Yahoo!ニュース

紅白歌合戦の裏で、Snow Manが133万人超えライブ配信の日本記録更新が意味すること

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典;Snow Man公式YouTube)

大晦日の夜ということもあり、NHKの紅白歌合戦を中心に地上波でテレビ局の看板番組がしのぎをけずるなか、Snow ManがYouTubeライブで見事な記録を打ち立てたのをご存じでしょうか。

その記録が出たのは、Snow Manが実施していた「Snow Man Special Live~みんなと楽しむ大晦日!~」というYouTubeライブの生配信。

紅白歌合戦実施中の20時半からはじまったライブ配信は、冒頭から同時接続数100万超え。その後も着々と接続数を増やし、21時半過ぎに133万超えを達成。

これまで日本のYouTubeライブの同時接続数の日本記録となっていた手越祐也さんを更新する結果となったのです。

参考:YouTube 最大同時接続数ランキング(日別)

この快挙には単なる数字以上の意味があると思いますので、ここでまとめておきましょう。

■紅白歌合戦の44年ぶりに出場ゼロの裏で

まず、なんと言っても今回のライブ配信は、ジャニーズ事務所の性加害問題の影響で、大晦日の恒例であるNHK紅白歌合戦にスマイルアップ所属タレントが一組も出れないという異常事態の中、ある意味その裏番組として企画されたものになります。

従来の紅白歌合戦とスマイルアップ所属タレントの蜜月が、一部から行きすぎでは無いかと批判が出るほどのものであったのは事実ですが、12月の地上波の他局の音楽番組が引き続きスマイルアップ所属タレントを起用し続けていたことを考えると、NHKは非常に厳しい判断を下したことになります。

事務所の会見後の批判の高まりもあり、年末恒例のカウントダウンコンサートも中止になり、Snow Manをはじめとしたスマイルアップ所属タレントは、それによって空いたスケジュールを埋めるかのように、さまざまな形でYouTubeライブやファンクラブ向けの配信を企画する結果となったわけです。

参考:元ジャニーズ、カウコンの中止から一転、6組も…「SMILE-UP.」所属、年末企画が連発に「忙しすぎ!」ファンは”悲鳴”からうれしい悲鳴に

ある意味で、地上波のテレビ番組の象徴であったグループが、このタイミングで大きくデジタルシフトをする結果となったわけで、この影響は間違いなく来年の日本のテレビを中心とした芸能界に大きな影響を与えるでしょう。

■ファンによるSNS活用がより一層活性化

また、もう一つ注目しておきたいのが、Snow Manやキンプリなど、スマイルアップ所属タレントのファンによるSNS活用がより一層アクティブになっている点です。

31日には、スマイルアップ所属タレントの様々な企画が展開されましたが、どの企画でもファンによる活発なSNS投稿が見られたのが印象的です。

特に、正午からKing & Princeによって実施されたYouTubeライブ企画では、配信直後から番組のハッシュタグがXのトレンド1位をかざっていましたし、Snow Manのライブ企画も紅白歌合戦の裏側で、他の地上波の番組を上回って、紅白歌合戦に次ぐトレンド2位に入る快挙を成し遂げていました。

さらに、ファンの投稿の中に、ライブ配信の動画や写真を活用しているものが増えているのも印象的です。
これまでジャニーズ事務所時代には、事務所側が非常に厳しくネット上の肖像権を保護する姿勢を見せていたため、タレントの多くもSNS活用を自粛している印象でしたされていましたし、ファンの多くも動画や写真は絶対あげないという姿勢を取る方が中心でした。

しかし、BTSなどのK-POPがファンによるSNS投稿を許容することで大きく成功したこともあり、事務所側もタレントによるSNS活用と並行して、徐々にそうしたファンの肖像権や著作権に対する姿勢を緩和してきていると言われています。

BE:FIRSTを擁するBMSGや、滝沢秀明さんが設立したTOBEがファンによるSNS投稿に対して寛容なガイドラインを明確に作っていることを考えると、来年本格的に始動するスタートエンターテイメントも同様のガイドラインを公開する可能性は高いと考えられます。

参考:新会社STARTOが日本の芸能界の変革を導くか。注目すべき4つのデジタル化

ある意味、ファンの側でもそういう変化の空気を読み取って、先回りして動画や写真を活用した拡散行為に協力している面もありそうです。

今回のSnow Manのライブ配信の日本記録は、本当にギリギリでの達成だったとも言えますので、こうしたファンのSNS上での拡散行為が、記録達成に貢献したのは間違いないでしょう。

■スタートエンターテイメントとしての再スタートに向けて

2023年という年は、ジャニーズ事務所の性加害問題の影響によって、所属タレントもファンも大きく傷つく年になってしまったことは間違いありません。

ただ、その2023年の最後の日である12月31日に、Snow Manをはじめとした所属タレントの方々が新しい挑戦に取り組み、こうした新しい記録更新の快挙を達成できた意味は決して小さくないと言えます。

Snow Manのライブ配信の最後にも、メンバーがファンに向けて様々な思いを吐露していた中で、目黒蓮さんがこのライブをやろうと思った想いとして、「僕たちを必要としていない人たちもいるのは当たり前。それだったら僕たちを心の底から見たいと思っている皆さんのために感謝を伝えるステージにできたらいいなと思った。来年は僕たちも悔いのないように生きて、僕たちを見たいと思っている皆さんをできるだけ笑顔にできるような年にしたい。」と話されていたのが非常に印象的でした。

(出典:Snow Man公式YouTube)
(出典:Snow Man公式YouTube)

目黒蓮さんは、この年末ライブが決まったタイミングでもInstagramで「絶対後悔させないよ 俺らを正解にする」と発言したことが波紋を呼びましたが、ファンが自分達を応援し続けることを選んだことを間違った結果にしないという趣旨だったんだと思われます。

実は、今や世界的なボーイズグループとして世界中にファンがいるグループとなったBTSも、売れはじめた頃に直面した辛い状況を乗り越えた経験が、ARMYと呼ばれるファンとBTSのメンバーとの絆が逆に強まるきっかけとなり、その後の世界的な活動の躍進につながっているという見方もあるそうです。

今後、Snow Manをはじめとしたスマイルアップ所属タレントが、同様に今回の騒動を通じてファンとの絆を強くし、スタートエンターテイメントでの再スタートをきっかけとして、さらに活動の幅を拡げていければ、今年は飛躍のために必要な1年だったと振り返ることができるはず。

来年のさらなる新しい挑戦に注目したいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログを書きはじめたおかげで人生が救われる。現在は書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版するなど、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についてのサポートを行っている。

徳力基彦の最近の記事