子どもにおこづかいをあげる前に!未就学児とマルクスの『資本論』について考えてみた(後編)
前回は、子どもにおこづかいをあげる前に、お金や社会の仕組みについてゲーム感覚で学ぶ方法などをご紹介しました。
前回記事「子どもにおこづかいをあげる前に!未就学児とマルクスの『資本論』について考えてみた(前編)」
今回は、子どもに遊びを通じてマルクスの『資本論』を共有する部分に入ります。
実際のやり取りと伝える際のポイントなどをご紹介します。
子どもが興味を持ちやすいように、普段から夫婦で「お金」のことや「社会」のことについてオープンに話し合ってみましょう。
我が家の場合は、マルクスの資本論をお互いに読んでいて、「どういうふうに解釈した?」といった話をしているときに、子どもが「マルクスって何?」と興味を持ったのをきっかけに、子どもとも共有することにしました。
子どもが興味を持ったら、クイズ形式で聞いてみよう
子「マルクスって何?」
私「マルクスは人の名前でね、本当はカール・マルクスっていう名前で、本を書い たりしていたんだよ」
子「へぇ〜、どんな本を書いてたの?」
私「お金のこととか、働くこととか、いろんなことが書いてあるよ」
子「それって、おもしろいの?」
私「お母さんは、おもしろいと思った。昔生きていた人が、未来はこうなるんじゃないかな〜って考えて書いてるあたりがね」
子「へぇ〜」
私「未来を見てないのに、マルクスはどうなるかわかってたんだろうな〜」
子「え〜!?それって、どんなお話しなの?」
子どもがマルクスという名前に興味を持ったことから、この話を展開していますが、子どもが「お金」や「お小遣い」に興味を持ったら、以下の部分から始めてもいいと思います。
私「では、突然ですが、クイズを出したいと思います!」
「この家には、全部でどれくらいのおもちゃがあるでしょうか?」
子「え〜、110個くらいかな?」
私「たぶん、それくらいあるよねー」
「では、その中で毎日遊ぶおもちゃは何個でしょうか?」
子「10個くらいかな?」
私「そうだよね。でも、どれも大切なおもちゃだよね?」
子「うん!」
私「じゃあ、このおもちゃってお店で買ったら、全部同じ値段で買えると思う?」
子「思わない。だって、カプセルゲームも300円のと500円のものがあるから」
私「それって、なんで同じ値段で買えないのかな?」
子「えー、なんでだろう。よくわかんないけど、人気だからじゃない?」
私「そうかもしれないね。じゃあ、この光るステッキのおもちゃと、いろんな音が出る楽器のおもちゃはどうかな?同じ値段で買えると思う?」
子「思わない!だってこっち(楽器のおもちゃ)のほうが、ボタンがいっぱいついてるから」
私「なるほど。じゃあ遊べることが多いほうが、値段も高くなるってことだ?」
子「うん、だってこっち(ステッキのおもちゃ)は、ボタン1個しかついてないもん」
私「そっか。じゃあ、どっちのおもちゃのほうが大切?」
子「それは決められないな〜。だって、どっちも大切だもん」
私「そうだよね。どっちも同じくらい大切だよね」
今までの流れで、商品には「価格」と「価値」があることを気づかせました。
子どもの意見を承認しながら、質問で考えを引き出してみましょう。
私「はい、ここはお店屋さんでーす!」
「お母さんは、おもちゃを売る人で、お父さんはおもちゃを作る職人さんです」
子「じゃあ、お客さんね!」
私「はーい。お買い物の前に、ルールがあります。このお店の商品は、全部100円です。そして、今あなたは500円持っています」
子「はーい」
私「いらっしゃいませ〜。たくさんおもちゃがありますよー!」
子「どれにしようか、迷っちゃうな〜」
「これもいいけど、これもいいなー」(ブロックやミニカーなどを物色)
私「お客さん、実はとっておきの商品があるんですよ」
子「え、なに?」
私「こちらなんですけど...」(タブレットを差し出す)
子「えー!これあるの!?これも100円!?」
私「いや、これは500円なんですけど...」
子「500円か〜。でもこれいっぱい遊べるんだよなー」
夫「あー、タブレットが売れると困るなー。それはロボットが作ってるから、売れてもお父さんはお金がもらえないんだよなあ」
「あのすみません、値段を安くしてもいいから、あのタブレットが売れないようにしてもらえませんか?」
私「しょうがないなあ、安くなるけど文句言わないでね」
夫「......」
私「すみません、お客さん。このタブレットは500円するんですけど、こっちのおもちゃだったら、好きなだけ選んでもらって500円でいいです!」
子「えー!好きなだけ!?」
私「はい、何個でもいいですよ!」
子「じゃあ、こっちにしようかな〜」(最終的に10個ほど選びました)
私「ありがとうございます」
私「はい、じゃあこれが今日の売り上げ500円の半分で250円ね」
夫「おもちゃは、何個売れたんですか?」
私「10個です」
夫「お客さんに直接売っていれば1000円もらえたはずなのに、250円しかもらえないなんて...」
子「お父さん、どうしたの?」
夫「今のがマルクスが書いたお話だよ」
子「え!?どういうこと?」
夫「お客さんは、商品が安く買えるから、一見お得に見えるんだけど、働いてる人は売るためにたくさん働いたり、安くしたりしている。それって働く人にとってはどうなの?って...」
子「ねぇ、お母さん、この話どこがおもしろいの?」
私「そ、それはねぇ...(苦笑)」
極端な例えではありますが、今ので「労働者の搾取」と「剰余価値」「資本主義の構造」についても触れました。
お店屋さんというロールプレイで、子どもに消費者、自分は資本家、夫には労働者として参加してもらいました。
我が家は3人家族なので、売る人が資本家という配役になりました。
消費者・労働者(職人と販売員)・資本家の三者間の関係を示せればOK
この遊びは、マルクスの『資本論』の内容を全て網羅しているわけではありません。
子どもは興味を持ったら、そのときは自ら本を読んだり、調べたりすると思うので、全てを説明する必要はないと思っています。
結果的に、我が子にとっては、マルクスの『資本論』は面白くない話(笑えない話)として捉えられてしまったわけですが、資本主義については、なんとなく理解できたようです。
「お店で払う金額=賃金ではない」ということがわかっただけでも、資本主義を理解するはじめの一歩としては十分だと思います。
お店で売られている商品は、作る人と売る人がいて、商品を作ったり売ったりするのにも、お金がかかるということをロールプレイを通して気づけたのではないでしょうか。
おこづかいは自分のお金なので、基本的には「自由に使ってもらって構わない」という考えですが、『必要なもの』と『ほしいもの』を自ら判断して、使えるようになってくれたら助かりますよね。
この記事が、お子さんと『お金』や『社会の仕組み』などについて考えるきっかけとなってくれれば嬉しいです。