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アルゼンチンにおける農薬の潜在的な影響を撮影した写真が物語る恐怖

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

アメリカ北東部、ニューイングランドのポータルサイト『Boston.com』の写真でニュースを伝えるコンテンツ、『The Big Picture』に「アルゼンチンにおける農薬の潜在的な影響」と題された写真が17枚掲載されているのですが、これが恐ろしい現実を伝えてきます。

先に言っておきますが、あまり見ていて気持ちの良い写真ではありません。心して見てください。

Potential effects of agrochemicals in Argentina - Photos - The Big Picture - Boston.com

(本当は写真と並べて翻訳を紹介できると良いのですが)記事では、アルゼンチンにおいて農薬が家庭や教室、飲料水を日常的に汚染していること、農薬のせいで多臓器不全で産まれたと見られる女の子、慢性呼吸器疾患に苦しんでいるのに農薬を入れていた容器の水で服を洗ったり鶏に水をあげたりしなければならない双子の女の子、農薬散布により2回流産し、産まれた男の子も水頭症だった母親、などの写真がカンタンな説明とともに掲載されています。

アルゼンチンの農薬使用量は、1990年の900万ガロン(約3万4千キロリットル)から今では8,400万ガロン(32万キロリットル)と9倍以上に増えたそうです。そして、それらの化学薬品は危険性を管理されないまま使用され続けています。

もちろん、すべてが農薬のせいだとは決めつけられません。政府による被害の調査を訴えている医師たちも「それを証明することはできない」と語っていますが、とある農村の住民65,000人を調査したところ、ガン発生率が国の平均の2倍から4倍であり、さらに甲状腺機能低下症や慢性呼吸器疾患の発生率も高かったと記事にあります。

記事の一番最後に掲載されている、体中になぞの毛深いホクロが発生した女の子がこちらを見つめながら何かを訴えかけてくるかのような写真は、とくに胸が痛みます。この行政区では、バイオテクノロジー推進のために農業を拡大してから先天性欠損症の子が以前の4倍に増えたそうです。

ボクは、農薬は絶対にダメだと反対しているわけではありません。今の生活は、農薬がなければ成り立たないからです。

しかし、だからといってこの状況を見過ごしていて良いはずがありません。便利な生活の裏に隠されている現実について、いま、考えるときではないでしょうか。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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