世界のパソコン出荷、7〜9月も引き続き前年割れ、「Windows 10」は市場回復の起爆剤にならず
米国の市場調査会社であるガートナーとIDCの2社がこのほどまとめた最新のリポートによると、今年7〜9月期における世界のパソコン出荷台数は、引き続き前年割れとなった。
ドル高の影響でパソコン価格が上昇し、売れ行きに影響が出たほか、米マイクロソフトがリリースした最新OS(基本ソフト)「Windows 10」は市場回復の起爆剤にならなかったと、両社は見ている。
Windows 10の効果は限定的
ガートナーの調査では、7〜9月期の出荷台数(速報値)は7372万8000台となり、1年間に比べ7.7%減少した。四半期中にリリースされたWindows 10は、既存パソコンの無料アップグレードが中心となり、新規パソコンの販売促進にはつながらなかったという。
ガートナーの主席アナリスト、北川美佳子氏によると、ドル高の影響でパソコン価格は年間を通して約10%上昇した。これにより、EMEA(欧州、中東、アフリカ)や日本、中南米といった市場で需要が低迷したという。
一方でIDCが公表した出荷台数(速報値)は7097万6000台で、1年前から10.8%減少した。Windows 10の登場とそれに伴うWindows 8搭載パソコンの在庫削減が要因となり、新モデルの販売が振るわなかったという。
なおIDCが「パソコン」と定義するのは、デスクトップパソコンや、ノートパソコン、超薄型ノートパソコン、Chromebook、ワークステーション(業務用高性能パソコン)など。
これには米アップルの「iPad」や、Windows、Android搭載の着脱式キーボードを備えるタブレットが含まれない。
これに対しガートナーは「ウルトラモバイル・プレミアム」と呼ぶ超薄型パソコンのカテゴリーに、マイクロソフトの「Surface Pro」といったタブレットPCを入れている。
レノボが首位を維持
両社の統計データは、こうした定義の違いで数値が異なるものの、市場の低迷が続いているという点では共通しているようだ。
例えば、昨年10〜12月期の出荷台数について、ガートナーは前年同期比で1%の増加にとどまったと報告。IDCは同2.4%減少したと報告していた。またガートナーによると、今年1〜3月期の出荷台数は同5.2%減、IDCによると4〜6月期の出荷台数は同11.8%減となった。
また、この7〜9月期の出荷台数をメーカー別に見ると、中国レノボ・グループ(聯想集団)が首位となり、このあと、米ヒューレット・パッカード(HP)、米デル、米アップル、台湾エイサー(宏碁)と続いている。
IDCの統計では、レノボの出荷台数は1493万7000台で、その市場シェアは21.0%。HPは1390万5000台でシェアは19.6%。デルは1012万台でシェアは14.3%、アップルは532万4000台でシェアは7.5%。
市場は低迷も、上位4社の落ち込みは1桁台
IDCのデータでは、前述のとおり7〜9月期の市場全体の出荷台数は前年同期比で2桁減少した。だが、上位4社の合計出荷台数は同4.5%減にとどまっている。
IDCはその理由として、これら大手に共通する、規模の優位性、ポータブル機への注力、新興国市場における流通チャネルの浸透といった点を挙げている。
なおWindows 10の効果は今年の年末商戦時期に表れると、ガートナーは予測している。一方、IDCはもう少し長期的な見方をしているようだ。同社は今回のリポートで、「Windows 10は2016年以降の市場の安定化に寄与する」と報告している。
(JBpress:2015年10月14日号に掲載)