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さよなら「ジョージ」ハワイ固有種の最後のカタツムリ死す

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
ジョージと同じ種のカタツムリの図 (作者: William Swainson)

さよならジョージ

ガラパゴス島で発見されたピンタゾウガメの最後の一匹は「孤独のジョージ」という名称で親しまれました。ジョージは2012年に息を引き取り、これをもってピンタゾウガメも絶滅したと考えられています。

このカメから名付けられたのが、最後の一匹となったハワイ固有種のカタツムリでした。このカタツムリのジョージはマスコミなどで取り上げられ、ハワイの人々の間で親しまれていたようです。いわば、ハワイカタツムリ界のセレブといったところでしょうか。

しかし残念ながら、今年の1月1日にジョージが死んでしまったという悲報が入ってきました。年は14歳、カタツムリとしては大往生でした。

ジョージの祖先

ジョージはオアフ島固有のAchatinella apexfulvaという種のカタツムリでした。「黄色い先端」という意味を持つように、殻の上部が黄色く尖っているのが特徴的です。

ジョージの祖先は古くは1700年代の書物にも登場し、イギリス人探検家のジョージ・ディキンソンがハワイに訪れた時には、このカタツムリの殻を使ったレイで出迎えられたとの記録も残っています。

カタツムリ絶滅の理由

1800年代後半、ハワイには750を超える数多くのカタツムリの種が存在していたといいます。しかしながら現在はその数が激減しているのです。一体何故なのでしょう。

第一の理由は、1900年代にヨーロッパ人がカタツムリをコレクションとして大量に採取するようになったこと、そして第二は「ヤマヒタチオビ」と呼ばれる肉食性のカタツムリがハワイに持ち込まれたことです。

このヤマヒタチオビが持ち込まれた本来の目的は、外来種のアフリカマイマイを駆逐するためでした。しかしそううまくはいかず、逆にこの肉食カタツムリが、動きの鈍いジョージの祖先や、その他のハワイ固有のカタツムリを捕食してしまったのです。

さらに第三の理由は気候の変化です。近年ハワイの気温は上昇し、逆に降水量は減少しているというデータがあります。このため山火事が多く発生するようになり、生息地である森林が失われているのです。

こうした環境や気候の変化により、外来種が勢力を増し、逆にハワイ固有種の立場が危ぶまれています。

絶滅種の多いハワイ

画像元: U.S. Fish and Wildlife Service (撮影 Paul E. Baker?)
画像元: U.S. Fish and Wildlife Service (撮影 Paul E. Baker?)

ハワイは太平洋の中央に位置し、地球上で最も隔離された場所の一つですが、こうした自然豊かな楽園にも動植物の生存の危機が迫っています。

ハワイには数多くの絶滅危惧種がいて、意外にもアメリカ本土よりもかなり高い割合で絶滅種が出ていると報告されているのです。上の写真の鳥はマウイ島固有種のポオウリで、2004年に絶滅したと考えられています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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