引退する内海哲也(元巨人、西武)は韓国でもファンから愛され、選手から一目置かれる存在だった
巨人、西武で19年間にわたりプレーしてきた内海哲也(40)が、今季限りでの現役引退を表明した。多くのファンから愛され、選手から慕われてきた内海。それは日本に限ったことではなかった。
韓国のサイトに「内海ちゃん大好き」
2007年1月、内海は巨人の同僚・林昌範とともに韓国・ソウルで行われた、サイン会とトークショーに登場した。巨人にはその前年の06年にイ・スンヨプ(李承ヨプ)が入団。韓国でも巨人戦が中継され、秋にはソウル市内にグッズショップがオープンするなど、高まる巨人への関心を受けてのものだった。
球団関係者が現地の状況を調べる中で、目に留まったのが内海を応援するファンサイトの存在。インターネット上の交流の定番が「掲示板」だった当時、サイトには「内海ちゃん大好き」、「かわいい」といった言葉が並び、サイトの会員数は日々増加していた。そこで球団は選手が参加する、異例の海外イベントの実施を決めた。
自主トレの合間を縫っての強行軍で韓国入りした内海と林は、「ファンに喜んでもらいたい」と現地に着くとすぐに韓国語の挨拶を練習。内海は「『アンニョンハセヨ(こんにちは)』とか『サランヘヨ(愛しています)』じゃなくて、日本人があまり言わなそうな言葉で盛り上げたい」と要望してきた。
そこで筆者が提案したのが、「ポゴシポッソ!(会いたかった!)」。内海は何度もそれを繰り返し、「覚えました!」と言ってイベントに臨んだ。
1月7日、当日はソウルでは珍しい大雪。にもかかわず、コエックスモールのイベントコートにはサイン会定員の3倍、約300人のファンが集まった。内海の「ポゴシポッソ!」の第一声にキャーと響く歓声。イベントは大いに盛り上がった。
制球力に感嘆「いい投手」
韓国KBOリーグ、LGツインズのオ・ジファン(呉智煥)は、東京オリンピックにも出場した韓国を代表する遊撃手。オ・ジファンには沖縄キャンプでの練習試合(2012、16年)で内海と対戦した時の記憶が鮮明だ。
「コントロールがものすごく良かったです。コーナーの出し入れや、高低の使い分けが素晴らしくて、直球が130キロ台後半でも簡単にはとらえられませんでした」
「先発で活躍する投手というのは、内海投手のような投球が出来る投手のことなのだと思いました。捕手のリードによって配球を変えられるという点も印象に残っています。『いい投手』というイメージをずっと持っています」
内海は日本代表として、09年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)第2ラウンドの韓国戦に先発登板した。その時の2番打者イ・ヨンギュ(李容圭)は内海の引退について、「世代が近くて、ずっと見てきた選手なので引退は残念です」と話した。
イ・ヨンギュは日韓戦の3回裏、内海から後頭部に死球を受け退いている。しかしわだかまりはない。イ・ヨンギュは内海のその後、近況まで把握していた。
「(FAの)人的補償で西武に行ったけど、そのまま巨人にいたらどうだったかと、個人的に気になっていました」
イ・ヨンギュへの死球後、韓国メディアの中には内海の投球を批判するような記事もあった。しかし現地の米・カリフォルニア州では少し様子が違った。
試合の翌日、巨人のコーチでもあった韓国代表コーチのキム・ギテ(金杞泰)が、韓国の取材陣に「内海が謝りにきた。韓国語で『ミアネヨ(ごめんなさい)』と言っていたよ」と話したからだ。
実際に内海が口にしたのが「ミアネヨ」だったかは定かではないが、その3年前に「ポゴシポッソ!」と言ってファンを沸かせた姿から、あながち作り話ではないと思わせた。
1982年生まれの内海。日本でもプレーしたイ・デホ(李大浩)と同い年だ。どちらも今季限りで現役を引退。球界の一時代を築いた選手がグラウンドに別れを告げる。
内海の引退セレモニーは9月19日の楽天戦の試合終了後に行われる。