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猟友会が異例の「ヒグマ駆除拒否」報道で問われる北海道知事の責任 JR北海道ではクマとの衝突事故も増加

鉄道乗蔵鉄道ライター
ヒグマ(画像:【北海道】乗り物大好きチャンネル)

 筆者は、先日、日本屈指の極寒地帯を走るジェイ・アール北海道バス深名線の路線バスに深川―名寄間で乗り通したことは、記事(路線バス無料デーで訪れた「日本極寒の地」北海道・朱鞠内 鉄道廃止から約30年、人は減りお店も消えた)でも紹介したが、名寄から札幌に戻る特急宗谷号に乗ろうとしたところ、シカとの衝突があったということでおよそ20分遅れで稚内方面から名寄駅への到着となった。JR北海道の発表によると、昨今、シカだけではなくクマと列車との衝突事故も増加傾向だといい、昨年2023年度はシカとの衝突が3,145件に上ったほか、クマの発見・衝突についても71件発生している。筆者が乗車したバスが走る深川―名寄間の途中にある朱鞠内湖では2023年5月に釣り人がヒグマに襲われて死亡する事故が発生した。

 こうした状況の中で、北海道の獣害対策を揺るがしかねない事態が発生した。報道によると、北海道猟友会が自治体からのヒグマの駆除要請に原則として応じないよう、全71支部に通知する方向で最終調整を行っているという。この背景には、砂川市の要請でヒグマ駆除のために発砲したハンターと行政側のトラブルがあったようだ。発砲は警察官と砂川市の職員が立ち会い「どうしても駆除して欲しい」ということでヒグマに対して発砲したが、その後、北海道警察から付近の建物のある方向に撃ったことを問題視され、このハンターは鳥獣保護管理法違反などの疑いで書類送検され、北海道公安委員会から猟銃所持の許可を取り消された。

 ハンターの男性は、2020年5月に提訴し、2021年12月の1審では男性の訴えが全面的に認められたものの、道公安委員会はすぐに控訴。2審では1審とは真逆の判決が下されたため北海道猟友会は対応を議論し、自治体からのヒグマの駆除要請に原則として応じないよう検討する事態となったという。男性は現在、最高裁に上告しているという。北海道公安委員会は、北海道警察を管理するために北海道知事所管の下に設置された行政委員会だ。こうしたことから、今回の騒動を受けてネット上には「今後は鈴木直道知事が銃をもってクマを駆除すればいい話」「クマよりも無能な知事を駆除したほうが話が早い」「道庁は道民の生活を守らないなら、税金を払う必要がないよねって思います」という厳しい声も寄せられている。

 2023年10月30日夜に富良野市内で発生したヒグマと列車の衝突事故では、列車のエンジンが故障し自走できない状態となったが、周辺に別のヒグマが出没する恐れがあったことから、乗客と乗務員は車内で一夜を明かし、翌朝ハンターによって周辺の安全が確認されるまで車外に出ることができなかったという。JR北海道管内でのヒグマと列車との衝突事故も増加傾向にあるが、北海道猟友会の出動件数は2023年度は1990年度の16倍に増加しているという。危険を伴うヒグマの駆除活動中に発砲判断の責任までハンター側が負わされるのは問題があるとして、今回の騒動は波紋を広げそうだ。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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