「持家無し」の人の間に広まる「マイホームはいらない」の思い(2024年公開版)
単身世帯は「持家はいらない」との意見多し
住宅保有は夢であり人生の目標と評する人もいるが、最近では賃貸で十分との考えの人も多いとの意見もある。持家無しの人が住宅を調達しようとする意思と予定時期について、金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。
今件調査の直近値(2023年)では、単身世帯は33.5%、二人以上世帯では68.9%が持家に住んでいると回答している。単身世帯の方が圧倒的に持家率が低い、逆にいえば借家住まいの人が多い。なお今件における「持家」とは「本人が購入した家屋マンション」「相続または贈与を受けた持家」のいずれかを意味する。
それでは現在持家に住んでいない人、つまり借家住まいなどの人は、将来自家を取得する予定はあるのだろうか。自前で購入する以外に、親などから相続を受ける可能性もあるため、それも含めた回答をしてもらったのが次のグラフ。
予算の都合や必要性も合わせて考えれば当然の話ではあるが、二人以上世帯の方が(現在非持家世帯でも)持家取得意思が強いのが分かる。また、単純計算で確率が2倍に増えることから、「持家は相続で譲り受ける予定」との意見も、二人以上世帯の方が多い…が、3倍以上の値は単純な確率論では説明ができない。「単身で生活している子供に対してではなく、夫婦で世帯を持つ子供にこそ、住宅を相続させたい」とする親側の意図がすけて見えてくる。
興味深いのは単身・二人以上世帯間で「相続予定・時期不明」と「目下考えていない」を合わせた比率に大きな違いが見られないこと(3.1%ポイント差)。「取得予定無し」はノー、「何年以内」は明確なスケジュール付きのイエスのため、「取得できる・できない・しない」の差はあれど、「住宅取得について直近で深く考えたことは無い、考えていない」との人は単身・二人以上世帯ともに同程度の比率となる。
取得意欲の昔と今と
これをデータが残っている2007年以降の推移でみると、特に持家の無い単身世帯で住宅取得意欲が減少しているのが確認できる。
「相続予定・時期不明」「目下考えていない」は多少のばらつきがあれどそれぞれの世帯種類内ではあまり変わらず、具体的年数を決めて取得する意向の値が少しずつ減り、その分「取得予定無し」が増えているのが分かる。特に単身世帯の持家取得意向の減り方は著しく、2007年から2023年の間に「取得予定無し」の人が32.2%ポイントも増加している。
なお2020年の二人以上世帯において「3年以内」が大きく増えているが、これは住宅関連環境に大きな変化が生じたのではなく、新型コロナウイルス流行の影響で二人以上世帯向け調査の方法が変更された(従来は訪問依頼・訪問回収がメインだったが、2020年以降では郵送依頼・郵送回収のみとなった)のが影響しているものと考えられる。もちろん新型コロナウイルス流行により在宅勤務がメインとなり、自家取得の気持ちが強まった可能性も否定できないが。2021年以降もその傾向が継続しているのは、やはりさらに調査方法が2021年以降においてインターネットモニター調査法に変更されたからかもしれない。
相続による取得以外では、自宅は自前で手に入れるしかない。相場は比較的安定しているとはいえ、可処分所得の減少や雇用の安定度を考え、取得をあきらめる人が増えており、その実情・心境が反映されていると考えれば、今件グラフの動向も納得がいくものだ。
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※家計の金融行動に関する世論調査
直近分となる2023年分は世帯主が20歳以上80歳未満の世帯に対しインターネットモニター調査法で、2023年6月23日から7月5日にかけて行われたもので、対象世帯数は単身世帯が2500世帯、二人以上世帯が5000世帯。過去の調査も同様の方式で行われているが、二人以上世帯では2019年分以前の調査は訪問と郵送の複合・選択式、2020年では郵送調査式だった。
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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。