「北欧ブランド」世界進出についてノルウェーで会議
「クリエイティブ産業での北欧アイデンティティ」について、政治家や文化業界関係者が意見交換をするフォルデ会議が6日開催された。会議はノルウェー南西部にあるフォルデで、7月5〜9日のフォルデ音楽祭の一環として行われたもの。
フォルデ祭は北欧・世界各国のフォークソングを披露する、ノルウェーでは最大規模の音楽祭。伝統音楽の演奏、若手の育成、移民・難民や各国のアーティストの交流に力を入れている。
会議で話し合われた「クリエイティブ(創造)産業」というのは文化・メディア・建築・デザイン・ファッション・ゲーム・広告分野などを幅広く意味する。
北欧各国は「自分たちは小国」だという自覚があり、観客や消費者の規模が限られた国では限界がある。よって、市場が広い欧米などでビジネスを拡大していく上で、各国は「北欧」ブランドとして共に頑張っていくという認識が以前からあるのだ。
互いをライバルだとして認識するよりも、情報の透明性を高め、一緒に何かをしていこうとする傾向は、平等に価値を置く北欧ならではの傾向ともいえるかもしれない。
会議では、各国の事業の代表者が集まり、意見交換をした。
ノルウェーのオーレミク・トンメセン国会議長(保守党)は、「新聞やテレビ番組など、北欧各国で共通の文化チャンネルを増やしたい」と発言。
国会議長という、国会のトップがこのような会議に参加し、オープニングコンサートの幕を開けたことには驚いた。
一方で、デジタル化で著作権が軽視されつつあることに、国会議長は警報を鳴らす。「デジタル化発展のために著作権のことは忘れて、どんどん新しいものを創り出していこうという声もある。アーティストが生活し、活動を続けていくことができるように、北欧共通の著作権のルールを作りたい」と述べた。
ノルウェーのドラマ『SKAM』は北欧クリエイティブ産業の成功例
各国の代表達は、北欧で大きな話題となったノルウェーの高校生ドラマ『SKAM』にも言及した。
当初はどこの国からでもネットで視聴できたドラマだが、世界的にあまりにも話題となりすぎた。結果、音楽家との著作権契約の問題で、シーズン4からは国境制限がかけられ、世界中のファンたちは悲鳴をあげた。
デンマークで22年間、数々の大臣の職に就いたベアテル・ホーダー氏は、この出来事を振り返る。北欧諸国での閲覧制限においてはもっと臨機応変な対応をしてほしいと、新しいルールの検討を求めた。
他にも複数のスピーカーが、このドラマがスカンジナヴィア3国の言語や文化の壁を低くさせたことを評価し、興奮して語っていた。ドラマは新人アーティストの音楽の発見にも貢献した。
会議では、北欧音楽の国際市場への輸出、音楽家をサポートする必要性についても話し合われる。北欧音楽はドイツやイギリスで受け入れられやすいが、日本市場はハードルが高く、さらなる戦略が必要とされている。
北欧の最高の音を集めた北欧サウンド・フォークオーケストラ
フォルデ祭といえば、各国の交流や伝統音楽に力を入れているが、北欧のフォークミュジックを代表する大物たちが集まると、何が起こるのだろうか?
オープニングコンサートでは「北欧サウンド・フォークオーケストラ」(Nordic Sound Folk Orchestra)という、奇跡のコラボがお披露目された。
Gudbrandsdolenes Spelemannslag (ノルウェー)、Folk All-in Band (スウェーデン)、Baltic Crossing (フィンランド/デンマーク) 、 Harald Haugaard Quintet (デンマーク)のフィドル奏者たち。 ソリストには、Olav Luksengard Mjelva (ノルウェー)、 Olov Johansson (スウェーデン) 。ヴォーカリストには、Ulla Pirttijarvi (フィンランド)、Lena Willemark (スウェーデン) 、Berit Opheim (ノルウェー)が揃う。
北欧音楽を知る人の間では、「これ以上のレベルで、この大物たちをオーケストラという形で集めることは不可能ではないか」という、希少価値の高いチームとなっている。
また音楽祭での出演者の多くが、「当たり前のように男女の割合が半々だった」という点は北欧らしい。「フィドル奏者といえば男性」という光景をいつの間にか変えていた。
今後は北欧各国で力をあわせ、「北欧フォーク」というブランドを世界へと広めていく戦略も発表された。
今年のフォルデ祭のテーマは「北欧の音」。各国で共に北欧ブランドを強化し、国際市場進出を果たしたいという意志が強く表れていた。
Phoot&Text:Asaki Abumi