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北朝鮮対シリアの前日会見が中止!W杯アジア2次予選の“中立地”ラオスで起こった「お粗末」な理由とは?

金明昱スポーツライター
ラオスのホテルで行われる予定だった北朝鮮とシリアの前日会見場(筆者撮影)

 日本ではほぼ誰も注目してないであろう試合の取材のため、筆者はラオス・ヴィエンチャンに来ている。

 W杯アジア2次予選の朝鮮民主主義人民共和国代表(以下、北朝鮮代表)対シリア代表の試合が6月6日、ニュー・ラオス・ナショナルスタジアム(ラオス新国立競技場)で行われるからだ。

 本来は北朝鮮のホームである平壌で行われる予定だったが、5月中旬に中立地開催が決まり、11日のミャンマー戦も平壌ではなくラオスで行われることが決まっている。北朝鮮はこの2連戦で勝利すれば、最終予選進出を決められる重要な試合でもある。

 ちなみに試合前日には両チームによる公式会見と公式練習をスタジアムで行うのが通例だ。両監督の試合の意気込みのほか、選手たちの顔ぶれと表情、練習での動きを見ながらコンディションなどが確認できる。

 とはいえ、今回は中立地開催のためか、少しイレギュラーな予定が組まれていた。まず、監督の会見はヴィエンチャン市内のホテルで午前中に行うということだった。

 筆者はラオスサッカー協会のメディア担当のティファフォン・ファカシー氏とやり取りを続け、「プレスカンファレンス」が行われることは事前に知らされていた。時間と場所も正確に決まっていたのだが、その前に会見場ではAFC、ラオスサッカー協会、北朝鮮サッカー協会、シリアサッカー協会で会議が行われていたので終わるのを待っていた。

 だが、会議後に知らされたのは「今日の会見は中止になりました」との一言。最初はその意味が分からなかったのだが、そう説明された。そして次の一言が衝撃だった。

「記者があなた1人しかいないということで、公式会見ができないのです」

前日会見の場所と時間も知らされていたのだが…(筆者撮影)
前日会見の場所と時間も知らされていたのだが…(筆者撮影)

北朝鮮とシリアの記者はおらず、ラオスメディアも無関心?

 衝撃の話であるが、それは事実だった。というのも、現地のラオスメディアの関心は低く、具体的な話を聞ける人がほぼいないというのだ。それに北朝鮮とシリアからは当然、メディアは入ってきてはいない。つまり、質問を投げられるのは筆者1人なので、正式な受け答えの場が成立しないというのが会見中止の理由だった。

 せっかく足を運んだのに話を聞けないことにモヤモヤしていると、ラオスサッカー協会関係者は「DPR.KOREA側の関係者の許可があれば、この場であなたが監督やコーチ、選手に取材をしても構いません」と話すのだが、心の中で「それはないだろう」とつぶやいていた。

 北朝鮮代表に帯同している顔見知りの通訳に事情を説明すると「今日の公式練習の時にスタジアムに来てください。その時に写真も撮れれば、少し話せるチャンスもあるでしょうから」と爽やかな笑顔で返された。さらに立ち話で北朝鮮監督に話を聞くのは難しいと説明されたので、ここは素直に諦めた。

 とはいえ公式練習の場で、北朝鮮代表のシン・ヨンナム監督や選手へ気軽に声掛けできるものなのだろうか――。前日に意気込みや準備がどれほどのものなのかなど話が聞けなくては元も子もないのだが、その前にこのままだと明日の試合後の会見も成立するのかとかなり心配になってくる。

 北朝鮮の公式練習時間は現地時間19時(日本時間は21時)。そこで何が聞けるのか、何が起こるのかはまた後ほどここでレポートしたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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