せまる大学入学共通テスト万全で受験するには?直前・当日の過ごし方の注意点
◆難化予想が出回る「2年目のジンクス」
大学入学共通テスト(以下「共通テスト」と略)も2年目となりました。今年は今月15日(土曜)、16日(日曜)に実施されます。
さて、この共通テスト、今年、教育関係者の間で話題となっているのが難化予想です。2020年まで31年間続いたセンター試験に比べ、共通テストは読解力も求められる試験に変化しています。数学I・Aにおける2次関数の問題を例にしましょう。2020年センター試験では問題文が1枚で収まっていました。しかし、2021年の共通テストでは短距離100メートル走を例に問題文が4枚となっています。
東北の公立高校教員(数学)は次のように指摘します。
「問題の難易度は2020年も2021年もほぼ同じです。ただ、問題文が4倍になっており、数学の知識だけでなく、読解力も必要です。センター試験時代は70点だと、基礎知識が足りないことが明らかでした。しかし、共通テストで70点だと基礎知識が足りないのか、それとも膨大な問題文を読み込めないのか、特定しづらくなりました」
この読解力の求められる共通テストに出ているのが難化予想です。確かに問題文の分量は増えたものの、難易度自体は各予備校などが事前に予想したものほどではありませんでした。
その結果、生物と倫理は平均点が高くなり、理科と公民で得点調整が入っています。それと大学入試史を振り返ると「2年目のジンクス」が存在します。共通一次試験(1979年開始)やセンター試験(1990年開始)は、どちらもが導入初年度は出題側が慎重になり、平均点が高めになる傾向がありました。そして、どちらもその翌年は難化、平均点は下がっています。今年も、昨年、平均点が高くなった生物や倫理、あるいはそれ以外の科目でも難化する、と見られています。
「難化しても変に焦らないことが必要です」(九州の公立高校教員)
◆試験直前~感染症対策と体調管理
新型コロナウイルスによる感染症拡大もとどまらない中、共通テストの受験前に必要となるのは、感染症対策と体調管理です。大学入試センター公表の「受験上の注意」では
「基本的な感染症対策を徹底するとともに、バランスのとれた食事、適度な運動、休養、睡眠など、体調管理を心がけてください」
とわざわざ断りが入れられています。
また、家族などが感染したことにより濃厚接触者となった場合は条件付きでの受験となります。「自治体指定のPCR検査で陽性となっていない」「受験当日も無症状」「公共交通機関を使わずに移動」、この3条件に合致すれば、別室での受験が可能です。一方、この3条件に合致しない場合は、追試験の申請が必要です。注意したいのは「PCR検査」と「移動手段」です。
まず、PCR検査ですが、自治体指定のPCR検査、いわゆる行政検査である必要があります。自治体が指定していない医療機関でのPCR検査は対象外となるので注意が必要です。
それから、移動手段ですが、自家用車、レンタカー、親戚・知人による送迎、バイク、自転車の他、一定の条件(①感染対策を講じている車両を利用すること②事前予約/流しのタクシーは利用しないこと等)をクリアしたタクシー・ハイヤー・海上タクシーを大学入試センターは指定しています。
2022年2月2日・追記
共通テスト受験の記事ですが、濃厚接触者となった場合に個別試験受験の是非を考えるために本稿を読んだ、という方向けに加筆します。
1月31日、文部科学省は全国の国公立・私立大学などに通知を出しました。
これによると、PCR検査は免除。当日、無症状であれば、別室受験を認める、とのことです。
背景には保健所の検査業務が逼迫しており、検査が間に合わない可能性に対応するためです。
濃厚接触者の受験対応は日々変化しているので、必ず、受験校などに最新情報を問い合わせたうえで対応することをお勧めします。
どちらも難しい場合は、追試験の申請となります。
なお、文部科学省は11日、新型コロナウイルスの影響などで大学入学共通テストを受けられなかった受験生のため、各大学が2次試験などの個別試験のみで合否判定できる救済策を打ち出しました。
追試験も受験できなかった場合、各大学に個別試験だけで合否判定するよう求めています。ただ、この救済策の実施の有無や個別試験の内容は各大学によって異なるもの、と見られます。こちらについては今後の報道や各大学の発表等を確認してください。
◆試験直前~会場下見の意外なポイント2点
受験前日となる14日には試験会場の下見をする受験生が多いです。「13時~17時」「14時~16時」など大学によって微妙に下見可能となる時間帯が異なりますので、必ず、試験会場となる大学のサイトを確認しましょう。
下見は、受験当日の自宅から会場までの交通手段の確認、会場となる建物・棟の確認、この2点がポイントです。
まず、交通手段ですが、受験当日は土日、かつ、共通テスト受験者が多いため、平日ダイヤとは異なる可能性が高いです。当日、慌てないためにも確認しておくといいでしょう。
2点目の建物・棟の確認はさらに重要です。共通テストの会場となる大学は中・大規模校が大半です。一般的な公立高校の敷地面積は3~4万平方メートル、規模の大きなところでも5~6万平方メートル。それに対し、例えば、広島大学東広島キャンパスは249万平方メートル。要するに高校が70~80校分入る計算になります。広島大学ほどでないにしても、大半の大学は高校が数十校入るほどの広さがあります。どの建物・棟なのか、確認しておかないと、当日、会場大学に到着しても慌てることになります。
◆試験当日~服装・マスクは?
服装については、制服・私服の指定は特にありませんが、着脱しやすく温度調整しやすい服の方がいいでしょう。
ただ、コロナ禍によって、試験会場では感染対策として定期的な換気が必要となり、昨年の共通テストの受験生からは「会場は寒かった」とする声が聞かれました。
寒さ対策として、ネックウォーマーやマフラーの持参も効果的です。特にマフラーは幅が広いものだとひざ掛けとして使うこともできます(※ひざ掛けとして使う場合は試験監督に申し出て許可を得る必要があります)。
また、試験当日、マスクは必須となります。マスク(予備のマスクを含む。)を持参し、試験場内では常にマスクを正しく着用(鼻と口の両方を確実に覆う)してください。フェイスシールド又はマウスシールドの着用のみでは、受験することはできません。※大学入試センターサイトより
去年は、このマスク着用を巡り、40代受験生が鼻を覆わず(いわゆる鼻出しマスク)試験監督の指示に従わなかったことからトラブルが発生しました(受験生は長時間、会場に居座ったこともあり逮捕)。
また、受験の成績は全て無効となりました。
これはマスク着用の方法がどうこう、ではなく、試験監督の指示に従わなかった場合は「不正に準じる行為」として大学入試センターが事前に定めているからです。仮に、マスク着用が難しい場合は事前に配慮を求める申請が必要です。事前申請がなく試験当日に苦しいと感じるようであれば、追試験申請となります。
マスクを付けながら受験するので事前にどのようなマスクがいいか、試しておくといいでしょう。
なお、服装・マスクとも英文や地図などが描かれているものはアウトです(ロゴ程度ならセーフ)。
万が一、着ていった場合は裏返しで着るか、脱ぐように指示されます。
◆試験当日~持ち物は
持ち物で意外とトラブルになるのが鉛筆・シャープペンシルです。試験会場で利用できるのは黒鉛筆(H、F、HB)のみです。
シャープペンシルはメモや計算をする際の補助としてのみ、利用できます。シャープペンシルで解答した場合、採点時に解答が読み取れないこともあるので大学入試センターは利用しないよう、呼び掛けています。
黒鉛筆は、「和歌・格言等が印刷されているものは不可」と大学入試センターが指定しています。
それと、これは指定外ながら、丸鉛筆だと、机で転がりやすいので避けた方がいいでしょう。
時計は
「辞書、電卓、端末等の機能があるものや、それらの機能の有無が判別しづらいもの・秒針音のするもの・キッチンタイマー・大型のものは不可」
となっています。アナログかデジタルか、これは好みの問題ですが、分針がはっきりしているアナログ時計だと残り時間がどれくらいか、すぐ確認できます。
それから、受験票・写真票のほか、健康観察記録も持参することを大学入試センターは求めています。
◆試験当日~もしも遅れた場合どうする?
今年は北日本を中心に荒天が続いています。試験当日、交通機関が止まり、試験時間に間に合わないこともあるでしょう。
試験当日、交通機関の事故又は災害等が発生した場合は、試験開始時刻を繰り下げることがあります。受験票に記載されている「問合せ大学」へ連絡し、試験場に向かってください。
※大学入試センターサイトより
もし、試験当日、試験会場に向かう途中で事故にあったなどの理由であれば、試験当日の終了時間までに追試験申請をすれば追試験の受験が可能となります。
◆試験当日~もしも受験票・写真票を忘れたら?
忘れた場合は試験会場で申請、仮受験票・仮写真票が交付されると受験することができます。ただ、申請に無用の時間がとられることになります。また、仮写真票のために、スピード写真を利用するなどして、写真を用意しなければなりません。
当日、自宅を出る前に、持ち物確認をしておいた方がいいでしょう。
◆意外と知らない不正行為~定規の利用・終了後の解答
大学入試センターは不正行為と「不正に準じる行為」をそれぞれ定めており、います。この中にはカンニングや試験中のスマートフォン利用なども含まれます。
まさかそんなバカなことしない、と思う受験生も多いでしょう。しかし、意外と知られていない不正行為も書かれているので注意が必要です。不正行為が認定されると、成績が全て無効、という扱いになります。
具体的に注意したいのは「定規の利用」「終了後の解答」「周囲への迷惑行為・試験監督の指示無視」です。
定規の持ち込みは可能ですが、試験時間にはかばんなどにしまうことが求められます。2019年のセンター試験では、現代文の問題を読む際に定規を利用していた受験生が「不正行為」と認定されました。
2点目の「終了後の解答」、これは大学入試センター「受験上の注意」に明記されています。
「『解答やめ。鉛筆や消しゴムを置いて問題冊子を閉じてください』の指示に従わず、鉛筆や消しゴムを持っていたり解答を続けること」
高校や塾・予備校によっては、後ろの席の生徒が答案を回収する土壇場まで解答することもあるでしょう。
共通テストにおいてでは、これが不正行為となります。
3点目、「周囲への迷惑行為・試験監督の指示無視」は先ほど取り上げた去年のマスク騒動が該当します。
長文を読むのに定規を当てるのは、普段なら別に悪いことではありません。土壇場まで回答しようとするのも同様です。しかし、これらはいずれも不正行為として、成績無効という重い処分が下されます。
◆2科目受験の勝手な解釈も危険
高校教員や予備校講師などに取材すると、「1学年あたり毎年1人は出てしまう」と話してくれたのが「2科目受験の勝手な解釈」でした。
地理歴史・公民と理科について、共通テスト出願時に2科目受験とした受験生がその後、1科目だけで十分、ということが起こり得ます。
その場合、当日に1科目の受験だけでいいのか、と言えば、それが許されません。あくまでも、出願時に登録した科目数での受験が必要です。これを勝手に解釈して、当日は1科目だけでいい、と勘違いする受験生がいます。
地理歴史・公民は今年だと、2科目受験の場合、試験開始が9時30分。1科目受験の場合、10時40分。そこで1科目受験の開始時間前に行くとどうなるか。これがなんと受験不可となります(他の科目は受験可能)。
どの科目でも、大学入試センターは試験開始20分以降の入室を認めていないからです(交通機関の遅れなどは除く)。もし、1科目だけで十分だったとしても、2科目登録をした場合はあくまでも2科目、受験するようにしてください。
◆バカバカしくても確認しないと0点に
地理歴史・公民、理科の2科目受験時間以外にも、確認ミスから0点になる可能性があるのは「受験番号」「解答科目欄」「2科目受験の選択ミス」の3点です。
まず、受験番号について。きちんとマークするのが当たり前、と思うかもしれません。が、意外とできない受験生が毎年一定数います。そのため、大学入試センターはわざわざ、注意を呼び掛けています。
受験番号が正しくマークされていない場合は、採点できないことがあります。解答用紙の受験番号のマークに当たっては、次のア~エのようなマークミスが多いので、注意してください。
ア 間違った数字にマーク。(例えば1を0にマーク、2を1にマーク)
イ 隣り合う数字を逆の順序でマーク。(例えば1234を1324のように入れ替えてマーク)
ウ 英字のマークがない。
エ 数字・英字の全てにマークがない。
2点目の解答科目欄ですが、国語と英語(リスニング)以外には解答科目欄があります。これをきちんとマークしないと「解答科目が特定できないため0点となります」(大学入試センター)。
外国語と数学②については例外規定があるものの、それでも、解答科目欄はきちんとマークした方がいいでしょう。
3点目の「2科目受験の選択ミス」ですが、地理歴史・公民、理科②で選択できない科目の組み合わせを選択・マーク、解答した場合です。これは「第1解答科目は選択した科目を通常どおり採点し、第2解答科目は0点(「科目不明」)として取り扱います」。
前記の不正行為と同様、こちらもちょっとした確認で十分に防げる話です。しかし、こちらも毎年、一定数の受験生が確認ミスから0点となってしまうので注意してください。
◆類似科目に注意
試験時の注意点として、類似科目が挙げられます。
地理歴史・公民だと「倫理」「政治・経済」「倫理、政治・経済」、数学①は「数学I」「数学I・A」、数学②は「数学II」「数学II・A」が同一冊子にまとまっています。
そのため、「数学I・A」を選択しているにもかかわらず、「数学I」を解答し、試験時間中に気づく、というケースが毎年起きてしまっています。大学入試センターも注意を呼び掛けるほどなので、類似科目にはくれぐれも注意しましょう。
◆試験時の転記・1日目の採点は
共通テストの受験後には自己採点をしたうえで出願校を決める必要があります。この自己採点のためには、どのような解答をしたか、試験時間中に問題冊子に転記することが必要です。この問題冊子は持ち帰ることができるので、忘れずに転記・持ち帰りするようにしてください。
試験終了後の自己採点は当日にやるべき、との意見と、2日目にまとめて、との意見がそれぞれあります。
どちらも一理ありますが、1日目にすぐ自己採点をすると、その分だけ2日目の対策にあてる時間がなくなります。それに、もしも点数が悪かった場合、2日目に無用のプレッシャーを招くことになります。私としては2日目にまとめてすることをお勧めします。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】