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「ぽっぽや」はもういない。JRは国鉄に戻るべきだ

大宮冬洋フリーライター

●今朝の100円ニュース:JR北 社長ら75人処分(読売新聞)

北海道の赤字ローカル線を巡る人間模様を描いた浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』を読んだのは15年ほど前だった。主人公の駅長に恩義を感じている乗客の一人がJR北海道(だったと思う)の本社勤務にまで出世しているという設定で、廃線を阻止するために奔走したものの果たせず、恐縮する主人公に何度も謝るシーンで泣いた記憶がある。

『鉄道員』はたった一人でも乗客の安全第一で働き続ける主人公をクローズアップして感動を呼んだが、それでも廃線は避けられなかったところにリアリティがあると思う。民間企業にとって赤字は「悪」なのだ。

今朝の読売新聞によると、JR北海道のレール計測データ改ざん問題で、社長を含めた75人が処分され、うち5人は解雇となった。問題が起きたのは、保線の現場では「個々の社員の責任感や安全意識が欠如」していて、本社は「現場の状況を適切に把握せず、資金、人材の両面で対応が不十分」と国土交通省が指摘している。

保線担当部署のうち75%で改ざんが行われていたらしい。経費削減を迫られる赤字路線の保線には、「お金をかけずに済むように手を抜いて検査したい」と思うのは民間企業の社員としてはむしろ当たり前だ。「乗客の安全のために厳密な検査と補修を主張するぽっぽや」は、「コスト意識のない面倒なヤツ」として孤立するだろう。

赤字路線はどんどん廃止して経営改善を急ぐべきなのだろうか。地方都市に住む僕は反対だ。「鉄道は公共インフラとして残してほしい」と痛切に思う。

僕が住んでいる愛知県蒲郡市には、名鉄蒲郡線というローカル線があり、海沿いの街々を赤い電車がトコトコと走っていく。何年も前から赤字路線で、自治体が名古屋鉄道に2億5千万円もの補助金を払って維持しているらしい。月に何度か蒲郡線を利用している僕としては大変ありがたく、税金をちゃんと払い続けようという気持ちになる。

いずれ名鉄が手放したら、JR東海が蒲郡線を引き受けてほしい。ドル箱の東海道新幹線を持っているのだから、新幹線に毎月何万円も使っている沿線住民(僕のことです)のために小さなローカル線を運用するぐらいの余裕はあるだろう。リニア敷設のついでにどう?

無理ならば、JRを再び国鉄に戻すのはどうか。読売の解説記事によれば、JR北海道はJR東日本、東海、西日本の3社に比べて不採算路線が多く、国から拠出された約6800億円の「経営安定基金」の運用益で、鉄道事業などの赤字を補っている。しかし、警察や消防のようにJR全体を国や自治体の運営に戻してしまえば、「赤字」という概念はなくなる。ローカル線にも十分な人員が配置され、1日数本の電車しか通らなくても保線は完璧だ。新しい道路を作るよりは鉄道を維持するほうが自然保全になる。

国鉄に戻るとサービスが低下したり財政が厳しくなったりするかもしれない。しかし、赤字路線に依存している僕は「公共インフラとしての鉄道網の維持」を最優先せよと主張したい。そのために税金を払っているのだから。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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