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大野智『忍びの国』×ジョニデ『パイレーツ』 夏映画の初陣を飾るのは“似たものキャラ”対決!?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』ジャパンプレミアでのジョニー・デップ(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

7月に入り、サマームービーの話題作が次々と公開が始まるが、その先陣を切って、7月1日(土)、邦画と洋画の注目作がいきなり激突する。『忍びの国』と『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』だ。

この2本、作品のイメージは違うが、主人公キャラに意外なほど共通点も多い。

『忍びの国』の無門も、ジャック・スパロウも、とぼけた味わいが魅力。一見、ヘタレキャラのようで、じつはけっこう打算的で自己チューな面もある。肝心なときは、男気と実力を最大限に発揮。そして2人とも演じるキャストの個性がマックスに生きている(大野智もジョニー・デップも、ファンサービスのカメラ目線があったりして……)。

2作が公開される7月1日は映画の日ということもあって、ロケットスタートに期待がかかる。ジョニー・デップのジャック・スパロウ役は“鉄板”であり、先日はジョニーも来日して派手なプロモーションが行われた。ディズニーのブランド力も、パイレーツには効果的。

一方の『忍びの国』も、大野智の露出が半端ではない。ある映画雑誌などは、大野の表紙インタビューを掲載するため、取材スケジュールに合わせて発売日を変更したほどだ。ジャニーズに詳しいライターに聞くと「たとえば松潤が表紙だと、その雑誌を買うのは彼のファンがメイン。でもリーダーの大野くんだと、嵐のファン全員が買いたくなる」とのこと。実際に雑誌の売れ行きは伸びるらしく、「リーダー主演」映画の集客にも期待がかかるのだ。

「アナ雪」や「君の名は。」などは別格として、近年、映画のヒットは、公開初日&2日目の週末成績でほぼ決まる。というわけで「パイレーツ」と「忍び」のどちらが上を行くか、過去の近い例から考えてみる。

ジョニー主演映画の成績は……

まず『パイレーツ・オブ・カリビアン』の過去の作品の公開週末数字(※カッコ内の数字は日本公開年)

『呪われた海賊たち』(03) 約12億円

『デッドマンズ・チェスト』(06)9億9155万円

『ワールド・エンド』(07)19億3869万円(3日間)

『生命の泉』(11)12億0902万円

通常の映画では2〜3億円が目安なので、なかなかにスゴい記録である。ただし、直近の作品が6年前。その後のジョニー・デップの主演作をみると

『ダーク・シャドウ(12)4億0452万円

『ローン・レンジャー』(13)3億0015万円

『トランセンデンス』(14)1億1795万円

『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』(15)1億4444万円

『ブラック・スキャンダル』(16)1億1350万円

『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(16)4億2545万円

『ダーク・シャドウ』、『アリス〜』以外は、作品の傾向にもよるが、正直、物足りない数字。日本での「ジョニデ人気」は以前ほどではないのだ。そう考えると最新作『最後の海賊』の週末数字は『生命の泉』の7〜8割くらいではないだろうか。

「怪物くん」を超えれば特大ヒットに

続いて『忍びの国』のための参考数字。やや強引だが、ジャニーズ主演の主な時代劇を並べてみる。

木村拓哉『武士の一分』(06)4億3660万円(3日間)

松本潤『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(08)1億7900万円

香取慎吾『座頭市 THE LAST』(10)8512万円

二宮和也『大奥』(10)4億6515万円(3日間)

岡田准一『天地明察』(12)1億3821万円

岡田准一『蜩ノ記』(14)1億5362万円

木村拓哉『無限の住人』(17)1億8900万円

バラつきがあるが、大当たりという数字は少ない。ところが視点を変えると……

・『忍びの国』と同じ和田竜の原作映画化→

『のぼうの城』(12)5億0490万円(3日間)

・主演の魅力が期待を集めた痛快アクション時代劇→

『るろうに剣心』(12)3億9953万円

・そして監督×主演が『忍びの国』と同じ→

『映画 怪物くん』(11)5億8103万円

ということで、原作人気+『怪物くん』の実績で、6億円以上の可能性が十分にあるのではないか。現状では『パイレーツ』の方が有利な気もするが、互角に近い勝負になるかもしれない。

スター映画としての仕上がり

最後に、肝心の作品の魅力を。

正直なところ、2作とも「大傑作」と太鼓判を押すわけにはいかない。『パイレーツ』は、過去の作品とのつながりが胸を熱くさせ、クライマックスは予想外の感動シーンもあったりするが、全体には「何かを探す海の冒険」という定番な展開に既視感は否めない。『忍びの国』も、時代劇の常識を覆す「忍び」たちのアクションは面白いが、全体のトーンが痛快なのかシリアスなのか、やや中途半端で、ノレない観客もいるかもしれない。

とはいえ、大野智、ジョニー・デップを好きな人なら、最初から最後まで楽しめる「スター映画」になっているのは間違いない。高いレベルの数字で争い、今年の夏映画に勢いをつけてもらいたい。

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『忍びの国』

7月1日(土)全国ロードショ

配給/東宝

(C) 2017 映画『忍びの国』製作委員会

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『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』

7月1日(土)全国ロードショー

配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン

(c) 2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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