米国 94歳のアウシュビッツ生存者 ホロコースト経験語る「自分自身を信じて、愛して、強くなって」
アウシュビッツでの選別と「死の行進」からの奇跡の生還
米国のテキサス州に在住のホロコーストの生存者の94歳のローザ・シェルマン氏が2021年9月にテキサス州のシーナ駅でホロコースト時代の経験を語る講演会を行った。132人の聴衆が集まって彼女の当時の壮絶な体験に耳を傾けていた。彼女は「Letters to Rose: A Holocaust Memoir With Letters of Impact and Inspiration from the Next Gen」というホロコースト時代の経験を綴った本も書いている。
シェルマン氏は12歳の時にナチスドイツがポーランドに侵攻して、ユダヤ人を徹底的に差別迫害するようになり、1944年にはアウシュビッツ絶滅収容所に移送された。アウシュビッツ絶滅収容所に到着すると、「死の天使」と言われたメンゲル医師が彼女を「生きる」方向に選んだので、ガス室に送られずに生き延びることができた。
しかしアウシュビッツ絶滅収容所でも殴られたり、蹴られたり、また飢えて凍えて、何回も死にそうになったそうだ。そしてドイツの敗戦が濃厚になると、アウシュビッツ絶滅収容所からドイツのベルゲン・ベルゼン強制収容所まで「死の行進」と呼ばれる、歩いて移動させられた。途中で歩けなくなったらその場でナチスに射殺された。そしてベルゲン・ベルゼン強制収容所でイギリス軍によって解放された。
シェルマン氏はこのような壮絶な体験を今までも語り継いできた。最後に「若い人たちへの私の望みは、まずは自分自身のことを信じてください、強い意志を持った強い人間になってください、そしてあなた自身を愛してください、皆さまの成功を祈ります」と語っていた。
高齢化するホロコースト生存者と進む記憶のデジタル化
第二次世界大戦中にナチスドイツが約600万人のユダヤ人やロマ、政治犯らを殺害した、いわゆるホロコースト。戦後75年以上が経過して、ホロコースト生存者も高齢化が進み、近い将来にはゼロになる。
そして現在でもホロコースト時代の体験を語り継ごうと生存者らは、ホロコースト博物館や学校などで講演を行っている。また生存者のインタビューを動画で録画して当時の体験を語ってもらい、インターネットで世界中に配信したり、ホログラムとしてバーチャルでリアルタイムにホロコースト生存者と会話ができるようにするなど、記憶のデジタル化も積極的に進められており、それらは欧米やイスラエルなどのホロコースト教育でも大いに活用されている。
2020年は世界規模での新型コロナウィルス感染拡大のために、ホロコースト生存者らの博物館や学校でのリアルな講演はできなくなってしまった。その代りに、多くのホロコースト生存者らがZoomを活用してオンラインで講演を行うようになった。
ホロコースト生存者は現在、世界で約24万人いる。彼らは高齢にもかかわらず、ホロコーストの悲惨な歴史を伝えようと博物館や学校などで語り部として講演を行っている。だが高齢化が進み、博物館や学校などに行くのが困難になってきていた。新型コロナウィルス感染拡大によって欧米ではロックダウンが進み自宅から外に出られなくなると、ホロコースト生存者らはZoomを通じて学校の授業で学生や、一般の方々に向けた講演会で話をするようになった。シェルマン氏の講演は久しぶりにリアルな場所での講演となった。