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千葉大集団強姦事件(関係者のこれまでの動き、不起訴処分の当否、実名非公開などについて)-弁護士が解説

福永活也福永法律事務所 代表弁護士
画像とは異なり、本件は裁判員裁判ではありません。(提供:アフロ)

平成28年9月20日に起きた千葉大集団強姦事件について、複数の被告らについての刑事裁判が始まっていますが、事件発生から現在に至るまでの捜査機関側や被告らの動きについて解説します。

また、千葉地検(千葉地方検察庁)が、平成29年2月21日、3人の医学部生及び29歳の医師の男に対する準強制わいせつ容疑について不起訴処分にした件について、「あれだけのことをしておいて無罪放免なんておかしすぎる!」「親族が権力者だからだ」「大金を積んで示談したに違いない」などといったコメントが続出しており、さらに、事件当初より、加害者らの実名が非公開とされるなど、千葉県警(千葉県警察)が情報を一部非公開とした点についても、様々な批判がなされているようですので、これらについても併せて解説致します。

本件は進行中の事件であり、すでに被告らの実名報道もされている中、直接的に事件についての意見をネット上で述べることへの躊躇もあったのですが、社会の関心度が高いことと、一部で事件について誤った理解をしていると思われるコメントが散見しているため、解説記事をアップすることにしました。

なお、僕自身は本件の公判を傍聴できたわけではなく、正確な起訴事実などを自ら把握できているわけではありませんし、現時点ではニュースから得られる情報を基に解説していますので、今後新たに追加・訂正される情報次第では結論が大きく変わることもあります。

事件の関係者

今回の一連の事件の当事者としては、加害者が吉元将也被告(千葉大医学部5年生)、山田兼輔被告(千葉大医学部5年生)、増田峰登被告(千葉大医学部5年生)、藤坂悠司被告(千葉大附属病院研修医)、29歳医師の計5人で、被害者が20代女性と言われています。

捜査機関側は、千葉県警と千葉地検です。

事件の時系列

まず、本件を時系列で整理します。

  • H28.9.20

居酒屋で、午後7時半頃から翌午前0時半頃にかけて、被告ら及び被害者の計十数人で飲み会が開かれていたが、午後10時頃から、吉元被告及び山田被告は、酩酊している被害者を居酒屋の女子トイレに連れ込み、吉元被告、山田被告の順にそれぞれトイレ内で被害者を姦淫(事件1)、さらに、午後11時頃、藤坂被告もトイレに来て被害者に対してわいせつ行為に及んだ(事件2)。その後、被害者を増田被告宅に連れて帰り、増田被告が被害者を姦淫した(事件3)という事案です。29歳医師についてはどのような犯行(事件4)があったかの詳細は不明(強姦とわいせつ行為の違いは、いわゆる本番行為の有無で決めます)。

  • H28.11.21

千葉県警は、吉元被告、山田被告、増田被告ら3人を集団強姦致傷罪の疑いで逮捕(事件1、3)

  • H28.11.24

千葉県警は、当初、吉元被告らを実名報道せず、情報は一切公開しないという姿勢をとっていたが、必要があれば今までどおり取材対応や発表もすると方針を転換

千葉大学は、吉元被告らの逮捕報道について、遺憾の意を表明

  • H28.12.5

千葉県警は、藤坂被告を準強制わいせつ罪の疑いで逮捕(事件2)

千葉県警は、吉元被告ら4人の氏名を公表

  • H28.12.7

千葉県警は、吉元被告及び山田被告を準強制わいせつ罪の疑いで追送検(事件2)

  • H28.12.12

千葉地検は、吉元被告及び山田被告を集団強姦罪で起訴(事件1)、増田被告を準強姦罪で起訴(事件3)

  • H28.12.22

千葉地検は、藤坂被告を準強制わいせつ罪で起訴、吉元被告及び山田被告については起訴猶予の不起訴処分(事件2)

  • H29.1.31

吉元被告は、初公判(吉村典晃裁判長)で被害者との合意があったとして無罪主張(事件1)

山田被告は、初公判(吉村典晃裁判長:吉元被告と共同で審理)で起訴事実は概ね認めた上で、吉元被告との共謀は否認(事件1)

増田被告は、初公判(吉村典晃裁判長:吉元被告らとは別の審理)で起訴事実を認める(事件3)

  • H29.2.2

千葉県警は、29歳医師について、吉元被告、山田被告、藤坂被告ら3人との共謀による被害女性への準強制わいせつ罪の疑いで書類送検、吉元被告、山田被告、藤坂被告ら3人についても追送検(事件4)

  • H29.2.20

藤坂被告は、初公判(高橋正幸裁判官:他3人の被告らとは別の審理)で起訴事実を認める(事件2)

吉元被告は、第2回公判で、被害者の同意の上だったという無罪主張から、同意はなかったと主張を変更したが、山田被告との共謀はなく、準強姦罪が成立すると主張(事件1)

  • H29.2.21

千葉地検は、H29.2.2に(追)送検した事件について、29歳医師及び吉元被告らの計4人について不起訴処分(事件4)

  • H29.3.13

吉元被告及び山田被告の次回期日(事件1)

(増田被告及び藤坂被告の次回期日は不明)

関係者の動きについて解説

では、上記の時系列に沿いつつ、それぞれ本件に関わる関係者(千葉県警、千葉地検、加害者ら)の動きについて解説します。

千葉県警が吉元被告、山田被告、増田被告らを集団強姦致傷罪の疑いで逮捕、その後、千葉地検が吉元被告及び山田被告を集団強姦罪で起訴、増田被告を準強姦罪で起訴(事件1、3)

集団強姦致傷罪とは、二人以上の者が現場において共同して被害者を強姦(本件では準強姦)した結果、被害者に傷害を負わせた場合の罪のことをいいます。集団強姦罪は通常の(準)強姦罪に比べて重い刑が定められていますが、これは集団強姦が単独での強姦に比べて、複数人が違法性を助長し合う結果、一層凶悪性、暴力性が高くなり、被害者の性的自由や貞操に対する侵害度合いが大きく、かつ、社会的な処罰の必要性も大きいからです。そのため集団強姦罪は親告罪にもなっていません(親告罪とは、強姦・わいせつ系の犯罪については、被害者の意思を無視して刑事処罰を求めると、かえって被害者の名誉を害する危険性があることから被害者の処罰意思を尊重して、告訴がなければ刑事事件として扱えない罪のことをいい、(準)強制わいせつ罪や(準)強姦罪はこれに該当します。なお、これらの罪については告訴期間に制限はありません)。

ただ実際には、吉元被告及び山田被告は居酒屋のトイレで(事件1)、増田被告は増田被告の自宅で(事件3)、被害者をそれぞれ準強姦しており、少なくとも3人が同一現場で犯行をしたわけではないことから、3人をまとめて集団強姦で処罰することはできませんが、逮捕時にはここまで詳しい事案解明がされていなかったことから、3人をまとめて集団強姦致傷罪の疑いで逮捕しています。

また、集団強姦罪でなく、集団強姦致傷罪で逮捕していますが、両罪の法定刑には大きな差があり、それだけ集団強姦致傷罪を適用するには、重い法定刑を科すだけの傷害結果が要件となるものと考えます。この点については、捜査の結果、幸いにも被害者は全治5日程度の軽傷であったことから、起訴時には傷害結果を含まない、集団強姦罪や準強姦罪での起訴となっています(加害者を刑事裁判にかける流れとしては、警察による逮捕→警察から検察へ送検→検察が起訴、となりますが、逮捕時と起訴時で処罰対象となる罪名が変わることはよくあります。なお送検とは、警察が捜査した情報を検察に引き継ぐことをいいます)。

なお、通常の強姦罪が、暴行や脅迫を用いて被害者を抵抗できない状態にした上で姦淫をした場合の罪であるのに対して、「準」強姦罪とは、暴行や脅迫ではなく、酩酊、熟睡、薬物利用などにより被害者が抵抗できない状態であることを利用して姦淫した場合の罪のことをいいます(加害者が、自ら、被害者を抵抗できない状態にした場合だけでなく、加害者の行為とは関係なく被害者が抵抗できない状態になっていた場合でも、そのような状態を利用して姦淫すれば、準強姦罪は成立します)。

準強姦罪は、このように被害者が暴行や脅迫以外の手段で抵抗できない状態になっていることを利用した犯罪という点で通常の強姦罪と異なるというだけであって、「準」という文字がついていても、通常の強姦罪と比べて罪が軽いという意味は全く含まれておらず、法定刑は同じです(準強制わいせつ罪なども同様)。

千葉県警が藤坂被告を準強制わいせつ罪の疑いで逮捕、吉元被告及び山田被告を同罪の疑いで追送検、その後、千葉地検が藤坂被告を準強制わいせつ罪で起訴、吉元被告及び山田被告については起訴猶予の不起訴処分(事件2)

藤坂被告については、被害者に対し、姦淫ではなく、わいせつ行為にのみ及んだのであって、準強制わいせつ罪による逮捕及び起訴は妥当な判断です。

吉元被告及び山田被告については、平成28年12月22日に、藤坂被告との準強制わいせつ罪について起訴猶予の不起訴処分となっています。ネット上などでは、平成29年2月21日になされた29歳医師を併せた吉元被告ら計4人の不起訴処分について批判がなされていますが、実はその前にも準強制わいせつ罪についての不起訴処分がなされているのです。

これは、吉元被告及び山田被告による、藤坂被告との準強制わいせつ罪については、同じ居酒屋のトイレ内で近接した時間帯に行われた準強姦罪とは包含関係にある1つの罪として処理して評価できるもので、準強制わいせつ罪についてわざわざ別の罪として起訴するまでもなく、すでに起訴がされた準強姦罪の裁判の中で審理できるからです(殺人罪について審理していれば、傷害罪について別途審理しないのと同じ)。

では、それならどうして初めから、藤坂被告だけを単独で捜査するのではなく、吉元被告と山田被告についても、敢えて準強制わいせつ罪で追送検(すでに他の罪で捜査が進んでいる状態で、別の罪について追加で捜査するための送検)していたのかが疑問ではありますが、おそらく、藤坂被告について準強制わいせつ罪で捜査するために、共同で犯行をした吉元被告及び山田被告についても改めて一緒に捜査する必要があったからではないかと思います。

また、準強制わいせつ罪は親告罪ですが、本件のように、藤坂被告が吉本被告や山田被告と現場において共同して犯行をしている場合には、親告罪には当たらず告訴は不要になりますので、もし被害者からの告訴が得られない場合にも処罰できるように共同関係を明らかにするという意味合いもあったかもしれません(刑法第180条第2項)。

吉元被告は第二回公判で、山田被告は初公判で、それぞれ起訴事実は概ね認めつつもお互いの共謀関係を否認(事件1)

吉元被告及び山田被告は、それぞれ起訴事実を大筋で認めつつも、お互いの共謀関係は否認しています。

これは、集団強姦罪ではなく、単独での準強姦罪での処罰を求めるものですが、法定刑に関して言えば、被告らにとって、集団強姦罪であれば執行猶予が付される可能性はかなり低いですが、準強姦罪であれば執行猶予の可能性が多少は残るという最大の利点があります。

そこで、吉元被告及び山田被告の犯行が共謀関係にあったか否かが問題となりますが、この点について、集団での犯行か単独での犯行かで法定刑に大きな差が設けられている趣旨は、単独犯よりも二人以上で協力し合った犯行になると、それだけ複数人で違法性を助長し合って、被害者への侵害度合いが大きくなったり、社会的な処罰の必要性が高まったりするからであることからすると、本件でも、両被告が、そのような関係性にあったかどうかが問題となると思います。

この論点については、今後の公判で明らかとなっていくと思いますが、ニュースで報道済の事実関係の限りでは、両被告が二人で協力して被害者を担いで居酒屋の女子トイレに連れて行ったり、トイレ内でも双方が姦淫したことを会話していたり、また、もし単独犯であれば居酒屋の女子トイレで被害者を姦淫しようにも他の客が入ってきて犯行が発覚するリスクなどを気にするはずですが、その点についても他方が事実上の見張役をしてくれているような気になって犯行に勢いが増したりといったことがあったのではないかと予想され、両被告は、心情的にも、実際の犯行態様としても、二人で違法性を助長し合ったからこそ本件事件が起きてしまったのではないかとも思われ、集団強姦罪が成立するのではないかと考えます。

千葉県警が29歳医師について吉元被告、山田被告、藤坂被告ら3人との共謀による被害者への準強制わいせつ罪の疑いで書類送検、同被告ら3人についても同罪で追送検、その後、千葉地検は計4人についていずれも不起訴処分(事件4)

ネット上では、29歳医師、吉元被告、山田被告、藤坂被告の計4人について、準強制わいせつ罪について不起訴処分としていることから、無罪放免なんてありえないといった批判を見かけましたが、吉元被告、山田被告、藤坂被告については、それぞれ集団強姦罪、準強制わいせつ罪ですでに起訴されて公判が始まっており、これらの罪の審理の中で、29歳医師との共謀による準強制わいせつ罪も評価できるのだろうと思います。

ただ、29歳医師については、不起訴処分により、今のところ何の刑事処罰を受ける可能性もないので、不起訴処分の理由が気になりますが、公表はされていません。

ネット上では、親の権力の影響だという批判も出ていましたが、それは別の被告の家柄が優れているという話らしく、29歳医師の不起訴処分には関係なく、そのようなことはありえません。

また、示談をして告訴を取り下げさせたのではないかという憶測も飛び交っていますが、被害者側にとって、他の4被告について処罰を求めて審理中で、29歳医師についてのみ示談をするというのは不自然ですし、また、そもそも同医師が他の被告らと共謀して準強制わいせつ罪を犯したのであれば、単独での場合とは異なって親告罪ではありませんので、仮に示談をして告訴を取り下げしていたからといって起訴は可能です。

むしろ、29歳医師が逮捕もされていないことからしますと、疑われていた事実が、そもそも準強制わいせつ罪に該当する事実ではなかったり、あるいは、客観的裏付けが何もなくて犯罪の立証が困難だったりしたのではないかと思います(29歳医師自ら容疑を認めているというニュースもありましたが、具体的に何を認めていたかが不明で、これだけでは本当に犯罪行為があったのかはわかりません)。

本件の事件全容が、あまりに悲惨で残忍な事件であるため、29歳医師が何の処分を受けないとなると何となく違和感があるような気がしてしまうかもしれませんが、そもそも明らかになっている犯行については、いずれも起訴されている被告ら4人の犯行であって、29歳医師については何をしたのかさえ全く不明で、実は違法行為を行っていなかったのかもしれません。

なお、29歳医師に合わせて、4被告についても追送検していたのは、やはり、同医師について準強制わいせつ罪で捜査するために、共同で犯行をした4被告についても改めて一緒に捜査する必要があったとか、被告らの共同関係を明らかにしておくことで親告罪から外す意図があったのかもしれません。また、もしかしたら同じ居酒屋でも、ホールとトイレ内では場所が異なるため、別の罪と考える余地があったからかもしれません。

いずれにしても、29歳医師については逮捕もされていませんし、起訴された4被告とは犯行の内容が全く異なると判断されているのだろうと思います。

今後の流れ・判決予想について

以上がこれまでの関係者の動きについての解説でしたが、今後は、次回期日以降に、被害者の証人尋問や、被告らの味方側である(情状)証人尋問、最後に被告らへの尋問(被告人質問といいます)を経て、判決が下されるでしょう。

吉元被告及び山田被告(事件1)については、計画性と共謀関係が最大の論点となると思いますが、共謀関係については上述のとおり認められる可能性は高いものの、計画性については、普通の居酒屋での飲み会だったということを考えると、最初から被害者を酩酊させて犯行に及ぶことまで考えていたかは微妙なところかもしれません(最初から犯行をするつもりなら、自宅飲みやもっと犯行に適した機会を狙うでしょう)。

ただ、犯行後に写真撮影をし、さらに増田被告の自宅に被害者を連れて帰るなど、少しも犯行を躊躇した様子がなく、犯情は悪く、かつ、被害者の処罰感情も大きいでしょうから、今後、被害者に一定の賠償をしたり、示談が成立したりしたとしても、懲役4年~8年程度の実刑が下される可能性が高いと考えます(なお、起訴後に示談が成立しても、告訴の取り消しはできません)。

藤坂被告(事件2)については、もちろん許しがたい犯罪ではあるものの、準強姦ではなく準強制わいせつ罪に留まり、また、他の準強制わいせつ罪の事件一般の中では犯行態様は比較的軽いと評価され、おそらく懲役3年以下で執行猶予付きの判決が下されるのではないかと思います。

増田被告(事件3)については、吉元被告及び山田被告に比べると、単独犯であり、一連の事件の流れの中では初期の主導的な役割を果たしていたとは言えない面もありますが、それでも救急車を求める被害者の声を無視して、自宅で長時間犯行に及んでおり、やはり犯情は重く、被害者と示談が成立してお許しをもらえたというような特別な事情でも起きない限り、懲役2~4年程度の実刑が相当だと考えます。

医師の資格について

医師法では、罰金以上の罪に科せられた者は、医師免許を与えないことがあるし(吉元被告、山田被告、増田被告)、すでに医師免許が与えられていても業務停止や免許取り消し処分を受けることがあります(藤坂被告)。

ただ、医師法上の処分については、所管の厚生労働大臣の裁量があり、どのように扱われるかは不明です(厚労省に設置された医道審議会で判断されます)。

とはいえ、国民感情からしましても、今回の4被告には医師法上、何かしらの処分がされるべきであろうと思います。

千葉県警による情報の一部非公開について

本件では、当初、千葉県警は逮捕した加害者らの実名を非公開とする措置をとるなどしたことから、様々な批判を浴びていました。

その後、千葉県警は加害者の実名を公表し(29歳医師を除く)、当初、公表しなかった理由について「捜査上の支障がある」「被害者と警察当局との関係を重視した」と説明しました。

このような千葉県警の情報非公開の姿勢に対しては、逮捕という公権力の行使が正当だったか外部の検証ができなくなりますし、実名を公表しないことで誤った情報が流されるおそれがあるという批判が出ていました(実際、ネット上では間違って犯人扱いされた人もいたようです)。

また、当然、国民の知る権利に応えなければならないという要請もあるはずです。

ただ、刑事司法上は、捜査については、捜査の実効性を確保するために密行で行うことが原則となっていますし、また、本件のような強姦・わいせつ事件では、被害者にとっては、自分が被害者であることが世の中に明らかにされてしまうこと自体が最大の脅威となってしまうところ、加害者の実名を公表してしまうと、被害者についても特定しやすくなってしまうという問題があります。

他方、捜査機関は、被害者に対しては、捜査の経過を報告して、不安を解消するように定められていますので、被害者の保護を最重要に考えるのであれば、少なくとも被害者からの一定の了解が得られるまでは、捜査情報を公表しないというのも相当な扱いだったのかもしれません。

また、本件のように共犯者がどれだけいるかわからないような場合に、すぐに捜査情報を公表してしまうと、共犯者間で証拠隠滅や口裏合わせをする機会を与えてしまうかもしれませんし、やはり捜査情報を公開することは慎重にしなければなりません。

そして、実名が非公開でも事案の内容がきちんと公開されていれば、捜査の適性性のチェックは可能ですし、実名だけを非公開にするという措置はやむを得なかったのではないかと思います。

ネット上では、被告の家柄が優れているから実名を非公開としていたのだといった批判も出ているようですが、ネット情報によると、その親族というのは裁判官や弁護士らしいですが、自分の経験や友人の法曹に聞いても、裁判官や弁護士が警察や検察に影響力を与えることができるとは考え難く、被告の親族関係が実名非公開について直接影響したことはないと思います。

またそもそも、起訴されれば、必ず実名は特定されてしまうので、当然、永久に非公開にすることはありえなかったわけですから、被害者の心情や捜査の実効性に配慮して、公開の時期のみ慎重に判断していたのではないかと思います。

以上、千葉大集団強姦事件について、網羅的に解説させていただきました(今後追加される情報次第で、上記解説を訂正する可能性があります)。

刑法

(強制わいせつ)

第百七十六条  十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

(強姦)

第百七十七条  暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。

(準強制わいせつ及び準強姦)

第百七十八条  人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

2  女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。

(集団強姦等)

第百七十八条の二  二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。

(親告罪)

第百八十条  第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

2  前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。

(強制わいせつ等致死傷)

第百八十一条  3  第百七十八条の二の罪又はその未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。

出典:法令データ提供システム

医師法

第四条  次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。

三  罰金以上の刑に処せられた者

第七条  2  医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。

一  戒告

二  三年以内の医業の停止

三  免許の取消し

出典:法令データ提供システム

犯罪捜査規範

(この規則の目的)

第一条  この規則は、警察官が犯罪の捜査を行うに当つて守るべき心構え、捜査の方法、手続その他捜査に関し必要な事項を定めることを目的とする。

(秘密の保持等)

第九条  捜査を行うに当たつては、秘密を厳守し、捜査の遂行に支障を及ぼさないように注意するとともに、被疑者、被害者(犯罪により害を被つた者をいう。以下同じ。)その他事件の関係者の名誉を害することのないように注意しなければならない。

(被害者等に対する配慮)

第十条の二  捜査を行うに当たつては、被害者又はその親族(以下この節において「被害者等」という。)の心情を理解し、その人格を尊重しなければならない。

(被害者等に対する通知)

第十条の三  捜査を行うに当たつては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過その他被害者等の救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。ただし、捜査その他の警察の事務若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、この限りでない。

出典:法令データ提供システム

※本事は分かりやすさを優先しているため、法律的な厳密さを欠いている部分があります。また、法律家により多少の意見の相違はあり得ます。

福永法律事務所 代表弁護士

著書【日本一稼ぐ弁護士の仕事術】Amazon書籍総合ランキング1位獲得。1980年生まれ。工業大学卒業後、バックパッカー等をしながら2年間をフリーターとして過ごした後、父の死をきっかけに勉強に目覚め、弁護士となる。現在自宅を持たず、ホテル暮らしで生活をしている。プライベートでは海外登山に挑戦しており、2018年5月には弁護士2人目となるエベレスト登頂も果たしている。MENSA会員

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