きな韓国の食べ物は?」というリスナーからの質問が出た時だ。彼女はこう答えた。

「ナッコプセっていうホルモンとエビとタコが入った、なんか赤いちょっと辛い鍋みたいなのがあるんですけど、大好きなんです」

さすが。なかなか旅行者だと短い滞在期間ではチョイスしそうにない、ツウなところを突いてくる。釜山にルーツがあり、「孤独のグルメ」の主人公井之頭五郎が同地を訪れた際に食したメニューでもある。

「ナッ」が韓国語の「タコ(ナクチ)」の頭文字、同じく「コプ」は「ホルモン(コプチャン)」、「セ」は「エビ(セウ)」から来たもの。

しかも彼女、ナッコプセを説明するときに、一瞬日本語の「タコ」を思い出せない一幕もあった。取材の合間に話を聞くと「辛いの大好きなんです~」という。

筆者撮影
筆者撮影


そのキャリアを見るに「苦労人」のようにも見える。でも本人は10代中盤から10年近く過ごした韓国の地で揉まれながらも、かなりなじみつつ、自分の道を歩んでいる。そんなキャラクターを感じ取れた。

取材の調子に乗って韓国語で「日本の空港で『あー日本に来たな』と感じる瞬間は何ですか?」と聞いたら「入国審査がめっちゃ早いこと」とバチッと韓国語で返してきた。しかもめちゃくちゃ上手い。

こういう例えが正しいか分からないけど「相撲部屋の外国人力士が話すめちゃくちゃ上手い日本語」という感じ。幼くしてその語学の世界で揉まれているから、自然なのだ。

また、こちらから「先日、ソウルでKISSOFLIFEのショーケース、取材しましたよ」と伝えると「私、ナッティと仲が良いんです~」と喜んだ。ナッティとはそのKISS OF LIFEのタイ人メンバー。同じくJYPで練習生期間を過ごし、ともに同社ではデビューが叶わず、他社に移籍してそれを勝ち取った存在だ。

本人が「めちゃくちゃ尊敬する」と語るTWICEのミナ・サナ・モモがK-POP日本人メンバーの先駆者としてデビューして、来年で10年になる。MASHIROの姿を見るに、「ああK-POPの世界のなかで日本人メンバーはかなりしっかりと根を張っているんだな」と強く感じた。

初出=韓国トレンド研究所

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

吉崎エイジーニョの最近の記事