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日光蕁麻疹に対する血漿交換療法の効果と実際の治療例

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【日光蕁麻疹とは?その症状と診断】

みなさん、日光蕁麻疹という病気をご存知でしょうか。日光蕁麻疹は、日光に当たると、皮膚に蕁麻疹(じんましん)が現れる珍しい光線過敏症の一種です。患者さんは日光に当たった数分以内に、強いかゆみを伴う赤い発疹が出現し、通常24時間以内に治まります。原因は完全には解明されていませんが、日光による皮膚の免疫反応が関与していると考えられています。ちなみに私も、20年以上この日光蕁麻疹に苦しんでおり、いまだに完治していません。

日光蕁麻疹の診断には、光線試験が用いられます。患者さんの皮膚に、様々な波長の紫外線を当てて、蕁麻疹が生じるかどうかを確認します。これにより、症状を引き起こす光線の種類や量を特定できます。

【難治性日光蕁麻疹に対する血漿交換療法の有効性】

日光蕁麻疹の治療は、原因となる日光を避けることが基本ですが、重症例では抗ヒスタミン薬や免疫抑制剤などの内服治療が行われます。しかし、これらの治療に反応しない難治性の日光蕁麻疹に悩む患者さんも少なくありません。

そこで注目されているのが、血漿交換療法です。この治療法は、患者さんの血液から病気の原因となる物質を含む血漿を取り除き、新しい血漿と入れ替えるというものです。これにより、症状の改善が期待できます。

英国の研究チームが報告した症例では、56歳の女性が、抗ヒスタミン薬や免疫抑制剤などの治療に反応しない重症の日光蕁麻疹に悩んでいました。そこで、血漿交換療法を導入したところ、症状が大幅に改善し、日光に当たっても蕁麻疹が出にくくなったそうです。

【血漿交換療法の実際と副作用】

では、血漿交換療法はどのように行われるのでしょうか。まず、患者さんの血液を体外に取り出し、遠心分離器で血球成分と血漿成分に分けます。そして、病気の原因となる物質を含む血漿を捨て、代わりに新しい血漿や albumin製剤を混ぜ、再び患者さんの体内に戻します。1回の治療で3000mlほどの血漿が入れ替えられ、2日連続で行われるのが一般的です。

副作用としては、血漿交換に使う抗凝固剤によるカルシウム低下などが報告されていますが、重篤なものはほとんどなく、比較的安全な治療法と言えるでしょう。ただし、専門の設備と経験豊富なスタッフが必要なため、どの医療機関でも行えるわけではありません。

日光蕁麻疹は、日常生活に大きな支障をきたす厄介な病気ですが、血漿交換療法の有効性が報告されたことより、新たな治療の選択肢が増えたと言えます。まだまだ研究段階ですが、難治性の日光蕁麻疹に悩む患者さんにとって、血漿交換療法は光明となるかもしれません。

参考文献:

Successful serial plasmapheresis for solar urticaria, a case report and literature review. Journal of Dermatological Treatment. 2024, Vol. 35, No. 1, 2350229. DOI: 10.1080/09546634.2024.2350229

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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