五月病・新型五月病とは:連休明けの心身の不調と退職退学の思いを乗り越える方法
■五月病とは
五月病は、正式な病名ではなく、昭和40年代(1970年前後)からマスコミで使われ始めた用語です。当初は流行語でした。
昔から、木の芽時には心身の調子が悪くなることを私たちは経験的に知っていました。一つには冬から春、初夏の変化に体がついていきにくいことがあります。さらに春は変化の季節で、この変化に心がついていけないことがあります。毎年3月から6月は、自殺の多い季節です。
ただ、五月病はもう少し軽い意味で使われるでしょう。もともとは、懸命に努力して一流大学に入った学生が、5月連休明けごろからやる気をなくす状態を表していたようです。それが、同じ状態の新人サラリーマンにも使われるようになり、さらに最近では異動になったベテランサラリーマンにも使われるようになりました。
■新型五月病とは:古典的五月病との違い
「新型五月病」は、いくつかの意味で使われます。
新型五月病の一つの意味は、若者ではなく、転勤や配置換えに適応できない中年サラリーマンという意味です。悩んでいるのは、若者だけではありません。
もう一つの意味は、うつ病と新型うつ病の違いにも似た使い方です。昔の五月病は、まじめに一生懸命努力する過剰適応の人たちが疲れてしまった状態でした。一方、現代の新型五月病の人たちは、もっと軽い感じで、周囲から見れば努力が足りず適応できないタイプです。彼らは「社会的スキル」(社会や会社の常識ルール、職場作法など)がなく、そのために新しい環境に上手く適応できない若者です。
ともかく、5月、特に連休明けに調子の悪くなることは多々あります。症状も原因も様々です。いくつかの原因が絡んでいることもあるでしょう。
■生活リズムの乱れ
新しい環境で4月はがんばります。当然疲れます。その結果、だらだらとしたゴールデンウイークを過ごす人もいます。学生たちは、もともと夜型など不規則な生活をしていた人も多く、毎朝の出勤だけでも疲れます。そこで、連休中に遅くまで遊び昼近くまで寝るような生活をする人もいます。
こんな生活をすれば、まるで海外に行ったような時差ぼけ状態になります。学生時代なら、連休明けの朝一時間目はサボるようなこともできましたが、社会人はそうはいきません。強制的に朝型の生活に戻るために、体の調子も心の調子も悪くする人がいます。
■ストレス反応
新しい環境など、人はストレスにさらされると、普通はがんばります。緊張し、早く目が覚め、テンションがあがります。「火事場のばか力」的ながんばりも生まれます。
ところが、がんばれば当然疲れます。4月にがんばった分だけ、ストレス反応として、5月に心と体の疲れがどっと出ることがあります。
■リアリティショック:こんなはずではなかった
新しい学校、新しい職場。特に苦労してがんばって入った人なら、当然すばらしい新生活を期待します。しかし現実はきびしい。なかなか理想どおりにはいきません。
友人の東大出身者が言っていました。東大に入り、がっかりする人もいると。東大が悪いといっているわけではありませんが、こんなにがんばって日本一の大学に入ったのに、自分が思っていた大学生活とは違っていたと感じる新入生もいるそうです。東大だからこそ、がっかりする人もいるのだと。
こんな学生がやる気を失い、学校を休みがちになるのが、本来の「五月病」でした。
東大に限らず、その大学や職場の現実を知ったとき、多くの若者がリアリティショックを感じます。インターンや実習で現場経験をしてきた新人ですら同じです。守られていた実習生時代とは違いますから。
■不本意な進路
昔の五月病が、がんばり屋の疲れなら、現代の五月病の中には、最初からやる気のない人もいるでしょう。進学も就職も、強い意志で決めたのではなく、周囲に流されて、何となく決めました。そんな気持ちですから、新生活にやる気は出ず、面白さも発見できません。
4月は何とか出席出勤したものの、ゴールデンウイークの連休明けから休みがちになる人もいるでしょう。4月5月と、やる気の高い人たちはスタートダッシュを切っているのに、自分は出遅れたと落ち込む人もいるでしょう。
不本意な異動、なれない仕事で、最初からやる気がでないサラリーマンもいるでしょうし、がんばりすぎて疲れるサラリーマンもいるでしょう。
■適応障害、うつ病・新型うつ病(否定形うつ病・双極2型障害)
五月病などと気軽に言っていたら、精神科の診断名がつくような病気の場合もあります。本格的なうつ病の場合なら、基本は休息と薬です。彼らはまじめながんばり屋ですから、周囲がその人を休ませなくてはいけません。下手な励ましは逆効果です(うつ病の人との接し方)。
ただし、若者に多い「新型うつ病」は、少し様子が違います。うつ病の場合は、仕事も趣味もやる気がなくなり、心身の不調にいつも襲われます。ところが「否定形うつ病」は、ストレスにさらされたときだけ症状が出やすくなります。遊びはできても仕事はできない状態です。
躁うつ病は、明るく元気な躁状態と暗く元気がなくなるうつ様態を繰り返します。特に「双極2型障害」は、躁状態がそれほど重くならないので、周囲からはなおさら理解されません。(誤字修正5.9)
新型うつ病も、本人は悩んでいいます。しかし休息と薬だけではなく、状態を見ながらチャレンジや訓練をしていくことも必要でしょう。
「適応障害」は、ある環境が大きなストレスになり、心身の症状や行動のバランスが崩れる病気です(ただし、口の悪い人は、何だかわからない軽い心身の異常はみんな適応障害にされてしまうなどと言う人もいますが)。
■5月病・新型五月病を乗り越える
本格的な病気なのにがんばりすぎてはいけません。治療が必要です。一方、一ヶ月もすればよくなる「五月病」なのに、病気を口実にして休み続けたり、五月病が慢性化して六月病七月病になっても困ります。
今、心が落ち込んで退学退職を考えている人は、もう少し考えて見ましょう。心が落ち込んでいるときに、重要な決定をしてはいけません。
「五月病」なら、6月には治る一時的な状態のはずです。しっかり寝て、体調を整え、再スタートを切りましょう。スポーツや趣味も効果的です。学生なら、これからが本格的な授業のスタートです。これからでも、サークル活動に参加できます。きっと歓迎されるに決まっています。
リアリティーショックは誰もが感じます。進路選択、職業選択への悩みはあり、アイデンティティは揺さぶられます。けれど、現実を知って現実を嫌わないで下さい。その現実の中で、あなたにも使命があるはずです。
サラリーマンの皆さんに話を聞くと、不本意な配置、異動でも、そこで努力し成果を残せば、次につながると語っています。
基礎的な勉強や下働きに意味を感じなかったり、いきなり難しいことに直面して戸惑っている人も多いでしょう。でも、人はどんなことにも意味を見出すと、喜びを感じられる生き物です。そして、ほとんどのことには慣れることができて、苦しみが減るようにできています。
良い季節になりました。五月病の人も、今を乗り越えれば、来年の今頃は五月病の新人を慰め励ます役割を果たしているでしょう。