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長野立てこもり事件 ホリエモンが主張する「逃げろ」が容疑者には届かない理由と、家族の悲しき末路

赤田太郎の仕事に役立つ心理学常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

みなさんこんにちは。仕事に役立つ心理学の赤田太郎です。

普段は大学教員として、また企業のカウンセリングなどを行ないながら、You Tubeインスタでこころの健康の大切さをSNSで発信しています。よろしければフォローをお願いします。

今回の記事では、長野立てこもり事件の容疑者に対してホリエモンが見解を述べたことについて取り上げて、それが容疑者には届かない理由と、家族の悲しき末路について、家族心理学の立場からお話したいと思います。

ホリエモンは正論を述べている

容疑者の実家は代々続く議員一家で、地域の見本となる一家で特殊な人間関係だったことは以前の記事でお伝えしました。

(参考)長野立てこもり事件「孤独をばかにされ」一方的に殺意 心理学者が分析する深層心理とは?

ホリエモンは自身のYou Tubeで、「逃げろ! 親父なんか大したことないからね、はっきり言って 」「とにかく逃げ出して親と一切連絡とるな。そうすると人生変わるから。今よりいいでしょ、自分で選択した道。不安なのかもしれないけどさ、だからといって人に迷惑かけんな。人殺しちゃだめよ、やっぱり。4人も殺しちゃったら死刑になるんだよ。死刑になるんだから自殺しろ、マジでって俺は思います。正直。でも自殺もダメよ。逃げろ、親の言うこと聞くな。人殺すな」と述べています。この意見は、私自身も全くそのとおりだと思います。

父親からレールを与えられて、そしてそのレール通りに進んでおればそれで良かったわけですが、本人なりに歩めない理由があってそのレールから外れてしまったわけです。

せっかく農園があって、ジェラート売って、本気になれば、真剣に向き合える環境があるのにも関わらず、興味がなかったのか、あるいは親が甘かったのか。

与えられた道が嫌ならば、それを蹴り飛ばして自分らしい道を歩めば良かったわけです。

しかし事件の調査が進むにつれて、青木容疑者の姿が見えてきました。それらを読み解くと、とてもではないですが逃げられる状況でないことが感じられます。

容疑者の詳細な人物像から見えてくるもの

地元の信濃毎日新聞が両親へのインタビューをもとに、容疑者の「31年の足跡」をたどった記事(5月29日付)から容疑者の人物像が見えてきました。

3人兄弟の長男として生まれた青木容疑者は幼少時は活発な子供だったようですが、母親によると幼稚園の園長から「多動児の傾向があるかもしれない」と言われたが、(父親の)正道さんは「子どもはそんなものだろう」と気にもとめなかったといいます。活発さは多動だったのかもしれません。

また、青木容疑者は小学校に進むと、父親の勧めで少年野球を始めるがあまり熱心に打ち込むことはなく、中学では成績が学年上位だっものの、高校に入ると3年間友達はいなかったといい、コミュニケーションを適切に取ることに難しさを抱えていように思わます。

発達的な偏りがあるなら、しかるべき支援を行うのことでコミュニケーションを取ることができるようになります。それに関わらず、父親がそのきっかけを摘んでしまったようです。家柄などを気にして子どもの支援を拒否する親は少なくなく、容疑者のような周りから注目されている家ではなおさら否定的に働きます。

一人ぼっちが続くとどうなりますか?私も耐えきれないでしょう。この状態は青木容疑者を精神的に苦しめたと思います。

もう一点気になることがあります。長野市内の予備校で1浪した後、青木容疑者は東海大学に進学します。実家を出て神奈川県内の寮で新生活をスタートさせますが、周囲に馴染めず、ほどなく都内のアパートでひとり暮らしを始めたようです。そして、この頃から電話しても連絡がつかなくなり、心配した両親が上京して様子を見に行くと、青木容疑者は「大学の仲間からぼっちとばかにされている」、「ここは盗聴されているから気をつけて」と、盗聴を恐れて携帯電話の電源を切っていたとのことです。さらに「部屋の隅に監視カメラがある」とも言い、ショックを受けた両親は容疑者を実家に連れ帰り、大学も中退することになりました。

この出来事は、精神疾患を疑わせる兆候です。このときに両親は病院の受診を勧めたようですが、青木容疑者は「俺は正常だ」と拒否したそう。この拒否することについても、その疑いを強くするものです。母親は、無理して受診させれば親子の信頼が切れないか、心配だったと話しており、それは当然のことだと思います。

本人も自身の置かれている状態を自覚がされることなく、親も専門家に支援を求めにくい状況。この2つの足かせは家族を苦しめたに違いありません。

家族の悲しき末路、それは支援者も同じ

みんなが思います。「 言い出せばいいよ、助けてほしいと。 」その一方で、支援者は支援してほしいと言い出しにくいこともよく知っています。また、発達的な支援は子どもが未成年のため保護者が同意しなければ基本的に実施することができません。だれも手足が出せない状況が続くのです。

なるべくそのような子どもが増えないように専門家は親を支援する訳ですが、親にも事情があり、ひとたび認めてしまうと家族が崩壊するケースもあります。「お父さんには内緒にしてほしい」そんなこともたくさんあるのです。

逃げ出せるなら自力で逃げ出せるし、その逃げ出せないしんどさがあるからこそ、悲劇はそこにあるのです。

記事を最後までお読みいただきありがとうございました。

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また次の記事でお会いしましょう。

常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

常葉大学(浜松)健康プロデュース学部心身マネジメント学科/常葉大学大学院健康科学研究科臨床心理学専攻 准教授。立命館大学/武庫川女子大学・大学院非常勤講師。働く人と家庭のメンタルヘルス・ストレス・トラウマが専門。働くみなさんにこころの健康の大切さを伝えるために、誰でもわかりやすい心理学をYouTube・Instagramで発信しています。

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