中国軍が台湾沖に発射した弾道ミサイルの正体とは? 英ジェーンズ・ディフェンスが分析
中国軍が4日の軍事演習で発射した弾道ミサイルには、短距離弾道ミサイル(SRBM)である「DF15B」(東風15B)と「DF16」(東風16)が含まれていることが分かった。英軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーが画像分析などを基に報じた。
日本の防衛省によると、中国軍は同日午後2時56分から午後4時8分までの間に、台湾の北部、東部、南部の周辺海域に向けて、中国福建省沿岸から5発、浙江省沿岸から2発、中国内陸部から2発の計9発の弾道ミサイルを発射した。このうち、5発は沖縄の波照間島の南西に設定されている日本の排他的経済水域(EEZ)の内側に落ちた。一方、台湾国防部(国防省)は中国軍が同日、計11発を発射したと発表した。
防衛省は9発のミサイルが約350キロメートルから700キロメートルの距離を飛んだと発表した。
防衛省は、2発が発射された「中国内陸部」が具体的にどこであるかを明らかにしていない。しかし、ジェーンズは、ミサイルの飛距離などを考慮し、弾道ミサイルを運用する中国人民解放軍ロケット軍(PLARF)のいくつかの駐屯地がある江西省から発射された可能性が高いとみている。
●中国軍が発射したミサイルとは
中国の短距離弾道ミサイル(SRBM)については、2022年版防衛白書は「固体燃料推進方式のDF16、DF15及びDF11を多数台湾正面に配備しており、わが国固有の領土である尖閣諸島を含む南西諸島の一部もその射程に入っているとみられる」と指摘している。
ジェーンズでは、今回発射されたミサイルがそのSRBMであるDF15(米軍コード名:CSS-6)とDF16(同:CSS-11 Mod 1)ファミリーであると分析している。
中国メディアが報じた映像は、4日に発射されたミサイルの1つを写し、それがDF15B(同:CSS-6 Mod 2)であったことを如実に示している。このDF15派生型の特徴は、DF15とDF15Aと比べた場合、より顕著な角度を持つノーズコーン(先端部)のチップ(先)を有していることだ。さらに、ミサイルの飛行姿勢を変化・制御するための「フィン」と呼ばれる小翼の存在によっても、他の派生型と区別できる。
DF15Bは、自走式のミサイル発射車両である輸送起立発射機(TEL)に搭載し、道路上で展開できる。米国防総省によると、最大射程距離はペイロード(弾頭部分の積載重量)にもよるが、約850キロに及ぶ。また、発射したミサイルの半数が着弾する範囲を指す平均誤差半径(CEP)は約5メートルで、DF15ファミリーの中では最も命中精度が高い。DF15は固体モーターによって推進され、爆発性の高い電磁パルスや化学兵器、核弾頭を搭載できる。
中国国防省は5日にも別のミサイル発射の画像を公開した。非公表の場所で発射された追加の映像とみられ、ジェーンズではこのミサイルがDF16であるとみている。しかし、DF16のどのような派生型であるかは定かではない。
中国航天科工集団(CASIC)によって開発されたDF16は、DF15に取って代わる改良型として開発されたと考えられている。Mod1とMod2の2つの派生型がある。
DF16は5軸TEL車両で道路展開が可能であり、最大射程距離はペイロードにもよるが、800〜1000キロとみられている。
ジェーンズによると、DF16は弾頭に最大3個の「多弾頭独立目標再突入体」(MIRV)搭載が可能とみられている。しかし、今回発射されたミサイルには、1つのMIRVしか搭載されていなかったようだとジェーンズは指摘している。