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全部門マイナス、雑誌は4割以上の減に(経済産業省広告売上動向2020年9月分)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 街に人通りは戻りつつあるが。(写真:西村尚己/アフロ)

すべての部門がマイナスを示す

経済産業省が先日発表した「特定サービス産業動態統計調査」の結果によれば、2020年9月分の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でマイナス21.3%となり、減少傾向にあることが分かった。主要業務種類5部門(4マスとも呼ばれる4大従来型メディアである新聞・雑誌・テレビ・ラジオと、新形態の広告媒体となるインターネット広告)では新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・インターネット広告すべてでマイナスを示した。下げた部門では雑誌が一番下げ幅は大きく、マイナス44.2%を示している。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2020年8~9月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2020年8~9月)

今件グラフの各値は前年同月比を示したもので金額そのものではない。また前回月分からの動きが確認しやすいよう、2020年8月分のデータも併せてグラフに反映している。

ここしばらくは軟調が続いている4マス(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)だが、今回月ではすべての部門でマイナスを示した。

2015年以降4マスは概して軟調が続いている。特に紙媒体の新聞と雑誌は下げ基調が止まらず、今回月の2020年9月分に至っても、2015年以降でプラスを示した月は、雑誌では2015年4月に示したプラス2.5%、新聞では2017年10月のプラス9.5%と2019年1月のプラス0.9%、2019年7月のプラス3.3%、そして2019年9月のプラス0.5%と、合わせて5回のみとなっている。2ケタ台の下げ率を見せたのは新聞が19回、雑誌は30回。1年分を越えてもなお前年同月比でマイナスが続いているのは、単なる反動を超えた、中期的な下げの中にあることを意味している。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2014年1月以降)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2014年1月以降)

一方、インターネット広告はマイナス5.9%と前回月に続きマイナスを示す形となった。新型コロナウイルス流行による経済活動萎縮の影響がインターネット広告への出稿にも生じているのだろう。もっとも全部門の中で最小の下げ幅に留まっており、回復への道のりの先頭を走っているのも事実ではある。

他方、4マスとインターネット「以外」の一般広告(従来型広告)の動向は次の通り。

↑ 一般広告の広告費(前年同月比)(2020年9月)
↑ 一般広告の広告費(前年同月比)(2020年9月)

大きな下げ幅を示した「交通広告」「SP・PR・催事企画」ともに300億円超の大きな額の部門であることから、売上高合計にも小さからぬ影響を与えたものと思われる。

新聞とインターネット広告の金額差は約3.64倍

部門別の具体的売上高は次の通り(億円単位における小数点以下は四捨五入しての表記となる)。

↑ 月次広告費(億円)(2020年9月)
↑ 月次広告費(億円)(2020年9月)

ここ数年で新聞とインターネット広告の金額的な立ち位置は逆転してしまった。現時点では2014年1月を最後に、毎月の新聞の広告費の金額はインターネット広告の金額を超えておらず、金額面で主要業務種類5部門の上位順位はテレビ・インターネット広告・新聞の順となっている。

今回月では両者の金額差は約473億円。約3.64倍の差がついている。もちろんインターネット広告の方が上。「従来型メディアの紙媒体全体の広告費」は約221億円で、これはインターネット広告費よりも下。つまり今回月も前回月に続き「インターネット広告の売上高が、大手4マスのうち紙媒体全体の広告費を上回った」ことになる。

次のグラフは主要5部門、そして売上高合計(主要5部門以外の広告も含むことに注意)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査でインターネット広告の金額が調査されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)

雑誌と新聞の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額が継続的に減っていることを意味する。前年同月と比べてマイナスの値が続けば、金額が漸減していくのは道理ではある。そして効果が上がらない、広告力(世間一般に働きかけられる影響力。メディア力)の無いメディアに広告費を継続して大量投入することは、少なくとも広告の直接対価によるものとしては想定しがたいので、雑誌・新聞の広告力が漸減していると広告主からは判断されているようだ。

昨今の動向を見返すと、やや起伏は大きいもののインターネット広告が確実に上昇基調(プラス領域)の中にあり、他の業種とのかい離が生じていたこと、テレビがプラスマイナスゼロ付近でもみ合いをしていたのが分かる。ラジオも似たような動きだったが、2017年初頭あたりから失速したようだ。

2015年に入ってから4マスの軟調さが際立ち、現在に至るまで紙媒体では継続しているのも気になる。2014年同月からの反動でもなく、広告市場における何らかの動きが生じている可能性は否定できない。とりわけ新型コロナウイルスの流行による影響を大きく受けているように見える。

他方、インターネットも2017年以降伸び率がやや頭打ち、むしろ低下を示している。特に2019年10月以降は低迷感が否めない。消費税率引き上げ、そして新型コロナウイルスの流行によるものとはいえ、大いに気になるところだ。そして前年同月比で見る限りでは、新型コロナウイルスの流行による広告費の減少ぶりは、リーマンショックのそれに等しい、むしろ下落期間が短い分だけ急降下な動きであることが確認できる。

グラフ上で非常に目立つ形だが、雑誌に限ればリーマンショックや東日本大震災の時以上の下げ幅すら示している。そして4マスだけでなくインターネット広告もともに大きく落ちていることから、全体としてもより大きな下落といえる。回復もまた同様の急上昇であればよいのだが、まずは新型コロナウイルスの流行が片付かないとお手上げな状態なのも事実に違いない。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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