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ChatGPT「有料プラン」を試してみた 月額20ドルの価値はあるか

山口健太ITジャーナリスト
「ChatGPT Plus」(OpenAIのWebサイトより、筆者撮影)

いま話題の対話型AI「ChatGPT」の有料プランが、2月10日ごろから日本での提供を開始しています。

月額料金は20ドル(約2600円)となっていますが、果たして契約する価値はあるのでしょうか。実際に試してみました。

「ChatGPT Plus」日本でも開始

質問に対して自然な文章で回答するChatGPTは、世界的な話題を巻き起こしています。ただ、現状では研究用のプレビュー版という位置付けです。

そのAIを動かすには大きなコストがかかっているとされており、開発元のOpenAIは有料プランとして「ChatGPT Plus」を発表。パイロット版という位置付けで、米国に展開していました。

日本での月額料金は米国と同じ20ドル。クレジットカード決済には、広く使われているStripeのシステムを採用しています。

2月10日には日本でも始まったようだ(ChatGPTの画面より、筆者作成)
2月10日には日本でも始まったようだ(ChatGPTの画面より、筆者作成)

有料プランで提供される機能としては、高速な応答時間や、負荷の高い時間帯でもアクセスできるといったものが含まれています。

まずはスピードです。ChatGPTは文章の出力に意外と時間がかかり、待たされる印象がありますが、有料プランではより高速な「Turbo」を選べるようになっていました。

どれくらい速いのでしょうか。実際に英文で400ワード、2200字程度の文章をリライトさせてみたところ、3回の平均値で通常モードのDefaultが「51秒」、Turboは「39秒」となり、2割ほど速い結果になりました。

ただ、この選択肢はその後「Default」と「Legacy」の2つに変わっています。どちらが優れているかは、活発な議論が行なわれているDiscordのチャンネルでも意見が分かれており、このあたりはまだ流動的といえそうです。

有料プランでは複数のモデルを選択できる(ChatGPTの画面より、筆者作成)
有料プランでは複数のモデルを選択できる(ChatGPTの画面より、筆者作成)

次に、利用できる量の違いです。無料プランでは文章を生成できる量または回数に一定の枠があると思われ、連続して使いすぎると時間を置くように言われます。一方、有料プランではいまのところそうした表示は出ていません。

混雑時のアクセスにも違いがあります。ChatGPTはときどき満員で入れないという画面になることがありますが、有料プランの会員向けには入力フォームが用意されており、すぐにログインできるリンクを取得できます。

混雑時でも有料プランなら優先的にログインできる(ChatGPTの画面より、筆者作成)
混雑時でも有料プランなら優先的にログインできる(ChatGPTの画面より、筆者作成)

一方、有料プランにも制限はあるようです。たとえば、複数の質問に対する回答を同時に生成させようとすると、有料プランであっても「他の回答を生成中なのでできない」と断られます。

文章の品質については、詳しく検証すれば違いはあるかもしれませんが、有料プランであってもおかしな回答は出てきます。これはChatGPTの仕組みに起因する問題と考えられます。

有料プランでもおかしな回答は出てくる(ChatGPTの画面より、筆者作成)
有料プランでもおかしな回答は出てくる(ChatGPTの画面より、筆者作成)

ちなみに、ChatGPTの強化版といえるBingのAIは、Webサイトの検索結果に基づいた最新情報を返してくれます。ChatGPTの有料プランに、こうした機能はないようです。

同じ質問をBingにも投げてみた。なお、この要約も一部が間違っている(Bingの画面より、筆者作成)
同じ質問をBingにも投げてみた。なお、この要約も一部が間違っている(Bingの画面より、筆者作成)

なお、筆者が試した限りでは有料プランを解約した場合でも、次の更新日まではそのまま使えるという表示になりました。契約後、すぐに解約(継続をキャンセル)すれば1か月だけ試すことができそうです。

月額20ドルの元を取れるか

ChatGPT Plusの月額20ドルが高いか、安いかという点では、ほかに比較対象がないのでなかなか難しいところです。

まず、無料プランに不満がなければ必要はないでしょう。より多く使いたい場合でも、ChatGPTに相当する機能を含むBingのプレビュー版を併用するという手があります。

一方、使いすぎて制限される場合が多いとか、混雑時でもすぐに使える状況を確保したいのであれば、有料プランを試してみる価値はありそうです。

ChatGPTをどういう目的で使うかにもよります。機密情報は入力しないよう注意は必要ですが、長文の要約やリライト、翻訳といった作業、アイデア出しなどの相談相手としてはなかなか実用的です。

こうした仕事を人間に依頼すれば、月に数万円から数十万円はかかってもおかしくはないと考えれば、月額20ドルは誤差といえるかもしれません。

ChatGPTのようなサービスからどうやって価値を引き出すかというゲームが始まっている中で、自分には何ができるのか、考えてみるきっかけとしてもよさそうです。

追記:

米国で3月14日に新しいモデル「GPT-4」が発表されました。ChatGPT Plusのユーザーは、一部の機能を先行して試すことができるようになっています。

また、米マイクロソフトは新しいBingのAI機能にGPT-4を用いていることを明かしています。

ChatGPT Plusに加わった「GPT-4」(ChatGPTのWebサイトより、筆者作成)
ChatGPT Plusに加わった「GPT-4」(ChatGPTのWebサイトより、筆者作成)

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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