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「育休」一転、浮気発覚の宮崎議員が辞職 夫が妻の妊娠中に浮気するリスクはどれぐらい?

木村正人在英国際ジャーナリスト
不倫疑惑で議員辞職を表明する宮崎謙介氏(写真:Motoo Naka/アフロ)

男性国会議員初の「育休」宣言で注目を集めた宮崎謙介・自民党衆院議員(35)が妻の金子恵美・自民党衆院議員(37)の出産6日前に地元・京都の自宅で女性タレントと浮気していた問題で、12日記者会見し、議員辞職する意向を表明しました。

「男性の育児休業について、賛否にかかわらず真剣に考えて下さった方々に、深く、深くお詫びを申し上げます」「自らが主張してきたことと軽率に行動してしまったことの辻褄が合わないことについて深く、深く、深く反省し、議員辞職する決意を固めたところでございます」

呆れたというより、哀れささえ漂う展開です。金子議員の心中はいかばかりかと察しますが、できることなら誕生したばかりのご子息と3人でやり直していただけたらなと願います。

さて宮崎議員のように、妻の妊娠中に夫は浮気をするものなのでしょうか。愛とセックス、子供について詳しい米国の女性作家イェーナ・ピンコットさんはこう指摘しています。妻が妊娠中に夫がとる行動には大きく分けて3つのタイプがあるそうです。

(1)浮気をするか、浮気願望があるタイプ

夫がどちらかと言えば結婚生活に満足していたとしても、夫は妻の妊娠中に浮気をするリスクが増えるという研究があるそうです。特に妊娠の第1期や第3期にセックスをするような気にはなれない女性が少なくありません。たいがいは夫が妊娠した自分の体に魅力を感じないという女性側の誤解に基づくものだそうです。夫は妻の妊娠と性生活の変化について、結婚生活には満足しているものの、夜の生活は満足できないという矛盾を感じているのかもしれません。

(2)これまで以上に妊娠した妻を欲するようになるタイプ

浮気をする夫ばかりではないのでご安心下さい。別の研究によると、多くの夫は、たとえセックスの回数が妊娠前より減ったとしても、妊娠した妻とこれまで以上に結ばれたいと思っているそうです。妊娠した妻の肉体にも魅力を感じています。

(3)性欲が減退し、浮気をするリスクが少ないタイプ

男性ホルモンの一種、テストステロンが減り、プロラクチンのレベルが上がるため、性欲をあまり感じなくなる夫もいます。赤ちゃんが生まれたとき、思いやりがあって寛大で、最も父親らしく振る舞うようになるそうです。

できればタイプ(2)か(3)の夫を持ちたいものですが、男性によってテストステロンとプロラクチンの分泌量は異なります。宮崎議員はどうも身重の妻には許しがたいタイプ(1)だったようです。しかし、宮崎議員の責任というよりはオトコの性なのかもしれません。

米中央情報局(CIA)のデービッド・ペトレアス長官(当時)が自分の伝記を執筆した女性との不倫が発覚し、「CIA長官としても夫としても容認されない」と辞任したことがあります。宮崎議員は一介の議員に過ぎませんが、ペトレアス長官は米国だけでなく世界の安全保障に責任を負う立場にありました。

歴代米大統領の不倫ではフランクリン・ルーズベルト、アイゼンハワー、米女優マリリン・モンローと浮名を流したジョン・F・ケネディ、実習生モニカ・ルインスキーさんとのスキャンダルが発覚したビル・クリントン氏らが有名です。

少女買春疑惑が発覚したイタリアのベルルスコーニ前首相、性的暴行容疑で逮捕された国際通貨基金(IMF)のストロスカーン前専務理事を見てもわかるように、世界の政界はセックス・スキャンダルのオンパレードです。

テストステロンの分泌が活発な人が高い社会的地位を手にする傾向が強いと言われますが、逆に、ベルルスコーニ、ストロスカーン両氏や米プロゴルファー、タイガー・ウッズ選手のようにセックス・スキャンダルで身を滅ぼすリスクも高そうです。政治家がセックス・スキャンダルで受けるダメージを和らげる方法がいくつかあります。

心得の一、否定するより、できるだけ早く非を認めて謝る

セックス・スキャンダルを否定してウソがばれた場合、今度は「ウソつき」という烙印が押され、失地回復が難しくなります。

心得の二、政治と私生活は別という昔の不文律は適用されない

アイゼンハワー元米大統領と戦時中、親密な関係にあったお抱え英国人女性運転手は元大統領が亡くなり、自分も末期がんで余命わずかになって初めて2人の関係を自伝で公表しましたが、そんな不文律はインターネット時代に通じません。私生活には寛容だったフランスでも、ストロスカーン氏のセックス・スキャンダル以来、セックス・ライフが政治に影響を及ぼす危険性が議論されるようになりました。特に米国では社会的に地位の高い人にはより高い社会規範が求められます。

宮崎議員の辞職表明は政治家としては正解でした。しかし、問題はこれからです。妻の金子議員に許してもらえるか、そして政治家として復帰できるのか、道のりはかなり険しいでしょう。バレないと思っていた浮気の代償は宮崎議員が思っていた以上に高くつきました。一番の問題は宮崎議員にあるとは言え、今回の騒動で得をしたのはいったい誰でしょう。

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(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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