仕事をしない弁護士に「喝」 弁護士会館の看板にスプレーで落書き、何罪か?
東京・霞が関の弁護士会館で、正面玄関前にある「弁護士会」と刻まれた石看板に黄色のスプレーで落書きをしたとして、男が検挙された。「弁護士がちゃんと仕事をしていないので『喝』を」などと供述しているという。
落書きの程度や書いた場所が重要
こうした落書きは、その程度やどこに書いたかによって成立する犯罪が異なる。最も軽いのは軽犯罪法違反だ。みだりに他人の家屋や看板を汚したら、拘留(1日以上30日未満の拘束)または科料(千円以上1万円未満の金銭罰)に処される。
次に器物損壊罪が考えられる。「損壊」とはその物の効用を害する一切の行為を意味し、落書きも含まれる。最高刑は懲役3年、罰金だと30万円以下だ。軽犯罪法違反よりも罪が重いし、単なる「汚した」では足らず、「損壊」と言えなければならないので、簡単には消せないなど、原状回復が相当困難な場合に限られる。
そうした落書きが他人の建造物に対するものであれば、建造物損壊罪が成立する。最高刑は懲役5年であり、罰金がない。「建造物」とは家屋などの建築物のことだ。玄関ドアなどこれに取り付けられた物も、接合の程度や機能上の重要性から建物と一体のものであれば、器物損壊罪ではなく、建造物損壊罪の対象となる。
このほか、重要文化財に落書きをすれば文化財保護法違反に問われるし、落書きの内容が他人の誹謗中傷に当たれば名誉毀損罪や侮辱罪も成立する。地域環境の美観を損ねる落書きを条例で規制している自治体もある。
過去には検察庁の石看板も
今回の事件の場合、使ったスプレーは水性であり、落書きも「弁護士会」と刻まれた文字をなぞる程度で、容易に消せるものだった。石看板も弁護士会館の建物に接合されたものではない。そこで男は、軽犯罪法違反に問われている。
なお、弁護士会館のすぐ近くにある検察庁舎の石看板も、1992年と2017年にペンキをかけられたことがある。こちらは容易に消せず、文字が判読不能になるほどだったので、器物損壊罪が適用された。
1992年の事件は自民党元副総裁・金丸信氏に対する特捜部の手抜き捜査に憤慨し、抗議行動に出たものだったが、被害額が約248万円にも上るということで、地裁に起訴される展開となった。
裁判官は、犯人の男に懲役3ヶ月、執行猶予2年の有罪判決を言い渡したあと、「不服があれば控訴できるが、控訴の手続の際、またペンキを投げつけたりしないように」と釘を刺している。(了)