K-POP少女時代の名曲が「革命の歌」に!? 現地の”反尹錫悦集会”で歌われる歌詞の内容とは?
14日午後、尹錫悦大統領の弾劾訴追案が韓国国会で可決となった。
今後、判断は憲法裁判所に委ねられることになったが、韓国社会では弾劾を求める動きがより活発化していくだろうか。
そんな折、あるK-POPの楽曲が韓国で話題になっている。
少女時代のデビュー曲「Into The New World」(2007年8月)。
反尹錫悦大統領弾劾を訴える集会で歌われているのだ。現地通信社「聯合ニュース」がこう伝えている。
「『12・3非常戒厳事態』に端を発した尹錫悦大統領弾劾ろうそく集会で、若い世代に愛されるK-POPがデモの雰囲気を盛り上げる歌として浮上し、50代以上がこれを『猛勉強』する動きが広がっている」
この代表格が少女時代の「Into The New World」だ。韓国語題「タシ マンナン セゲ(再び出会う世界)」を省略して「タマンセ」とも呼ばれている。
SNS上では、こんなコメントが出ているという。
「13年前の歌を50代半ばのオジサンが弾劾集会を通じて知りました。今知ることができて嬉しいです」
「弾劾集会で歌おうと情報が入ってきて学んでいる60代の母親です。とても美しく、頼もしい若者たち、ありがとう」
これはいったい、どんな曲なのか。
尹大統領弾劾集会の象徴となっている歌詞
集会で主に歌われているのは、サビの後半部分からだ。 こんな内容が歌われている。
元々は「葛藤の多い少女たちが自分の道を見つけて、進む」といった内容の歌詞だった。少女時代は2007年当時、SMエンタテインメントから「全員高校生で構成されたチーム(2007年時点)」として売り出されていた。また「英語、中国語、日本語などの語学力はもちろん、将来的には歌手、映画俳優、タレント、MC、DJ、モデルなどさまざまな分野で活躍できる能力を持ったメンバーで構成されている」との触れ込みだった。
なぜこの曲が?
ではなぜ今、この楽曲なのか。 韓国でMZ世代と呼ばれる10代後半から30代前半が弾劾を訴える集会で歌っているのだが、彼女たちとて「リアルタイム」ではない。
ルーツはじつは2016年にある。朴槿恵前大統領の弾劾の運動が拡散したときのことだ。当時デモに参加した若い世代から「昔ながらの曲が運動に使われるのは嫌だ」という意見が出た。
そこで登場したのが「Into the world」だった。もちろん歌詞の「この世の中で繰り返される悲しみに今さようなら」というフレーズが「政権が変わって、新しい世界が開かれるように」という思いと重なった。当時、「ハンギョレ新聞」にコメントを寄せた音楽評論家も「女性が大勢で歌うと、また違った深みが生まれたように思う」と話していた。
この流れから、今回も歌われているのだ。さらにこの曲の歌詞が、今のZ世代にも合うのでは、と思わせる部分がある。
歌詞では「私たちの世界」ではなく、「私の世界」と歌う。韓国で毎年10月に刊行され、社会をトレンドという観点から論じるシリーズ「トレンドコリア」という書籍がある。同著は近年「個人の嗜好の細分化」をうたっている。かつては親族、家族、近所、学校などの集団に規定されていた価値観が、どんどん「私は私」という方向に向かっていると。前回の弾劾の集会から8年。くしくもそこが合致しているのではないか。
メンバーはどう思っているのか?
それにしても、アイドルの歌が政治に活用されるとは。本稿タイトルに「革命」と打ったが、大げさではない。2016年の朴槿恵大統領弾劾は、左派野党のなかでは「ろうそく革命」(ろうそくを掲げてのデモ・集会が続いたため)と呼ばれているのだ。
じつのところ、当のメンバーにはこれを応援する向きもある。 メンバーのユリは13日の弾劾支持集会に参加する若者たちのためにキンパ(韓国のりまき)をふるまったそうだ。
自分も弾劾に賛成。たっぷり食べて、お腹いっぱいになって歌ってほしい、と。