地球にγ線バーストが直撃するとどうなるのか?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「γ線バーストが地球に当たるとどうなるのか」というテーマで動画をお送りしていきます。
●ガンマ線バーストとは?
○ガンマ線とは何か
ガンマ線バーストとは、ガンマ線が短期間で爆発的に放出される現象のことです。
では「ガンマ線」とは一体何なのでしょうか?
私たちが目にする光は、「電磁波」と呼ばれるものの一種です。
電磁波は波なので波長があり、この波長が長いと電波、赤外線などと呼ばれ、逆に短いと紫外線、X線、ガンマ線などと呼ばれます。
このような電磁波にもエネルギーがあり、波長が短いほど高エネルギーになります。
そのためX線やガンマ線は高エネルギーで有害な放射線の一種となります。
中でもガンマ線は最も高エネルギーな電磁波です。
○ガンマ線バーストの威力
そんなただでさえ強力なガンマ線が膨大な量放出されるガンマ線バーストは、とてつもなく高エネルギーな現象です。
大質量の星が死んだ際に起こる「超新星爆発」と並び、宇宙最強クラスの高エネルギー現象とされています。
そのエネルギーはガンマ線バーストにも寄るため一概には言えませんが、太陽が100億年の生涯を通して放出する総エネルギーと同等かそれ以上のエネルギーを、ほんの一瞬で放出してしまうほどのものと言われています。
この地球は太陽のおかげで温暖な環境に保たれていますが、地球が受ける太陽のエネルギーはその総エネルギーのうちわずか20億分の1に過ぎません。
それだけ強大なエネルギーを放つ太陽が生涯かけて放つ総エネルギーを、瞬時に放出してしまうのがガンマ線バーストです。
○ガンマ線バーストの発生条件
これだけ超高エネルギーの現象なので、その発生条件も圧倒的にダイナミックなものになります。
ガンマ線バーストの中でも、継続期間が1秒以上のものは「ロングガンマ線バースト」、それ未満のものは「ショートガンマ線バースト」と分類されており、その分類ごとに発生メカニズムが異なると考えられています。
ロングガンマ線バーストは、超大質量の恒星が一生を終える際、星の核が自身の重力で崩壊してブラックホールが形成される際に放出されるとされます。
その際、超新星爆発も発生します。
一方ショートガンマ線バーストは、中性子星やブラックホールなどの超高密度なコンパクト天体同士が衝突する際に発生すると考えられています。
どちらも非常にダイナミックな現象絡みです。
●地球に当たるとどうなる?
○ガンマ線バーストの指向性
ガンマ線バーストはそのエネルギーが全方向に拡散せず、ある方向に偏る「指向性」という特徴を持っています。
そのため放出する総エネルギーは超新星爆発と同程度とされていますが、それ以上の彼方まで影響が及びます。
ガンマ線バースト自体1つの銀河内で数100万年に1度しか発生しないとても珍しい現象ですが、とてつもなく遠くまで届く特徴から、この広い宇宙のどこかで発生したバーストが毎日2,3個程度も地球に届き、実際に観測されています。
○過去の大量絶滅事例
これだけとてつもないエネルギーを放ち、遠くまで影響を及ぼすガンマ線バーストが地球の近くで発生し、直撃しようものなら、地球上の環境と生命に甚大な被害が及ぶことが予想できます。
そして実際、地球上で何度か発生したと考えられている大量絶滅のうち、今から約4.5億年前に発生した大量絶滅は、地球から約6000光年彼方で発生したガンマ線バーストが原因である可能性があるそうです。
6000光年といえば同じ天の川銀河内の空間なので、宇宙全体ではとても近所と言えますが、それでも私たちが肉眼で見える星々のほとんどが地球から数百光年以内にあることを考えれば、決して近い距離とも言えません。
その距離から放たれたガンマ線バーストにより、地球の全生物種のうち85%が絶滅したそうなので、改めてガンマ線バーストの危険性がよくわかります。
○実際に当ててみた
YouTubeの動画では「Universe Sandbox 2」というシミュレーションソフトを使い、実際に地球にガンマ線バーストを当ててるので、併せてご覧ください!
●実際に起こる危険性は?
では将来ガンマ線バーストが発生し、地球に直撃する危険性はあるのでしょうか?
よくオリオン座α星のベテルギウスが超新星爆発を起こし、その際にガンマ線バーストも発生すると言われることもありますが、実際はベテルギウスはブラックホールを残すことはなく、ガンマ線バーストも起こさないようです。
ですが実際にガンマ線バーストを危険なほど至近距離で発生させる可能性がある候補天体はいくつかあり、その中でも代表的なのは地球からいて座の方向に約7500光年離れた、「WR 104」という2つの恒星から成る連星系です。
WR 104は、ベテルギウスとは異なりガンマ線バーストを同時に伴うような爆発を将来起こすと考えられています。
しかも1度ではなく、そのチャンスが何度もあります。
まず主星のAは今後数十万年間のどこかでガンマ線バーストを伴う超新星爆発を起こすと見られています。
さらに伴星Bも超新星爆発を起こしますが、ガンマ線バーストが同時に起こる可能性は比較的低いとされています。
そして主星Aと伴星Bは爆発後にそれぞれ中性子星かブラックホールを残すと考えられていますが、これらのうち一つでも中性子星が残った場合、それらがいずれ衝突した際にガンマ線バーストが放たれると考えられています。
このようにWR 104では、主星Aの爆発、伴星Bの爆発、そしてそれらが生成したコンパクト天体同士の衝突という3つのタイミングで危険なガンマ線バーストを起こす可能性があります。
ガンマ線バーストが将来地球に直撃する可能性は0ではありません。
ですが、ガンマ線バーストの発生自体が非常に珍しい上、それが起きても地球に直撃する可能性も低いです。
そしていずれにせよ、そのリスクが現実的になるのは遥か遠い未来のことなので、今を生きる私たちがガンマ線バーストによる被害を心配する必要はないでしょう。